【完結】週刊誌の記者は忘れられない

若目

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横居の屈辱

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結局、横居は数日間の謹慎を言い渡されることとなった。

一連の騒動の責任を取るという名目もあるが、記事を読んだ誰かが横居自身に危害を加える可能性も考えられたからだ。

それに加えて、青葉を含むほかの記者やカメラマンへの暴言の仕置き目的もあった。
横居は腕がいい反面、ほかの記者に対しての態度が、あまりよろしくなく、前々から顰蹙を買っていたらしかった。
そのつけが、今になってきたのだ。



「マジで死にたい…」
その日の夜、会社の近くにある中華料理屋のテーブルに突っ伏して、横居は嘆いていた。
「それ、さっきも聞いたよ」

同席していた同僚の女性記者の千文真子ちふみまこが、冷たい視線を向けてくる。
彼女の頬には、止血のためのガーゼが貼られていた。

「ねえ、青葉くんが選ばれたのはさ、若さとか顔とか、性格的な面もあるだろうけど、何より大きいのはきちんと「好きです、付き合ってください」って真っ向から言ったことだよ」
千文が言うと、横居は顔を上げて、彼女を睨むように見つめた。
今の彼の髪はボサボサに乱れていて、白目の部分が真っ赤に充血している。

「ただ肉体関係あるだけじゃあ、「付き合った」のカテゴリーにも入れないのは当たり前でしょ?アンタだって、肉体関係あるだけの人が何人もいたことあったんでしょ?最高で何股かけてたよ?仲間内で何股かけてるかとか一晩で何人と寝たかで自慢し合ってたこともあったわよね?」
千文の言うことはもっともなだけに、横居は反論できなかった。

「わたしが思うにさ、人間って基本的に誰のもんでもないよ。人間全員がみんなのものなの。「付き合う」とか「結婚する」っていうのはさ、「私はこの人のものです」「この人は私のものです」っていう証明みたいなもので、名前書くのと一緒。今のアンタは、その証明をまったくせずに、名前も書いてないのに所有権だけを主張してる頭のおかしいヤツ!」
千文がビシッと人差し指を立てて、横居を指差した。


「これは私のだ!って主張する人が2人いたら、名前書いてる人の言い分が通るに決まってるじゃない」
反論出来ずに黙り込んでいる横居を置き去りに、千文はグーっとビールを飲み干した。

「てゆーかアンタ、日頃から「結婚とかありえねー」「付き合うのもムリ!そういうの重ッ!ウザっ!」とか口に出して公言してたじゃない。それは伊達さんの耳にも当然入ってくるわけで……それじゃあ、伊達さんも「あ、それじゃあ、自分と付き合うのだって重いしウザいと思うんだろうな」って発想に着地するよね」
千文がビールジョッキをドンと机に置いた。

「自分が人様にどれだけ不誠実なことしたとか、自分がどれほどクズなのかとか自慢するなんて、万引き自慢いじめ自慢してる中学生みたい!それじゃあ、青葉くんいなくったって、伊達さんは離れたと思うわ!」
「…なーんか、すげえ楯突くじゃん。お前、オレに親でも殺されたワケ?」
千文の畳みかけるような態度に、横居はようやく絞り出すように反論した。

「純粋にアンタのことが嫌いなだけだよ。アンタのことだから、どうせ忘れてるんだろうけど、「彼女が結婚匂わせてきてうざいわー、オレさあ、最近仕事が順調だからジャマしないで欲しいんだけど!」「それでケンカになってさあ、彼女一晩中泣いてたんだよー、まじで重ッ!ウザっ!」とか言ってたの、アレ聞いたときはマジで死ねばいいのにコイツって思ったもん。うちの記者もカメラマンも、大半の人は今回のことザマーミロって思ってるからね?」

「伊達さんも伊達さんだよ。なんでよりにもよって青葉なんだよ…」
横居は、本件とは急に関係ない話を始めた。
もう、彼には反論する気力さえもなかった。
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