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第十七話 襲撃
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豊臣秀吉が亡くなったことは白日の元となった。
いや、全ての人間が気づいていた。
京や堺では周知の事実として、すでに存在していた。
気がつかないフリを皆がしていた。
さらに、豊臣家を支えてきた前田利家も亡くなり、日本はまた混沌としてきた。
そんな中、No.2の徳川家康が武断派の大名たちや豊臣恩顧の大名たちとの外交を積極化させていた。
加藤清正も家康の外交政策の中心人物一人であり、互いに近づき合っている。
彼が徳川家康と信仰を深めるのは当然である。
前田利家という仲介役がいなくなった今、徳川家康が日の本を総べる存在。
清正はすでに家康に接近し養女を娶り、生き残りに万全な状態。
他の武断派も家康から接近している。
ーー自分たちは安全圏にいる。
心に余裕ができると、思い出すのは憎い敵……石田三成だ。
彼らには私怨があり、三成の報告により昇進がなくなったこともある。
自分たちは命懸けで前線で戦っているのに国内で事務仕事ばかりしている三成が昇進していく。
嫉妬からくる恨み。
北政所や五奉行、三成の部下たちは彼の苦労を理解しているが、武断派は理解する気すらない。
ーー蔚山城での恨み
忖度がない三成はネガティブな報告を秀吉にしており、北政所までも彼に不信感を抱いていた。
利家がいない今こそ三成を亡き者にする最大の好機。
三成は事前に秀頼配下の桑島治右衛門からの報告で知るが、北政所はさらに前から察知しており、仲良くなった平兵衛と十郎に伝え、さらにそれを島左近も気づき、大体の日程も予想していた。
猛将と1000名近い兵士が大坂城下に集まる。
「ついに時が来たな」
福島正則が上機嫌でそう言うと、黒田長政が真剣な表情で尋ねる。
「誠に良いのか?」
「安心しろ。すでに家康殿に話はついている」
家康に近い加藤清正がそう答えた瞬間だった……一人の猛将が力無く前のめりに倒れた。
「孫六、どうした?」
孫六……彼の通称。
彼の名前は正確に言うと、
加藤嘉明。
加藤清正たち、他の六人の武将は周囲を見回した。
彼らは人生の大半を戦場で過ごしている。
転倒した嘉明の周りに血が流れ出していく。
経験から落ち着きを取り戻し、周囲を見渡す。
ーー孫六がやられた……ワシらは狙われている。
少人数で集められた精鋭部隊。
彼らが次々に倒れている。
「て、撤退するぞ」
嘉明がやられ、何人もの精鋭兵士が戦死している。
黒田長政の提案に全員が頷き、撤退を余儀なくされた。
ーー一撃で? 鉄砲のようだが……違う。正確な一撃で全員やられている。
長政だけが目に見えない怪物に気づいている。
怪物を操る正体。
北政所は、さなと遊んでいた。
「さな、この服も似合っていてかわいいわ。誠に嬉しい」
二人は本当の親子のように無邪気に楽しんでいた。
そんな中、小姓の一人がやってきて北政所に耳打ちをする。
「そうですか……孫六が……ふふ」
北政所は加藤嘉明を嫌っていた。
自分が大切に育ててきた豊臣秀勝を蔑ろとしてきた恨み。
彼女は事前に襲撃を予期しており、ある二人の男に暗殺を依頼している。
民家の屋根に二人の男がいる。
十郎と平兵衛。
「十郎、やるな……ここに来ると気づいていたのか?」
十郎は微笑み頷いた。
北政所に会った際、
「多少の誤差はあるかもしれないが、三日以内に精鋭部隊を引き連れて三成を襲撃する。その際に加藤嘉明を仕留めてほしい」と命令されていた。
「あなたの銃の腕前も大したものです」
十郎と平兵衛のもとにもう一人の首謀者である左近がやってくる。
「加藤嘉明の子はまだ元服していない。領地は混乱して今後は敵対する我らに兵を向ける余裕はあるまい」
十郎は彼の言葉に呼応する。
「加藤清正も福島正則も将や精鋭兵士を何人もやられている。静かになるでしょう」
十郎はこの時のために何日も前から民家にいた住人を佐和山城に避難させ準備していた。
平兵衛はポツリと呟く。
「ねね殿……怖いねぇ」
いや、全ての人間が気づいていた。
京や堺では周知の事実として、すでに存在していた。
気がつかないフリを皆がしていた。
さらに、豊臣家を支えてきた前田利家も亡くなり、日本はまた混沌としてきた。
そんな中、No.2の徳川家康が武断派の大名たちや豊臣恩顧の大名たちとの外交を積極化させていた。
加藤清正も家康の外交政策の中心人物一人であり、互いに近づき合っている。
彼が徳川家康と信仰を深めるのは当然である。
前田利家という仲介役がいなくなった今、徳川家康が日の本を総べる存在。
清正はすでに家康に接近し養女を娶り、生き残りに万全な状態。
他の武断派も家康から接近している。
ーー自分たちは安全圏にいる。
心に余裕ができると、思い出すのは憎い敵……石田三成だ。
彼らには私怨があり、三成の報告により昇進がなくなったこともある。
自分たちは命懸けで前線で戦っているのに国内で事務仕事ばかりしている三成が昇進していく。
嫉妬からくる恨み。
北政所や五奉行、三成の部下たちは彼の苦労を理解しているが、武断派は理解する気すらない。
ーー蔚山城での恨み
忖度がない三成はネガティブな報告を秀吉にしており、北政所までも彼に不信感を抱いていた。
利家がいない今こそ三成を亡き者にする最大の好機。
三成は事前に秀頼配下の桑島治右衛門からの報告で知るが、北政所はさらに前から察知しており、仲良くなった平兵衛と十郎に伝え、さらにそれを島左近も気づき、大体の日程も予想していた。
猛将と1000名近い兵士が大坂城下に集まる。
「ついに時が来たな」
福島正則が上機嫌でそう言うと、黒田長政が真剣な表情で尋ねる。
「誠に良いのか?」
「安心しろ。すでに家康殿に話はついている」
家康に近い加藤清正がそう答えた瞬間だった……一人の猛将が力無く前のめりに倒れた。
「孫六、どうした?」
孫六……彼の通称。
彼の名前は正確に言うと、
加藤嘉明。
加藤清正たち、他の六人の武将は周囲を見回した。
彼らは人生の大半を戦場で過ごしている。
転倒した嘉明の周りに血が流れ出していく。
経験から落ち着きを取り戻し、周囲を見渡す。
ーー孫六がやられた……ワシらは狙われている。
少人数で集められた精鋭部隊。
彼らが次々に倒れている。
「て、撤退するぞ」
嘉明がやられ、何人もの精鋭兵士が戦死している。
黒田長政の提案に全員が頷き、撤退を余儀なくされた。
ーー一撃で? 鉄砲のようだが……違う。正確な一撃で全員やられている。
長政だけが目に見えない怪物に気づいている。
怪物を操る正体。
北政所は、さなと遊んでいた。
「さな、この服も似合っていてかわいいわ。誠に嬉しい」
二人は本当の親子のように無邪気に楽しんでいた。
そんな中、小姓の一人がやってきて北政所に耳打ちをする。
「そうですか……孫六が……ふふ」
北政所は加藤嘉明を嫌っていた。
自分が大切に育ててきた豊臣秀勝を蔑ろとしてきた恨み。
彼女は事前に襲撃を予期しており、ある二人の男に暗殺を依頼している。
民家の屋根に二人の男がいる。
十郎と平兵衛。
「十郎、やるな……ここに来ると気づいていたのか?」
十郎は微笑み頷いた。
北政所に会った際、
「多少の誤差はあるかもしれないが、三日以内に精鋭部隊を引き連れて三成を襲撃する。その際に加藤嘉明を仕留めてほしい」と命令されていた。
「あなたの銃の腕前も大したものです」
十郎と平兵衛のもとにもう一人の首謀者である左近がやってくる。
「加藤嘉明の子はまだ元服していない。領地は混乱して今後は敵対する我らに兵を向ける余裕はあるまい」
十郎は彼の言葉に呼応する。
「加藤清正も福島正則も将や精鋭兵士を何人もやられている。静かになるでしょう」
十郎はこの時のために何日も前から民家にいた住人を佐和山城に避難させ準備していた。
平兵衛はポツリと呟く。
「ねね殿……怖いねぇ」
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