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第1章 帝国編
12話 ブレスレット
しおりを挟む「ねぇ、このお花とても綺麗だわ、なんて言うのかしら」
「それは、モリーネだね、春にしか咲かないからもうすぐで売り場からは無くなるだろうね」
「そうなのね...」
あれから私たちは屋台を練り歩きながら他愛のない会話をしていた。
主に、この国に疎い私が何か質問をして、リヒトがそれに答える、という形だ。
「ねぇリヒト、あなたを無理やり連れてきてしまったけれど...楽しくないなら...」
そう言って、しゃがんだ状態からリヒトを見上げる。
「楽しいよ、すごく楽しい...何より君が笑ってくれるから、それだけで俺は嬉しいよ」
「それならいいのだけど...」
ニヤつきそうになる表情筋をしっかり制御し、火照る頬を見られないために、リヒトに話しかける。
「あ、そうだわ、ここへは貴方への贈り物を買いに来てたんだわ」
「あぁ、確かにそうだったね、別にいいのに」
「いいから、いいから、とりあえずあのお店に行ってみましょう?」
スクッと立ち上がり、私は奥の方にある雑貨屋さんを指さして言った。
「あら、これなんてどうかしら?」
「うん、綺麗なブレスレットだね...でもこれは」
「やっぱりそうよね、あっ、こっちのブレスレットもいいわ」
近くまで来ると色々な装飾品や置物が置かれており、私は端の方に置いてあるブレスレットを見つけるとすぐさま駆け寄った。
ブレスレットだったら剣を扱うリヒトにも身につけられるだろうし、いいかもしれないわね。
でもいきなりブレスレットって重くないかしら。
やっぱり無難に食べ物とかにした方が良かったかもしれないわね。
やっぱりやめましょう、とそうリヒトに言おうとして口を開くと。
「え、なんで?全然重くないよ、逆に君の気持ちが知れて凄く嬉しい、ここは俺が出すから、君も選んで」
「えぇ?ちょっとこれは貴方への贈り物なのよ、自分で買ってどうするのよ」
「ここは譲れないな、これをわざわざ君が選んだってことは俺も覚悟を決めないと」
「覚悟?ちょっと待ってブレスレットを選んだからってなんで覚悟がいるの?」
「なんでって、エリーは俺の求婚を受け入れてくれたんじゃないの?」
私の愛称を呼びながら困惑した表情でリヒトが口を開く。
「ん?待ってどういうことかさっぱりだわ」
「え?エリーは俺と結婚したくないの?」
「求婚?結婚?いや、えっと、なんでそんな話に...」
とそこまで言ってハッと気がつく。
そうだ、ここサージェント帝国は、求婚する時や、婚約する時にブレスレットを贈るんだった。
てっきり指輪とばかり思っていたけど、それは前世の知識があったのとその前世の知識が反映された王国で暮らしていたからだ。
あー、そうだ、そうだった。
この国は指輪じゃないんだわ。
そのことをすっかり失念していた私はおそるおそるリヒトを見上げる。
とても、悲しそうな瞳をしていた。
もしかしたら、いやもしかしなくても、私は最低な人間ではないだろうか。
ここまで無理やりリヒトを連れてきて、挙句の果てに誕生日プレゼントはブレスレットを贈ろうとして、リヒトの気持ちに答えられないのにも関わらず、そんな相手にブレスレットなんて贈ろうとして...。
いや最低だ。
どうしよう、ここまま素直に言ってしまう。
それもそれで傷つくのではないかしら?
私だってリヒトの辛そうな顔を見たくない。
でも気持ちが伴わないのに、そんなもの贈ってもいいのかしら、それを贈ってしまったら何故だか後戻り出来なくなるような気がする。
「...エリー?」
考え込む私にの耳に、リヒトの心配そうな声が届く。
「ごめんなさいリヒト、私の国では婚約者や恋人には指輪を贈るの、だからブレスレットがそう言う意味を持ってるって知らなくて...」
私は悩んだ挙句、正直に言ってしまうことにした。
「そうなんだね、素直に話してくれてありがとう、でもそうだね、指輪ってことはガーディア王国の出身なのかな?」
「...!!よく分かったわね」
「まぁ、指輪を渡す国はそこしかないから」
「確かにそうね」
そう言って私は手に持っていた金粉が舞ったような綺麗なブレスレットを台へと戻した。
けれど、入れ違いのようにリヒトがそのブレスレットを手に取った。
「これ、貰ってもいいかな?俺は君から指輪を贈られるよう努力するから、これは君からの誕生日プレゼントとして貰いたい」
そう言って真剣な目をした。
「あなたがそれでいいなら...」
「うん、それがいいんだ」
ニコッと艶やかな笑うリヒトはやっぱり綺麗だ。
今はまたフードを被ってしまったけれど。その下から覗く瞳が金色に輝いていて、その瞳が私を映す度に、私は貴方に惹かれていってるようなきがした。
もうこのまま、リヒトの想いに答えてもいいのではないか、そう思えてくる。
きっと近い将来私はリヒトに恋をする。
なのに何故、私はこうも躊躇っているのだろうか。
考えられるのは、一つだけ。
愛が冷められるのが死ぬほど辛い事だからだ。
最初から愛情なんて向けられていなければ別にどうっては事ないのだ。
けれど1度その人に愛情を向けられてしまえば、愛が冷めてしまった時、辛いのは私なのだ。
そう、あの頃のアルフレッドのように。
私はもうあんな思いをしたくない。
自分の保身ばかりで嫌になる。
けれど、とてつもなく怖いのだ。
あの、身を引き裂かれるほどの苦痛を、もう二度と味わいたくはなかった。
結局は私はリヒトに先程のブレスレットをプレゼントした。リヒトはとても喜んでくれたけど、私は申し訳なくて仕方なかった。
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