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記念パーティー
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もうすぐ六月が終わろうというある土曜日の夕方。私の自宅には、私と祐樹さんの二人がいた。祐樹さんが夕食を作ってくれる事になったのだ。
祐樹さんが作ってくれたのは、ビーフシチュー。完成までに結構時間がかかる料理だったけれど、食べてみるとすごく美味しかった。
お肉は柔らかくて、甘さも絶妙。祐樹さんが『riposo』でキッチン担当じゃないのが不思議なくらいだ。
夕食が終わり、リビングのソファーで二人並んでDVDを見ていると、不意に祐樹さんが口を開いた。
「……あのさ、紗季さん。ちょっと、お願いがあるんだけど……」
何だろう。私が祐樹さんに視線を向けると、祐樹さんは言いにくそうにしながら言葉を続けた。
「実はさ、俺……父さんからお見合いを勧められてるんだよね」
「お、お見合い!?」
私は思い切り動揺した。そんな……せっかく祐樹さんと恋人同士になれたのに……。
私が泣きそうな顔になっているのに気付いた祐樹さんが、慌てて手を振った。
「も、もちろん俺は、紗季さん一筋だよ!? だから、お見合いの話も断ったんだ。そしたら、親父が、決まった相手がいるなら会わせろって五月蠅くて……」
そっか……お父さんにしてみれば、息子の恋人が気になるのも当たり前だよね。
「それで……紗季さん。今度、吾妻建設の創業五十周年の記念パーティーがあるんだけど、それに俺と一緒に出席してくれないかな……。パーティーで紗季さんと会えば、きっと父さんも納得してくれると思うし」
緊張するけど、私も祐樹さんの家族に会いたい。私は、頷いて言った。
「はい、出席させて下さい」
◆ ◆ ◆
その約一週間後の土曜日。私は祐樹さんと共に、とあるホテルを訪れていた。都心にある有名なホテル。太陽の光を反射して輝くその建物を見ただけで、私は緊張してしまう。
「……行こうか、紗季さん」
エントランスの前で、祐樹さんが私に笑いかける。私は深呼吸すると、はっきりと答えた。
「はい、祐樹さん」
会場となる広間には、白いテーブルクロスのかかった長いテーブルがいくつも並んでいた。テーブルの上には、既に美味しそうなサラダやローストビーフが並んでいる。ビュッフェ形式のランチらしい。
会場には既に沢山の方々がいて、その方々は次々と祐樹さんに声を掛けていく。それは、祐樹さんが社長の息子だからというだけではない。祐樹さんは紳士的で、とても気遣いの出来る人だ。だから皆、祐樹さんと話すのが心地良いのだ。
しかも、見かけもカッコいい。今祐樹さんは、紺色のスーツを着ていて、とても頼りがいがあるように見える。金色の髪を一つに束ねて、普段下ろしている前髪を撫でつけているのも新鮮だ。
……私は祐樹さんに釣り合っているだろうか。目にはコンタクトレンズを入れて、髪の毛は緩いウェーブにしている。水色のワンピースにジャケットという服装も、この場に会っているはずだ。それでも、少しだけ、不安になってしまう。
私達が色々な方々と挨拶を交わしていると、一組の若い男女がこちらに近付いてくる。男性の方が、笑顔で祐樹さんに声を掛けた。
「祐樹、来てたのか。久しぶりだな」
「ああ、久しぶり。兄さん」
私は目を見開いた。この人が祐樹さんのお兄さんか。お兄さんは、私の方をチラリと見てから、祐樹さんに言った。
「もしかしてこの子が……」
「ああ、俺の恋人だよ」
恋人。その新鮮な響きに私は舞い上がりそうになるけれど、ハッとして挨拶した。
「初めまして。祐樹さんとお付き合いさせて頂いております、真鍋紗季と申します」
私が頭を下げると、祐樹さんのお兄さんは優しい声で言った。
「そんなに畏まらなくても良いですよ。初めまして、真鍋さん。俺は、祐樹の兄で智一といいます」
私は、改めてお兄さん――智一さんを見た。黒髪を短く整えていて、真面目そうに見える。どことなく、祐樹さんに似てるな。
私はふと、智一さんの隣に立つ女性に目を向けた。長い黒髪をアップにした女性。その顔には、見覚えがある。その女性は、私の視線に気付くと、綺麗なお辞儀をして自己紹介した。
「初めまして。智一さんとお付き合いさせて頂いております、雪原睦月と申します」
「……真鍋紗季と申します。よろしくお願い致します……」
私は平静を装って挨拶しながら、心の中で苦笑していた。何せ私は、この人を祐樹さんの恋人だと勘違いしていた事があるのだから。まあ、睦月さん本人はその事を知らないけれど。
「じゃあ、俺達はまた挨拶回りするから、これで。……祐樹、良かったな。可愛い恋人が出来て」
そう言って、智一さんは睦月さんと一緒にその場を離れた。
祐樹さんが作ってくれたのは、ビーフシチュー。完成までに結構時間がかかる料理だったけれど、食べてみるとすごく美味しかった。
お肉は柔らかくて、甘さも絶妙。祐樹さんが『riposo』でキッチン担当じゃないのが不思議なくらいだ。
夕食が終わり、リビングのソファーで二人並んでDVDを見ていると、不意に祐樹さんが口を開いた。
「……あのさ、紗季さん。ちょっと、お願いがあるんだけど……」
何だろう。私が祐樹さんに視線を向けると、祐樹さんは言いにくそうにしながら言葉を続けた。
「実はさ、俺……父さんからお見合いを勧められてるんだよね」
「お、お見合い!?」
私は思い切り動揺した。そんな……せっかく祐樹さんと恋人同士になれたのに……。
私が泣きそうな顔になっているのに気付いた祐樹さんが、慌てて手を振った。
「も、もちろん俺は、紗季さん一筋だよ!? だから、お見合いの話も断ったんだ。そしたら、親父が、決まった相手がいるなら会わせろって五月蠅くて……」
そっか……お父さんにしてみれば、息子の恋人が気になるのも当たり前だよね。
「それで……紗季さん。今度、吾妻建設の創業五十周年の記念パーティーがあるんだけど、それに俺と一緒に出席してくれないかな……。パーティーで紗季さんと会えば、きっと父さんも納得してくれると思うし」
緊張するけど、私も祐樹さんの家族に会いたい。私は、頷いて言った。
「はい、出席させて下さい」
◆ ◆ ◆
その約一週間後の土曜日。私は祐樹さんと共に、とあるホテルを訪れていた。都心にある有名なホテル。太陽の光を反射して輝くその建物を見ただけで、私は緊張してしまう。
「……行こうか、紗季さん」
エントランスの前で、祐樹さんが私に笑いかける。私は深呼吸すると、はっきりと答えた。
「はい、祐樹さん」
会場となる広間には、白いテーブルクロスのかかった長いテーブルがいくつも並んでいた。テーブルの上には、既に美味しそうなサラダやローストビーフが並んでいる。ビュッフェ形式のランチらしい。
会場には既に沢山の方々がいて、その方々は次々と祐樹さんに声を掛けていく。それは、祐樹さんが社長の息子だからというだけではない。祐樹さんは紳士的で、とても気遣いの出来る人だ。だから皆、祐樹さんと話すのが心地良いのだ。
しかも、見かけもカッコいい。今祐樹さんは、紺色のスーツを着ていて、とても頼りがいがあるように見える。金色の髪を一つに束ねて、普段下ろしている前髪を撫でつけているのも新鮮だ。
……私は祐樹さんに釣り合っているだろうか。目にはコンタクトレンズを入れて、髪の毛は緩いウェーブにしている。水色のワンピースにジャケットという服装も、この場に会っているはずだ。それでも、少しだけ、不安になってしまう。
私達が色々な方々と挨拶を交わしていると、一組の若い男女がこちらに近付いてくる。男性の方が、笑顔で祐樹さんに声を掛けた。
「祐樹、来てたのか。久しぶりだな」
「ああ、久しぶり。兄さん」
私は目を見開いた。この人が祐樹さんのお兄さんか。お兄さんは、私の方をチラリと見てから、祐樹さんに言った。
「もしかしてこの子が……」
「ああ、俺の恋人だよ」
恋人。その新鮮な響きに私は舞い上がりそうになるけれど、ハッとして挨拶した。
「初めまして。祐樹さんとお付き合いさせて頂いております、真鍋紗季と申します」
私が頭を下げると、祐樹さんのお兄さんは優しい声で言った。
「そんなに畏まらなくても良いですよ。初めまして、真鍋さん。俺は、祐樹の兄で智一といいます」
私は、改めてお兄さん――智一さんを見た。黒髪を短く整えていて、真面目そうに見える。どことなく、祐樹さんに似てるな。
私はふと、智一さんの隣に立つ女性に目を向けた。長い黒髪をアップにした女性。その顔には、見覚えがある。その女性は、私の視線に気付くと、綺麗なお辞儀をして自己紹介した。
「初めまして。智一さんとお付き合いさせて頂いております、雪原睦月と申します」
「……真鍋紗季と申します。よろしくお願い致します……」
私は平静を装って挨拶しながら、心の中で苦笑していた。何せ私は、この人を祐樹さんの恋人だと勘違いしていた事があるのだから。まあ、睦月さん本人はその事を知らないけれど。
「じゃあ、俺達はまた挨拶回りするから、これで。……祐樹、良かったな。可愛い恋人が出来て」
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