僕の宝具が『眼鏡』だったせいで魔界に棄てられました ~地上に戻って大人しく暮らしているつもりなのに、何故か頼られて困ります~

織侍紗(@'ω'@)ん?

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九話 ファイザースの街

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「着きました! ここがファイザースです! 交通の要になっているので栄えてるんですよ?」

 ゲイルたちはファイザースの街に着いた。レイラの言う通り様々な街道が交わるファイザースは要所になっており、行き交う旅人たちでかなりの賑わいを見せていた。
 真っ直ぐと中心を走る大通りには、様々な露店が並んでおり、その殆どには多くの客が群がっていた。

 ファイザースに着いたゲイルは肩を貸しながら、レイラを労りつつ一歩、また一歩とゆっくりと歩いていた。
 流石に人が多いところで抱きかかえられるのは恥ずかしい、とレイラの発言があった為。ファイザースが近くなってからは降ろしたのである。

 道の脇に段差を見つけ、レイラを休ませようとゲイルはレイラを座らせてから、腫れ上がった足を撫でつつ、申し訳なさそうな表情でレイラに語りかける。

「でも、ごめんね。治してあげられなくて……」

「だから気になさらないで下さい! それに私こそゲイル様の負担になってしまって申し訳ないです……」

「クロウリーみたいの魔術で治してあげられればいいんだけど、癒しの魔術を僕は使うこと出来ないし……」

 そうゲイルが呟くと、レイラは目を大きく開き、心底から驚いた表情になった。

「ゲイル様は魔術も使うことが出来るんですか? あそこまでのお力をお持ちなのに?」

「あ……ちょっとした魔術ならつかえるんだけど、自身の魔力を使う癒しの魔術は僕に使うことは出来なくて……」

 ゲイルにはクロウリーのような膨大な魔力がない。クロウリーのように魔力を渡したり、自身の治癒力を高めるような魔術は使えなかった。ゲイルは少ない自身の魔力を使った魔術と、宙にあるゲイルしか見えないマナの力を使った魔術しか使えない。

「申し訳ありません。私は至らずよく分かりませんが、あそこまでのお力をお持ちし、少しでも魔術がお使いになれるのなら、それはとてつもないことだと思うのですが……」

 レイラはゲイルにそう伝えたあと、首を傾げて不思議そうに小さく呟いた。

「いや、そもそもそんなこと有り得るのかしら……何かの宝具の力であれほどの身のこなしだと思ったのだけれども、魔術も使えるということは宝具は別にある? それともいくつもの力を使える宝具? でも、そんなものあるのかしら……」

 そして無意識に傷んでいた足をさすった。するとゲイルがそれに気づき、レイラを思いやる。

「あ、大丈夫?」

「本当に気になさらないで下さい! 治癒士に治してもらうにもお金がかかりますし……」

「お金がかかるのかぁ……ん? 待って! お、お金? お金って何?」

 ゲイルは腕を組んで首を傾げながらレイラにそう尋ねた。

「え……お金をご存知無いのですか?」

 尋ねられたレイラは呆気に取られた表情になってしまう。

「う、うん……」

「今までどうやって生きていらっしゃったんですか?」

「食べ物は狩れば困らなかったからね……」

「お怪我とかは?」

「クロウリーが魔術を使えたし……」

 ゲイルの答えを聞いたレイラは驚いて絶句してしまった。ゲイルはそれが日常だったので、何に驚いているか分からず困った表情を浮かべている。
 しばらくすると我に返ったレイラがこう口にした。

「凄い村だったんですね……マーガイ村は。食料は狩りが全て。怪我は魔術で治す。そんな凄い場所が誰にも知られてないというのも凄いな! と思います! いつか連れて行って下さいね!」

「そ、そうだね……ん? いつか?」

 ゲイルはその言葉に引っかかった様子を示した。が、そんな様子に全く気づかずにレイラは頬に指をあてながら、首を傾げて思考を巡らせる。

「うーん。でも困りましたね……私はどうでもいいのですが、お金がないとなると宿にも泊まれません。ゲイル様が野宿というのは……そうだ! ゲイル様ならきっと!」

 何か閃いた様子でポンっと手を叩いてからレイラは大通りから横に伸びる脇道を指し示した。

「あの道を抜けると冒険者ギルドがあるはずです。そこに行きましょう!」

「え、えっと……あっちだね! いいよ!」

 そしてゲイルはレイラに肩を貸しながらレイラの指さした方角へ歩きだしたのだった。
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