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第九十五話 アマンダの故郷
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ミュシリンに着いた僕たちは、入った瞬間にこう声をかけられた。
「アインス様、いらっしゃいませ」
と。まさか名前を呼ばれるなんて予想していなかったから、僕はとても驚いてしまった。しかも今回はキャスカじゃない、僕の知らない店員さんだった。
「え? なんで知ってるんですか? 会った事あります?」
「先日、キャロル様のご友人とご一緒にいらっしゃった際に、給仕をさせて頂きましたので」
「え、あの時に料理持ってきてくれた人? あの時はありがとうございます」
すると、僕の言葉にその店員は首を横に振った。
「いえ、とんでもないです。今日はどのようなご要件でしょうか?」
「えっと、キャロルさんに会いに来たんだけど……いないかな?」
「本日はおりますが、あいにく今はオーナーと打ち合わせ中です。確認させて頂ければ幸いなのですが、如何でしょう? 大変申し訳ないですが、お待ち頂けませんでしょうか?」
そして、奥に案内しようとしてくれてるのか、半身をずらしてくれた。別に暇だからここに来たのである。待つ事に全く問題は無かった。
「じゃあ待たせて貰おうかな?」
「かしこまりました。では、こちらへ」
と、僕たちが案内されたのは、先日の離れであった。
「ちょっと? ここって勝手に使っちゃダメなんじゃなかった?」
「左様でございますが、許可は得ておりますので、何も問題はございません」
いやいやいやいや、それは絶対におかしいでしょ! と思った僕は抗議の声を上げる。
「いや、だって、来るのも知らなかったし、前みたいに許可取ってる時間無かったよね?」
「ええ、ただ、いつなんどきであっても、もし、アインス様がいらっしゃったら、こちらにお通しするように、とは店の者一同、ご指示は頂いておりますので……」
僕の抗議など何処吹く風どころか、完璧な答えを返されてしまった。いつ、なんどきでもって言われてるなら、僕はもう何も言うことは出来ない。
「ええ? ま、まぁ許可貰ってるならいいのか……」
そうして僕たちは先日と同様に離れに通された。出てくる茶も同様の超高級品である。
「ご主人様、アマンダ先生って実は凄い人だったんですね……こんな店のオーナーと知り合いで、顔を通しておいてくれたのかも……」
レオナの言葉に僕たちは皆で頷いた……でも何故かリアだけ頷かなかった。
「こないだは知らないって言ってたけど、そんな訳無いよね……だってこんなに待遇良いんだもん……」
と話していると、すぐに部屋の扉がノックされた。
「アインス様。お話中の所失礼致します。キャロル様がいらっしゃいました」
その言葉に僕は驚きの声を上げた。
「え? 早くない? と、とりあえず入って下さい!」
そして僕は慌てて扉を開けてキャロルさんを中に招いた。キャロルさんは離れを少し見渡して、僕にこう言った。
「あら、今日はアマンダは一緒じゃないの?」
「え? 何も聞いてないんですか?」
「ええ。君たちが来たって聞いたから来たけど……って確かにアマンダの事は何も言ってなかったわね……」
キャロルさんは腕を組んで首を少し傾げ、何かを思い出すかのように天井をじっと見ながらそう言った。そして視線を僕に落としてからこう続けた。
「で、今日はアマンダ抜きでどうしたのかしら」
「実はキャロルさんに聞きたいことがあって。そのアマンダ先生なんですが、早めに休暇を取って故郷に帰ってしまったんです」
「え? ホントに?」
キャロルが驚きの声をあげた。
「なんでそんなに驚いてるんですか?」
「だってアマンダと一緒の頃に村から出てきたけど、一度も帰って無いはずよ? なんかあったのかしら……」
「ああ、そう言えば手紙……かなんか持ってましたよ?」
「うーん……手紙ねぇ……さすがにわからないわ……ってごめんね。手紙のこと、何も知らなくて。せっかく聞きに来てくれたのに」
キャロルが苦笑いして僕に謝ってくれた。でも、僕は逆にキャロルさんに謝ってから聞きたいことを話し出す。
「すいません。聞きたいのは手紙のことじゃなくて……ああ、えっと、それで暇になっちゃったから、せっかくだし行ってみようかなって。アマンダ先生の故郷に」
「結構遠いわよ?」
「でも長期の休暇中には帰って来れます?」
キャロルさんは少し考えてからこう言った。
「多分……大丈夫かな?」
「じゃあ一応教えて下さい」
「ロザリーバレーって場所よ」
「わかりました! ロザリーバレーですね」
「行き方は……ちょっと紙にでも書いた方がいいかしら……時間貰っても大丈夫?」
と、その時、カタリナが口を開いた。
「キャロルさん。場所さえ教えて頂ければ、多分大丈夫ですわ。旅に詳しい友達がおりますので」
なるほど。確かに聞けるならそっちの方がいいかも。キャロルさんは忙しいだろうし……
「ええ、それなら良いわ。まぁ、もしわからなかったら、いつでも聞きに来ていいからね」
「はい! ありがとうございます、キャロルさん!」
と席を立ち、帰ろうとするとキャロルさんが止める。
「ちょっと、もう帰るつもり? せっかくだし、何か食べていきなさいよ?」
「え、でも……」
と、その時、キャロルさんが片目を閉じて言った。
「なんか、あなたたちには何でも食べさせてあげなさいってオーナーが言ってたわ。アマンダにいい顔させてあげたいんじゃない? ね、せっかくだから」
「よし!」
「アレ? リア、なんでガッツポーズなんかしてるの?」
ってかそういえばリアはなんで今は人化してるんだろ……別に話を聞きに来るだけなら人化しなくても良かったのに……
「いいでしょ! 前回食べられらなかったから、今回は食べさせてくれても! デ……オーナーが奢るって言ってくれるんだし!」
「ま、まあ、それは良いんだけど……デ? デ、オーナーってなんだ? まいっか。深く考えても仕方ないし。じゃあキャロルさん、お言葉に甘えてお願いします!」
「よーし! 腕奮っちゃうわよ! 覚悟しておいてね!」
キャロルさんは僕たちにそう告げると、離れから出ていったのだった。
「アインス様、いらっしゃいませ」
と。まさか名前を呼ばれるなんて予想していなかったから、僕はとても驚いてしまった。しかも今回はキャスカじゃない、僕の知らない店員さんだった。
「え? なんで知ってるんですか? 会った事あります?」
「先日、キャロル様のご友人とご一緒にいらっしゃった際に、給仕をさせて頂きましたので」
「え、あの時に料理持ってきてくれた人? あの時はありがとうございます」
すると、僕の言葉にその店員は首を横に振った。
「いえ、とんでもないです。今日はどのようなご要件でしょうか?」
「えっと、キャロルさんに会いに来たんだけど……いないかな?」
「本日はおりますが、あいにく今はオーナーと打ち合わせ中です。確認させて頂ければ幸いなのですが、如何でしょう? 大変申し訳ないですが、お待ち頂けませんでしょうか?」
そして、奥に案内しようとしてくれてるのか、半身をずらしてくれた。別に暇だからここに来たのである。待つ事に全く問題は無かった。
「じゃあ待たせて貰おうかな?」
「かしこまりました。では、こちらへ」
と、僕たちが案内されたのは、先日の離れであった。
「ちょっと? ここって勝手に使っちゃダメなんじゃなかった?」
「左様でございますが、許可は得ておりますので、何も問題はございません」
いやいやいやいや、それは絶対におかしいでしょ! と思った僕は抗議の声を上げる。
「いや、だって、来るのも知らなかったし、前みたいに許可取ってる時間無かったよね?」
「ええ、ただ、いつなんどきであっても、もし、アインス様がいらっしゃったら、こちらにお通しするように、とは店の者一同、ご指示は頂いておりますので……」
僕の抗議など何処吹く風どころか、完璧な答えを返されてしまった。いつ、なんどきでもって言われてるなら、僕はもう何も言うことは出来ない。
「ええ? ま、まぁ許可貰ってるならいいのか……」
そうして僕たちは先日と同様に離れに通された。出てくる茶も同様の超高級品である。
「ご主人様、アマンダ先生って実は凄い人だったんですね……こんな店のオーナーと知り合いで、顔を通しておいてくれたのかも……」
レオナの言葉に僕たちは皆で頷いた……でも何故かリアだけ頷かなかった。
「こないだは知らないって言ってたけど、そんな訳無いよね……だってこんなに待遇良いんだもん……」
と話していると、すぐに部屋の扉がノックされた。
「アインス様。お話中の所失礼致します。キャロル様がいらっしゃいました」
その言葉に僕は驚きの声を上げた。
「え? 早くない? と、とりあえず入って下さい!」
そして僕は慌てて扉を開けてキャロルさんを中に招いた。キャロルさんは離れを少し見渡して、僕にこう言った。
「あら、今日はアマンダは一緒じゃないの?」
「え? 何も聞いてないんですか?」
「ええ。君たちが来たって聞いたから来たけど……って確かにアマンダの事は何も言ってなかったわね……」
キャロルさんは腕を組んで首を少し傾げ、何かを思い出すかのように天井をじっと見ながらそう言った。そして視線を僕に落としてからこう続けた。
「で、今日はアマンダ抜きでどうしたのかしら」
「実はキャロルさんに聞きたいことがあって。そのアマンダ先生なんですが、早めに休暇を取って故郷に帰ってしまったんです」
「え? ホントに?」
キャロルが驚きの声をあげた。
「なんでそんなに驚いてるんですか?」
「だってアマンダと一緒の頃に村から出てきたけど、一度も帰って無いはずよ? なんかあったのかしら……」
「ああ、そう言えば手紙……かなんか持ってましたよ?」
「うーん……手紙ねぇ……さすがにわからないわ……ってごめんね。手紙のこと、何も知らなくて。せっかく聞きに来てくれたのに」
キャロルが苦笑いして僕に謝ってくれた。でも、僕は逆にキャロルさんに謝ってから聞きたいことを話し出す。
「すいません。聞きたいのは手紙のことじゃなくて……ああ、えっと、それで暇になっちゃったから、せっかくだし行ってみようかなって。アマンダ先生の故郷に」
「結構遠いわよ?」
「でも長期の休暇中には帰って来れます?」
キャロルさんは少し考えてからこう言った。
「多分……大丈夫かな?」
「じゃあ一応教えて下さい」
「ロザリーバレーって場所よ」
「わかりました! ロザリーバレーですね」
「行き方は……ちょっと紙にでも書いた方がいいかしら……時間貰っても大丈夫?」
と、その時、カタリナが口を開いた。
「キャロルさん。場所さえ教えて頂ければ、多分大丈夫ですわ。旅に詳しい友達がおりますので」
なるほど。確かに聞けるならそっちの方がいいかも。キャロルさんは忙しいだろうし……
「ええ、それなら良いわ。まぁ、もしわからなかったら、いつでも聞きに来ていいからね」
「はい! ありがとうございます、キャロルさん!」
と席を立ち、帰ろうとするとキャロルさんが止める。
「ちょっと、もう帰るつもり? せっかくだし、何か食べていきなさいよ?」
「え、でも……」
と、その時、キャロルさんが片目を閉じて言った。
「なんか、あなたたちには何でも食べさせてあげなさいってオーナーが言ってたわ。アマンダにいい顔させてあげたいんじゃない? ね、せっかくだから」
「よし!」
「アレ? リア、なんでガッツポーズなんかしてるの?」
ってかそういえばリアはなんで今は人化してるんだろ……別に話を聞きに来るだけなら人化しなくても良かったのに……
「いいでしょ! 前回食べられらなかったから、今回は食べさせてくれても! デ……オーナーが奢るって言ってくれるんだし!」
「ま、まあ、それは良いんだけど……デ? デ、オーナーってなんだ? まいっか。深く考えても仕方ないし。じゃあキャロルさん、お言葉に甘えてお願いします!」
「よーし! 腕奮っちゃうわよ! 覚悟しておいてね!」
キャロルさんは僕たちにそう告げると、離れから出ていったのだった。
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