小説家と漫画家の淫らなレッスン

ミクラ レイコ

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手に入れた幸せ

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 吾妻祐樹は、自身の寝室で目を覚ました。カーテンの隙間から、僅かに陽の光が差し込んでいる。ふと隣を見ると、スウスウと寝息を立てて眠る女性の姿が目に入った。



 ――真鍋紗季。自身の同僚である雛乃の姉。彼女と身体を重ねるようになって二か月以上が経つ。こうやって、二人一緒に裸のままベッドで眠りに就くのも初めてではない。それでも、祐樹にとって昨日の夜は特別なものだった。



 紗季に、好きだと言ってもらえたのだ。合コンで初めて会った時から夢中だった女性。そんな人に好きだと言ってもらえて、舞い上がらない方がおかしい。



 祐樹は、紗季を起こさないようそっとベッドサイドの棚に手を伸ばすと、スマホを手に取った。見ると、時刻は午前五時五十六分。祐樹も紗季も、まだ寝て良い時間だ。

 祐樹は、紗季の黒い髪をそっと撫でてから、再びベッドに潜り込んだ。そして、微睡まどろみながら昔の事を思い出していた。



       ◆ ◆ ◆



 祐樹は、高校の頃から何故かチャラい男だと思われていた。真面目に授業も受けていたし、服装や髪型も校則違反なんてしていないのに、何故かいい加減な男に見えるらしい。

 そんな祐樹にも好きな子がいて、高校二年の時に放課後の教室で告白した。相手はクラスメイトの清楚系美人。しかし、その子は告白された直後、困ったような顔で言った。



「ごめんね。私、一途な男の子が好きなの。吾妻君みたいな、浮気しそうな人はちょっと……」



 ショックだった。好きな子に浮気しそうと思われていたなんて。それでも、祐樹は笑って「そっか」と言うと、教室を後にした。

 しばらくは落ち込み、親友だった剛志も祐樹を心配していた。しかしそのうち立ち直り、祐樹は今までと同じように高校生活を送った。



 真面目に勉強してきたおかげか、約一年後には第一志望の大学に合格した。当時から絵を描くのが好きだった祐樹は、本当は美大か漫画コースのある専門学校に行きたかった。でも、将来の事を堅実に考え、有名私立大学で経営学を勉強する事にした。



 そして、大学でまた恋に落ちた。同じ講義を履修している斉藤さんは、明るくて可愛くて、魅力的だった。何より、祐樹が建設会社の社長の息子だと知っても今までと態度を変えない所に惹かれた。



 ある日、ドキドキしながら斉藤さんに告白すると、OKの返事を貰えた。舞い上がる程嬉しかったのを覚えている。



 付き合い始めてから一か月くらい経つと、斉藤さんと身体を重ねるようになった。斉藤さんは祐樹に情事のアレコレを教えてくれた。

 斉藤さんが処女ではなかった事に少しモヤモヤしたけれど、斉藤さんの今の彼氏は祐樹なので、気にしないようにした。



 ある日の夕方、祐樹は忘れ物を取りに大学の空き教室へ向かった。しかしそこで、衝撃的な光景が目に入る。

 狭い空き教室の中で、斉藤さんと他の男子学生が濃厚なキスをしていたのだ。祐樹は、思わず教室の中に飛び込んで斉藤さんを問い詰める。すると、斉藤さんは悪びれもせず笑顔で言った。



「どうせあなたも、色んな女とヤってるんでしょう?」



 最近エッチが上手くなったもんねと言われて、祐樹の心の中で何かが壊れる音がした。斉藤さんとは心を通じ合わせたと思っていたのに、彼女は全く祐樹自身を見てくれていなかった。



 それから、祐樹はヤケになってチャラいキャラを演じるようになった。髪の毛も染めて、女の子に甘い言葉をかけるようになった。

 剛志には心配されたけれど、祐樹は以前のような自分に戻る気は無かった。



 大学卒業後、祐樹は父親の会社を手伝う気にもなれず、独学で夢だった漫画家を目指す事にした。漫画は高校生の時からチマチマと描き続けていた。でも、漫画家だけでは食べて行けそうにない。

 剛志が知人の経営するイタリアンレストランで働く事になり、祐樹もそこでバイトとして働かせてもらう事にした。



 キッチン担当の雛乃を始め、レストランのスタッフは皆優しくていい人達だった。漫画のコンテストで奨励賞をもらい、自身の描いた女性向け十八禁漫画が雑誌に掲載され、祐樹は充実した毎日を送っていた。



 そんなある日、雛乃が合コンを企画した。雛乃の姉が失恋したので、慰める目的もあったようだ。

 合コンで会った雛乃の姉、紗季は、大人しい人だった。彼女はあまり人の会話に混ざらず、隅の席で静かにウーロン茶を飲んでいる。



 居心地が悪くないかなと思い、祐樹は紗季に話し掛けてみた。剛志が「チャラそうに見えるけど、悪い奴じゃないんですよ」と祐樹をフォローした後、紗季は言った。「全然チャラくないじゃないですか」と。

 世界が変わった気がした。チャラくないなんて言われたのは、初めてだった。



合コンが解散になり、二次会に行く流れになった。紗季さんと二人で話したい。もっと紗季さんの事を知りたい。

気が付いたら、祐樹は「紗季さんと二人きりで飲み直したい」と言っていた。



 バーで飲んでいると、紗季が一か月前に恋人に振られたと分かった。そして、官能小説の参考にする為に今回の合コンに参加したと言う。



 危ない所だった。もし自分が紗季さんを誘っていなければ、もしかしたら、他の男が紗季さんをお持ち帰りして……そういう行為をしていたかもしれない。

 焦った。そして、祐樹はとんでもない事を口走っていた。



「二人でホテルに行かない?」



 紗季は、素直に祐樹に付いて来た。いざ行為をしてみると、祐樹は紗季に夢中になった。紗季の汗ばんだ肌。可愛い喘ぎ声。初心な反応。その全てが祐樹の気持ちを昂らせた。



 行為が終わった翌朝、紗季はさっさとホテルを出てしまったが、祐樹は紗季との関係をこれきりにする気は無かった。絶対逃がさない。紗季の身も心も自分のものにする。そう固く決意した。







 そして現在。願いは叶い、紗季は祐樹のすぐ手が届く所にいる。その幸せを噛み締めながら、祐樹はまた眠りに落ちた。
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