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横居の怒り
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横居のテレビ出演以降、週刊文士の編集部とSNSは、いっそう荒れることとなった。
「おう横居。お前、炎上アスリートに「頭大丈夫か?」って言われてるぞ。箸もまともに持てねえヤツに言われちゃあ、終わりだな」
「SNS見てみろよ。3000件くらいコメント来てる」
ほかの編集部員や記者、カメラマンが、横居に詰め寄るような態度を示す。
「うわ、ハッシュタグで「週刊文士不買運動」とか、「文士を許すな」とかめちゃくちゃ出回ってる……え?うわあ!」
途端、ガシャーン!と大きな音がしたかと思うと、握り拳ほどの大きさの石が社内の床に落下した。
何者かが、編集部の窓の外から石を投げ込んできたのだ。
「痛いっ!」
その衝撃で飛んできたガラスの破片が、そばにいた女性記者の頬を横切って、赤い線を引いた。
「大丈夫ですか⁉︎」
青葉が女性記者のもとへ駆け寄った。
「いたたた…」
女性記者の頬から、血が流れている。
「全員、窓から離れなさい!ケガするぞ!!」
ほかの編集部員が叫ぶ。
言われて、窓のそばにいたカメラマンや記者が、一斉にオフィスの内側へ逃げ込む。
「ねえ、横居さん、謝った方がいいんじゃないですか?」
負傷した女性記者に寄り添いながら、青葉が横居に詰め寄ってきた。
「は?」
横居は、青ざめた顔でわなわな震えながら、青葉の顔をまじまじと見つめた。
まさか、自分よりはるかにキャリアが劣る新人記者に、こんなことを言われるとは露ほども思っていなかったのだろう。
「それはできねえよ、青葉」
そばに立っていたカメラマンの大地が、反論した。
「なんでですか⁈」
「謝ったら、訴訟起こされたときに、向こうの有利になるからだよ」
これは本当のことだ。
基本的に、記者が被写体に対して謝罪をしないのは、万が一訴訟を起こされたら、こちらが非を認めたことにある。
出版社としては、なるだけ損害は避けたいということだ。
「そんなこと言ってる場合ですか?ケガ人出てるんですよ?このまんま謝らないでいたら、騒ぎがもっと大きくなって、もっと大変なことになるんじゃないですか?訴訟どころじゃなくなるんじゃないですか?」
青葉がまだまだ食ってかかる。
「お前ら!いったん、落ち着こう。石投げたヤツはもういないみたいだ。ガラスを片付けよう!」
このままではケンカになると考えた敏雄は、大声で皆に呼びかけた。
「わたしが片付けます!」
「ぼくもやります」
そばにいた女性記者が反応すると、青葉もそれに応えて、2人で片付けを始めた。
「ありがとう。きみはこっちに来てくれ。まずは止血しよう」
敏雄が負傷した女性記者を介抱しようとした、そのときだった。
「青葉!おまえ、いい気味だと思ってんだろ!!」
横居は血眼になって、散らばったガラスを片付けている青葉に突っかかってきた。
「…横居さん?」
「さぞかし満足だろ?オレから伊達さんブン盗って、仕事の面でも出し抜けて…「ざまあみろ」と思ってんだろ⁈お前、よくもやってくれたな!!」
「横居、落ち着け!」
今にも殴りかかりそうな横居の肩を掴んで、敏雄はなんとか宥めすかした。
「伊達さん…」
大人しくなった横居は、不服そうな顔で敏雄を見つめた。
そのときの横居の顔はどうしたわけか、以前に取材したA市女子中学生いじめ自殺事件の加害者少女B子によく似ていた。
「おう横居。お前、炎上アスリートに「頭大丈夫か?」って言われてるぞ。箸もまともに持てねえヤツに言われちゃあ、終わりだな」
「SNS見てみろよ。3000件くらいコメント来てる」
ほかの編集部員や記者、カメラマンが、横居に詰め寄るような態度を示す。
「うわ、ハッシュタグで「週刊文士不買運動」とか、「文士を許すな」とかめちゃくちゃ出回ってる……え?うわあ!」
途端、ガシャーン!と大きな音がしたかと思うと、握り拳ほどの大きさの石が社内の床に落下した。
何者かが、編集部の窓の外から石を投げ込んできたのだ。
「痛いっ!」
その衝撃で飛んできたガラスの破片が、そばにいた女性記者の頬を横切って、赤い線を引いた。
「大丈夫ですか⁉︎」
青葉が女性記者のもとへ駆け寄った。
「いたたた…」
女性記者の頬から、血が流れている。
「全員、窓から離れなさい!ケガするぞ!!」
ほかの編集部員が叫ぶ。
言われて、窓のそばにいたカメラマンや記者が、一斉にオフィスの内側へ逃げ込む。
「ねえ、横居さん、謝った方がいいんじゃないですか?」
負傷した女性記者に寄り添いながら、青葉が横居に詰め寄ってきた。
「は?」
横居は、青ざめた顔でわなわな震えながら、青葉の顔をまじまじと見つめた。
まさか、自分よりはるかにキャリアが劣る新人記者に、こんなことを言われるとは露ほども思っていなかったのだろう。
「それはできねえよ、青葉」
そばに立っていたカメラマンの大地が、反論した。
「なんでですか⁈」
「謝ったら、訴訟起こされたときに、向こうの有利になるからだよ」
これは本当のことだ。
基本的に、記者が被写体に対して謝罪をしないのは、万が一訴訟を起こされたら、こちらが非を認めたことにある。
出版社としては、なるだけ損害は避けたいということだ。
「そんなこと言ってる場合ですか?ケガ人出てるんですよ?このまんま謝らないでいたら、騒ぎがもっと大きくなって、もっと大変なことになるんじゃないですか?訴訟どころじゃなくなるんじゃないですか?」
青葉がまだまだ食ってかかる。
「お前ら!いったん、落ち着こう。石投げたヤツはもういないみたいだ。ガラスを片付けよう!」
このままではケンカになると考えた敏雄は、大声で皆に呼びかけた。
「わたしが片付けます!」
「ぼくもやります」
そばにいた女性記者が反応すると、青葉もそれに応えて、2人で片付けを始めた。
「ありがとう。きみはこっちに来てくれ。まずは止血しよう」
敏雄が負傷した女性記者を介抱しようとした、そのときだった。
「青葉!おまえ、いい気味だと思ってんだろ!!」
横居は血眼になって、散らばったガラスを片付けている青葉に突っかかってきた。
「…横居さん?」
「さぞかし満足だろ?オレから伊達さんブン盗って、仕事の面でも出し抜けて…「ざまあみろ」と思ってんだろ⁈お前、よくもやってくれたな!!」
「横居、落ち着け!」
今にも殴りかかりそうな横居の肩を掴んで、敏雄はなんとか宥めすかした。
「伊達さん…」
大人しくなった横居は、不服そうな顔で敏雄を見つめた。
そのときの横居の顔はどうしたわけか、以前に取材したA市女子中学生いじめ自殺事件の加害者少女B子によく似ていた。
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