【完結】週刊誌の記者は忘れられない

若目

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カルマの法則

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彼らの顛末もなかなか悲惨だった。

その場の衝動と思いつきから、夜間に自転車で走っていた女子高生を拉致、監禁、強姦、暴行の果てに殺害。
挙句の果てには証拠隠滅を図ってドラム缶に死体を押し込み、コンクリートで固めて近くの空き地に遺棄する始末。

これほどの蛮行を働いて、ただで済むわけがない。
女子高生は家族から捜索願いが出されていたから、見つかるのだって時間の問題だったのだ。

女子高生を殺害した数日後、たまたま遭遇した警察官に呼び止められ、職務質問を受けた。
少年たちは幼い頃から素行が悪く、警察の厄介になったことが何度もあったから、完全にマークされていたのだ。
顔を見るなり職務質問、なんてことは当たり前だった。

その際に口を滑らせたことから、彼らが女子高生に働いた犯行はすべて明るみに出た。
しかし、少年法に守られた彼らは大した刑罰を受けることもなく、一番重い処罰でも「懲役20年」というものであった。


こんな大きな事件をマスコミが逃すはずはない。
インターネットもない時代だったというのに、報道されるやいなや、瞬く間に世間は怒りに震えた。
しかし、それも法という大きな壁には打ち勝つことができず、年月の経過とともに事件は忘れ去られ、そのうちに少年たちの懲役は明けた。

だが、それだけの大ごとともなれば覚えている人も多い。
少年たちはそれぞれに社会復帰を果たすも、新しい生活を始めた先で素性が発覚して、その場にいられなくなった。

そうなると、もう裏社会で生きていくより他ならない。
そのうち2人は暴力団組員となり、組織内では使い走りにも近い扱いだったという。
もう1人は詐欺集団の下働きとして、いわゆる「出し子」になり、もうひとりは中年の引きこもりとなったと聞いている。

結果、この4人のうち3人はもう一度刑務所の厄介になった。
1人は暴行ならびに監禁、1人は殺人未遂、1人は詐欺罪。
ここまでくると、もう陽の下を大手を振って歩くことはできない。
親兄弟にも見捨てられ、汚い裏街道を独り寂しく生きながら、誰に助けられることもなく、やがて来る死の影に怯えながら生きなくてはならない。

後先を考えず、その場の衝動や思いつきだけで動いた代償は、本人の想像を絶するほど重いのだ。



B子たちはこの少年と並ぶ残虐性と幼稚さを併せ持っている、と敏雄は考えている。
罪状は少年4人組と比べれば軽いものだが、人間がひとり死んでいるのだ。

この事実がある以上、もう彼女たちは表社会を堂々と歩くことなど不可能に等しいだろう。

大半の加害者は、警察の捜査により新たに悪事が発覚したことで何らかの前科がついたり、遺族が起こした民事訴訟によって賠償金を請求されていた。
何の代償も支払うことなく、平穏無事に生きられた者など、敏雄は知らない。

「カルマの法則」というやつだ。
結局、他人にやったことは全て自分に返ってくる。
しかし、自覚がない人間は「なぜ自分ばかりこんな目に遭うのか」と反省しない。
いや、反省できない。

反省できないから同じ過ちを何度も犯し、そこでまた一歩、また一歩と闇社会に踏み込んでいき、堕落していく。
こんな人間を、敏雄は何度も見てきた。

なんてバカげた話だろうと敏雄は思った。
どこかで思い直す機会もあっただろうに、それができないなんて、実にどうしようもない。

──いや、俺だって昔は褒められたもんじゃなかったな…

敏雄は突然、奇妙な自虐の念に駆られて、右手の傷跡に視線を移した。
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