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第百七話 地下の施設
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そこは建物から想像出来ないほどの大きな広間だった。その広間にほぼ等間隔で透明な筒状の物が立っていた。
正確な数は数えた訳では無いが、百以上は並んでいるであろう。
中身は薄い緑色の液体で満たされており、中には、そう、人間であろう物、人間であったであろう物が、入っていた。
手や足だけが無いのはまだまともな方だった。手も足も無い物。上半身しかなく内臓が剥き出しになっている物。首だけだったり、果ては脳だけの物もあった。
「こ、これは……」
僕はこの状況を見て、リアが念話で語った意味を理解したと同時に、理解出来ないとも思った。リアの語った事をそのまま信じるなら、この人、この存在たちは生きていると言う訳だ。そんなのは僕の理解の範疇を超えていた。
「うおぇぇぇぇ」
僕の背後で嘔吐する音が聞こえた。振り向くとその音の主はレオナとカタリナだった。アマンダ先生は言葉を出す事もなく、ただ凝視をしていた。呆気に取られた僕が、制止するのを忘れた一瞬で、皆が部屋に入って来てしまったのだった。
「恐らく、隣の村の人達はほぼ全員なんじゃないかしら……これくらいの人数のはず……」
アマンダ先生は視線を外さずに呟いていた。
「リア……助ける方法は無いの?」
僕はアマンダ先生の事を忘れ、つい呟いてしまった。が、目の前の状況を理解する事に集中しているアマンダ先生の耳には、届かなかったようだった。
「無いわ。この液体から出したら死んじゃうか、溶けて無くなるかどっちかね」
僕の問いにリアがそう答えた。その答えに僕は悔しくなって唇を噛んだ。
しばらく放心状態だったのかもしれない。じっとその光景を見つめていると僕は背後から声をかけられた。
「ご主人様、申し訳ありません。ご迷惑をおかけ致しました」
落ち着いたレオナが僕に声をかけてきた。横でカタリナが頷いている。が、カタリナはまだ口元に手を当てていて顔色が悪い。
その言葉に気を取り直した僕はリアに尋ねた。今度はちゃんと念話を使って、である。
『 もう生きている人はいないの?』
その言葉にリアは部屋の奥の扉を指さした。
『 あっちにいるわ。奥の人達は大丈夫、普通に生きてるわ』
『普通、ね。それは良かった』
その言葉に胸をなで下ろした僕だった。
「アマンダ先生、あっちに扉があります。奥にまだ生きている人達がいるかもしれません。急ぎましょう」
勿論生きている人がいるとは告げずに僕はまっすぐに扉に向かった。すると歩き出した僕に気づき、アマンダ先生はその後を追ってきた。
「アインス君、よく平気ね……」
「平気じゃないですよ……こんな仕業……誰がこんな事を……」
「あ、そうじゃないわ。よくこんな状況で恐怖を覚えないわね。といった意味で言ったのよ。まあいいわ。正直、助かるから」
アマンダ先生はこの状況によく恐怖を覚えない、という意味で言ったのだが、怒りの感情が強い僕は違った意味でとらえてしまっての答えだった。
奥の扉に手を掛け、僕が開ける。中は先程の部屋よりも広く感じた。それは筒状の物がなく、広く感じただけかもしれない。奥の方に人溜まりがあるようだが、あまり動いているようには見えない。
ただ、リアの話の通りなら、そこにいる人たちは生きているとの事だ。
その横で何か動いたような気がした。目を凝らして見ると、一人だけ立っている者がいた。
後から入ってきたアマンダが声をあげる。
「あなたは村長じゃない? 隣村の! 無事だったのね!」
アマンダ先生の問いに村長は動じる事無く口を開いた。
「私が町長です」
その言葉に僕は一瞬、え? と思ったが、アマンダ先生がそっと僕にこう囁いた。
「彼、自分のことを町長っていうの。キッドランドっていう村なのに。なんでかわからないけどね」
それからアマンダ先生は僕より一歩前に出て、村長に言った。
「ええ、それは知ってるわ。以前見た時と変わってないもの……変わってな……い……? そ、それはおかしいわ。なんであなた、歳をとってないの?」
アマンダ先生の記憶の中の村長と今の村長は変わっていない。だからアマンダ先生は気がついた。だが、それがおかしいことも気がついてしまったようだった。何故ならアマンダ先生の記憶では村長に会ったことがあるのはかなり前だから。その記憶との差が無いのはおかしいから。
「ふむ、私に会ったことがあるのか……これは何かあるかもと思い様子をみたが、ある意味正解だったか……」
そう言った村長は満足げ気に頷いていた。その村長をアマンダ先生はしっかりと見つめ問いかけた。
「どういう事?」
「いやね、私の村の者たちをここに連れてきたあと、次は隣の村の連中だと思った矢先、ネズミが一匹、紛れ込んできてな。一応、様子をみようと一旦、隣の村の連中を連れて来るのはやめたんじゃ」
村長が視線をずらした先を見ると、そこには人が一人倒れていた。
「ミリア! 無事だったの!」
アマンダ先生の言葉から、倒れている人はミリアさんのようだった。すると村長は視線をアマンダ先生に戻してから続けた。
「無事だよ。まぁ今は無事だが、先は無い……まさかお主らも生きて帰れると思っていまい?」
その言葉にアマンダ先生はさっと身構えこう呟く。
「全ての元凶はあなただったのね……」
と。
正確な数は数えた訳では無いが、百以上は並んでいるであろう。
中身は薄い緑色の液体で満たされており、中には、そう、人間であろう物、人間であったであろう物が、入っていた。
手や足だけが無いのはまだまともな方だった。手も足も無い物。上半身しかなく内臓が剥き出しになっている物。首だけだったり、果ては脳だけの物もあった。
「こ、これは……」
僕はこの状況を見て、リアが念話で語った意味を理解したと同時に、理解出来ないとも思った。リアの語った事をそのまま信じるなら、この人、この存在たちは生きていると言う訳だ。そんなのは僕の理解の範疇を超えていた。
「うおぇぇぇぇ」
僕の背後で嘔吐する音が聞こえた。振り向くとその音の主はレオナとカタリナだった。アマンダ先生は言葉を出す事もなく、ただ凝視をしていた。呆気に取られた僕が、制止するのを忘れた一瞬で、皆が部屋に入って来てしまったのだった。
「恐らく、隣の村の人達はほぼ全員なんじゃないかしら……これくらいの人数のはず……」
アマンダ先生は視線を外さずに呟いていた。
「リア……助ける方法は無いの?」
僕はアマンダ先生の事を忘れ、つい呟いてしまった。が、目の前の状況を理解する事に集中しているアマンダ先生の耳には、届かなかったようだった。
「無いわ。この液体から出したら死んじゃうか、溶けて無くなるかどっちかね」
僕の問いにリアがそう答えた。その答えに僕は悔しくなって唇を噛んだ。
しばらく放心状態だったのかもしれない。じっとその光景を見つめていると僕は背後から声をかけられた。
「ご主人様、申し訳ありません。ご迷惑をおかけ致しました」
落ち着いたレオナが僕に声をかけてきた。横でカタリナが頷いている。が、カタリナはまだ口元に手を当てていて顔色が悪い。
その言葉に気を取り直した僕はリアに尋ねた。今度はちゃんと念話を使って、である。
『 もう生きている人はいないの?』
その言葉にリアは部屋の奥の扉を指さした。
『 あっちにいるわ。奥の人達は大丈夫、普通に生きてるわ』
『普通、ね。それは良かった』
その言葉に胸をなで下ろした僕だった。
「アマンダ先生、あっちに扉があります。奥にまだ生きている人達がいるかもしれません。急ぎましょう」
勿論生きている人がいるとは告げずに僕はまっすぐに扉に向かった。すると歩き出した僕に気づき、アマンダ先生はその後を追ってきた。
「アインス君、よく平気ね……」
「平気じゃないですよ……こんな仕業……誰がこんな事を……」
「あ、そうじゃないわ。よくこんな状況で恐怖を覚えないわね。といった意味で言ったのよ。まあいいわ。正直、助かるから」
アマンダ先生はこの状況によく恐怖を覚えない、という意味で言ったのだが、怒りの感情が強い僕は違った意味でとらえてしまっての答えだった。
奥の扉に手を掛け、僕が開ける。中は先程の部屋よりも広く感じた。それは筒状の物がなく、広く感じただけかもしれない。奥の方に人溜まりがあるようだが、あまり動いているようには見えない。
ただ、リアの話の通りなら、そこにいる人たちは生きているとの事だ。
その横で何か動いたような気がした。目を凝らして見ると、一人だけ立っている者がいた。
後から入ってきたアマンダが声をあげる。
「あなたは村長じゃない? 隣村の! 無事だったのね!」
アマンダ先生の問いに村長は動じる事無く口を開いた。
「私が町長です」
その言葉に僕は一瞬、え? と思ったが、アマンダ先生がそっと僕にこう囁いた。
「彼、自分のことを町長っていうの。キッドランドっていう村なのに。なんでかわからないけどね」
それからアマンダ先生は僕より一歩前に出て、村長に言った。
「ええ、それは知ってるわ。以前見た時と変わってないもの……変わってな……い……? そ、それはおかしいわ。なんであなた、歳をとってないの?」
アマンダ先生の記憶の中の村長と今の村長は変わっていない。だからアマンダ先生は気がついた。だが、それがおかしいことも気がついてしまったようだった。何故ならアマンダ先生の記憶では村長に会ったことがあるのはかなり前だから。その記憶との差が無いのはおかしいから。
「ふむ、私に会ったことがあるのか……これは何かあるかもと思い様子をみたが、ある意味正解だったか……」
そう言った村長は満足げ気に頷いていた。その村長をアマンダ先生はしっかりと見つめ問いかけた。
「どういう事?」
「いやね、私の村の者たちをここに連れてきたあと、次は隣の村の連中だと思った矢先、ネズミが一匹、紛れ込んできてな。一応、様子をみようと一旦、隣の村の連中を連れて来るのはやめたんじゃ」
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「ミリア! 無事だったの!」
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「無事だよ。まぁ今は無事だが、先は無い……まさかお主らも生きて帰れると思っていまい?」
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「全ての元凶はあなただったのね……」
と。
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