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プレゼント
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翌朝、私が出社するとすぐに唯香さんが私のデスクに近付いてきた。唯香さんは、不敵な笑みを浮かべて私に言う。
「おはよう、真鍋さん。……ねえ、真鍋さん。私、昨日退社した後何をしていたと思う?」
私は、昨日の光景を思い浮かべながらも平静を装って聞いた。
「さあ、何をしていたんですか?」
唯香さんは、ニンマリと笑って答えた。
「私、昨日仕事帰りに偶然吾妻さんに会ったんだけどね。一緒にファミレスで食事をしたのよ。その後、私のショッピングに付き合ってもらってから別れたんだけど……吾妻さん、言ってたわよお。『紗季さんじゃなくて玉城さんと付き合えば良かった』って。吾妻さんが可哀そうだし、別れてあげたら?」
その言葉が、私の胸に突き刺さる。それでも、私は震えながら自分の素直な気持ちを口に出した。
「……それでも、私は、祐樹さんから別れたいとハッキリ言われない限りは、別れるつもりはありません」
「ふうん……そうなの」
唯香さんは、面白くないような表情をしてから言葉を続けた。
「まあ、そりゃあ別れたくないわよね。なんてったって、相手は吾妻建設の社長の息子だもんねえ」
私は、ムッとして言う。
「それじゃあ、私が財産目当てで祐樹さんと付き合ってるみたいじゃないですか」
「あら、違うの?」
私は、ギュッと拳を握って答える。
「違います。私は、祐樹さんの人柄に惹かれたんです」
唯香さんは、フッと笑うと、顔に付いた髪の毛を手で払った。
「まあいいわ、信じてあげる。……ところで、二日後、また『riposo』で打ち合わせをするでしょ? 九時に集まるのよね。……あら? 私、他の日程と勘違いしてたかしら?」
「いえ、合ってますよ。一旦会社に集まってから『riposo』に行きましょう」
私がそう言うと、唯香さんは「ありがとう」と言ってその場を離れた。
◆ ◆ ◆
その二日後。私達はまた『riposo』を訪れていた。先日と同じように、店の片隅のテーブルに六人が集まっている。
私は、いくつかのデザインが印刷された書類をテーブルに置いて説明する。クリエイティブ部門の人達がデザインしたイメージ案だ。
「今の所、Web広告のデザイン候補はこの三つです。一番左のデザインは、日本人向けのメニューである事を赤い文字でデカデカとアピールしてあります。真ん中のデザインは……」
その後も私はデザインについての説明を続けた。その間、唯香さんはジッと祐樹さんを見つめていた。
「……とまあ、それぞれのデザインに特徴があるわけですが、どういった層をターゲットにするかによって選ぶデザインは変わってくると思います」
私が説明を終えると、雛乃が店長である小山内さんに向き直って聞いた。
「店長、どういう層をターゲットにします? 若い女性客をもっと増やすか、ファミリー層を狙うか、思い切って男性客を呼び込むか……」
小山内さんは、考え込むようにしながら答える。
「……俺が日本人向けにメニューを改良したのは、老若男女あらゆる世代に俺の料理を食べてほしいからだ。……選ぶのは難しいが、俺の理想に一番近いのは、ファミリー層をターゲットにする方針かな……」
私は、頷いて言った。
「そうですね。私も先日頂いたデータを踏まえて考えてみました。効率、立地、実現性を総合的に考えると、ファミリー層をターゲットにするのが良いと思います」
それから私達はさらに話し合いを重ね、広告のデザインは、家族が笑って料理を食べているイラストの載ったものに決定した。
打ち合わせが終わり解散となった所で、唯香さんが祐樹さんに近づいて言う。
「あの、吾妻さん。今度、二人でお茶でもしませんか? 素敵なカフェが近くにあるんです」
私の前でよく祐樹さんを誘えるものだ。祐樹さんは、困ったような笑顔で答える。
「すみません、玉城さん。俺、紗季さん以外の女の人と出かけないようにしてるんです。紗季さんに誤解されたくないので」
「えー、でも、この前は私のショッピングに付き合ってくれたじゃないですかー」
祐樹さんは、慌てて言った。
「それは、玉城さんがアドバイスしてくれるって言うから……」
「アドバイス?」
私が首を傾げると、祐樹さんは私から目を逸らし、気まずそうに答えた。
「実は……俺、紗季さんの誕生日プレゼントをサプライズで用意しようと思ってたんだよ。紗季さんの誕生日、もうすぐでしょ?」
「ええっ!!」
祐樹さんは、私がジュエリーショップに入って行く祐樹さん達を見た日の事について話してくれた。
あの日祐樹さんは仕事が早上がりで、夕方、買い物ついでに私の会社の側まで来たらしい。そして、『紗季さん、もう仕事終わるかな。偶然退社する紗季さんとバッタリ会うなんて事無いよな』なんて事を考えながら歩いていたそう。
すると、「吾妻さーん」と声を掛けて来る人物がいた。唯香さんだ。祐樹さんの側に駆け寄って来た唯香さんは、息を切らしながら笑顔で言う。
「吾妻さん、奇遇ですね。どうしたんですか、こんな所で。真鍋さんは、仕事が終わらなくて残業してますよ」
「ああ、そうなんですね……。玉城さんは、今退社した所なんですか?」
「はい、定時に終わるよう頑張っちゃいました!」
唯香さんが、両手で拳を作って笑顔を見せる。祐樹さんは、苦笑して言った。
「そうですか。……俺は、買い物をしにここまで来たんです。もうすぐ紗季さんの誕生日なので、何かプレゼントを探したくて……」
それを聞いた唯香さんは、自分が誕生日プレゼントを選ぶのを手伝うと言って、祐樹さんをファミレスに誘った。
実際プレゼント選びに自信が無かった祐樹さんは、唯香さんの誘いに乗った。本当は私以外の女性と二人きりになりたくなかったけれど、私の先輩である唯香さんの誘いを断るのも角が立つと思ったらしい。
それから、祐樹さんと唯香さんはファミレスで食事をした後、ジュエリーショップを訪れ、祐樹さんは私へのプレゼントを選んだという事らしい。
「おはよう、真鍋さん。……ねえ、真鍋さん。私、昨日退社した後何をしていたと思う?」
私は、昨日の光景を思い浮かべながらも平静を装って聞いた。
「さあ、何をしていたんですか?」
唯香さんは、ニンマリと笑って答えた。
「私、昨日仕事帰りに偶然吾妻さんに会ったんだけどね。一緒にファミレスで食事をしたのよ。その後、私のショッピングに付き合ってもらってから別れたんだけど……吾妻さん、言ってたわよお。『紗季さんじゃなくて玉城さんと付き合えば良かった』って。吾妻さんが可哀そうだし、別れてあげたら?」
その言葉が、私の胸に突き刺さる。それでも、私は震えながら自分の素直な気持ちを口に出した。
「……それでも、私は、祐樹さんから別れたいとハッキリ言われない限りは、別れるつもりはありません」
「ふうん……そうなの」
唯香さんは、面白くないような表情をしてから言葉を続けた。
「まあ、そりゃあ別れたくないわよね。なんてったって、相手は吾妻建設の社長の息子だもんねえ」
私は、ムッとして言う。
「それじゃあ、私が財産目当てで祐樹さんと付き合ってるみたいじゃないですか」
「あら、違うの?」
私は、ギュッと拳を握って答える。
「違います。私は、祐樹さんの人柄に惹かれたんです」
唯香さんは、フッと笑うと、顔に付いた髪の毛を手で払った。
「まあいいわ、信じてあげる。……ところで、二日後、また『riposo』で打ち合わせをするでしょ? 九時に集まるのよね。……あら? 私、他の日程と勘違いしてたかしら?」
「いえ、合ってますよ。一旦会社に集まってから『riposo』に行きましょう」
私がそう言うと、唯香さんは「ありがとう」と言ってその場を離れた。
◆ ◆ ◆
その二日後。私達はまた『riposo』を訪れていた。先日と同じように、店の片隅のテーブルに六人が集まっている。
私は、いくつかのデザインが印刷された書類をテーブルに置いて説明する。クリエイティブ部門の人達がデザインしたイメージ案だ。
「今の所、Web広告のデザイン候補はこの三つです。一番左のデザインは、日本人向けのメニューである事を赤い文字でデカデカとアピールしてあります。真ん中のデザインは……」
その後も私はデザインについての説明を続けた。その間、唯香さんはジッと祐樹さんを見つめていた。
「……とまあ、それぞれのデザインに特徴があるわけですが、どういった層をターゲットにするかによって選ぶデザインは変わってくると思います」
私が説明を終えると、雛乃が店長である小山内さんに向き直って聞いた。
「店長、どういう層をターゲットにします? 若い女性客をもっと増やすか、ファミリー層を狙うか、思い切って男性客を呼び込むか……」
小山内さんは、考え込むようにしながら答える。
「……俺が日本人向けにメニューを改良したのは、老若男女あらゆる世代に俺の料理を食べてほしいからだ。……選ぶのは難しいが、俺の理想に一番近いのは、ファミリー層をターゲットにする方針かな……」
私は、頷いて言った。
「そうですね。私も先日頂いたデータを踏まえて考えてみました。効率、立地、実現性を総合的に考えると、ファミリー層をターゲットにするのが良いと思います」
それから私達はさらに話し合いを重ね、広告のデザインは、家族が笑って料理を食べているイラストの載ったものに決定した。
打ち合わせが終わり解散となった所で、唯香さんが祐樹さんに近づいて言う。
「あの、吾妻さん。今度、二人でお茶でもしませんか? 素敵なカフェが近くにあるんです」
私の前でよく祐樹さんを誘えるものだ。祐樹さんは、困ったような笑顔で答える。
「すみません、玉城さん。俺、紗季さん以外の女の人と出かけないようにしてるんです。紗季さんに誤解されたくないので」
「えー、でも、この前は私のショッピングに付き合ってくれたじゃないですかー」
祐樹さんは、慌てて言った。
「それは、玉城さんがアドバイスしてくれるって言うから……」
「アドバイス?」
私が首を傾げると、祐樹さんは私から目を逸らし、気まずそうに答えた。
「実は……俺、紗季さんの誕生日プレゼントをサプライズで用意しようと思ってたんだよ。紗季さんの誕生日、もうすぐでしょ?」
「ええっ!!」
祐樹さんは、私がジュエリーショップに入って行く祐樹さん達を見た日の事について話してくれた。
あの日祐樹さんは仕事が早上がりで、夕方、買い物ついでに私の会社の側まで来たらしい。そして、『紗季さん、もう仕事終わるかな。偶然退社する紗季さんとバッタリ会うなんて事無いよな』なんて事を考えながら歩いていたそう。
すると、「吾妻さーん」と声を掛けて来る人物がいた。唯香さんだ。祐樹さんの側に駆け寄って来た唯香さんは、息を切らしながら笑顔で言う。
「吾妻さん、奇遇ですね。どうしたんですか、こんな所で。真鍋さんは、仕事が終わらなくて残業してますよ」
「ああ、そうなんですね……。玉城さんは、今退社した所なんですか?」
「はい、定時に終わるよう頑張っちゃいました!」
唯香さんが、両手で拳を作って笑顔を見せる。祐樹さんは、苦笑して言った。
「そうですか。……俺は、買い物をしにここまで来たんです。もうすぐ紗季さんの誕生日なので、何かプレゼントを探したくて……」
それを聞いた唯香さんは、自分が誕生日プレゼントを選ぶのを手伝うと言って、祐樹さんをファミレスに誘った。
実際プレゼント選びに自信が無かった祐樹さんは、唯香さんの誘いに乗った。本当は私以外の女性と二人きりになりたくなかったけれど、私の先輩である唯香さんの誘いを断るのも角が立つと思ったらしい。
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