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結婚式へ
迷子
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さてさて、どうしたものかとジュスティーヌは思い悩んでいた。
約1ヶ月前のこと、元上司にあたる老メイドのエレオノールに催促されて、指定の場所に向かってみたはいいものの、そこからどう動けばいいのか全くわからない。
──こんなことなら、仮病でも使って断ればよかったかなあ…
悩みながらジュスティーヌは、左手の爪でボリボリと頭をかいた。
右手には、祝いの品にと持ってきたスイカがぶら下がっている。
しかし、それがまあ嫌というほどに重くて重くて、今にも腕が千切れてしまいそうだった。
──会場はどこだったっけ?ここであってたかなあ?
指定の場所に来たはいいものの、それと思わしきところが見当たらなくて、ジュスティーヌはここ15分くらいずっと、いろんなところを歩き回っていた。
ひょっとして自分はエレオノールから場所を聞き間違えてしまって、見当違いなところへ来てしまったのではないか?
だから、いつまでも会場が見つからないのではないか?
──もう、このまま帰っちゃおうかな…
バカみたいに重たいスイカを持ったまま、もと来た道を歩いて帰るのは一苦労だろうが、この場合はどうしようもない。
「おい、そこのお前」
私のことだろうかと思って、ジュスティーヌはピタリと足を止めた。
「ひょっとしてジュスティーヌか?」
この声には、聞き覚えがある。
「……あっ!エレオノールさん⁈」
声のする方へ顔を向ければ、そこには決して忘れることのない相手の姿があった。
忘れるわけはない。
そのピンと伸びた背筋、その鋭い眼差し、それでいてどこか穏やかな雰囲気。
一庶民の女でしかない自分をジュリエット・ヴァノロス男爵令嬢の影武者と仕立て上げるべく、ビシバシ厳しく鍛えあげてくれた老メイドのエレオノールだ。
「お久しぶりでございます、エレオノールさん!」
ジュスティーヌはエレオノールの元へ駆け寄っていった。
「よく来てくれた。さあ、こっちに来い。もうすぐ結婚式が始まるぞ」
「かしこまりまして!祝いの品を持ってきましたよ!!」
ジュスティーヌは、持ってきたスイカを目の高さまで上げた。
不思議なことに、さっきまでの右手と右肩の痛みと疲れは、最初から何もなかったかのように吹き飛んでいた。
「結局持ってきたのか。律儀なヤツだな」
そんなジュスティーヌを見て、エレオノールはフフッと笑った。
その優しさにあふれた顔がまた懐かしい、とジュスティーヌは思った。
エレオノールについてしばらく歩くと、式場と思わしき場所が目の前に現れた。
同時に、それまた見覚えのある人影がジュスティーヌに近づいてくる。
「ジュスティーヌ!あなた、来てくれたのね!!」
近づいてきたのは、ジュリエット・ヴァノロス令嬢その人だった。
約1ヶ月前のこと、元上司にあたる老メイドのエレオノールに催促されて、指定の場所に向かってみたはいいものの、そこからどう動けばいいのか全くわからない。
──こんなことなら、仮病でも使って断ればよかったかなあ…
悩みながらジュスティーヌは、左手の爪でボリボリと頭をかいた。
右手には、祝いの品にと持ってきたスイカがぶら下がっている。
しかし、それがまあ嫌というほどに重くて重くて、今にも腕が千切れてしまいそうだった。
──会場はどこだったっけ?ここであってたかなあ?
指定の場所に来たはいいものの、それと思わしきところが見当たらなくて、ジュスティーヌはここ15分くらいずっと、いろんなところを歩き回っていた。
ひょっとして自分はエレオノールから場所を聞き間違えてしまって、見当違いなところへ来てしまったのではないか?
だから、いつまでも会場が見つからないのではないか?
──もう、このまま帰っちゃおうかな…
バカみたいに重たいスイカを持ったまま、もと来た道を歩いて帰るのは一苦労だろうが、この場合はどうしようもない。
「おい、そこのお前」
私のことだろうかと思って、ジュスティーヌはピタリと足を止めた。
「ひょっとしてジュスティーヌか?」
この声には、聞き覚えがある。
「……あっ!エレオノールさん⁈」
声のする方へ顔を向ければ、そこには決して忘れることのない相手の姿があった。
忘れるわけはない。
そのピンと伸びた背筋、その鋭い眼差し、それでいてどこか穏やかな雰囲気。
一庶民の女でしかない自分をジュリエット・ヴァノロス男爵令嬢の影武者と仕立て上げるべく、ビシバシ厳しく鍛えあげてくれた老メイドのエレオノールだ。
「お久しぶりでございます、エレオノールさん!」
ジュスティーヌはエレオノールの元へ駆け寄っていった。
「よく来てくれた。さあ、こっちに来い。もうすぐ結婚式が始まるぞ」
「かしこまりまして!祝いの品を持ってきましたよ!!」
ジュスティーヌは、持ってきたスイカを目の高さまで上げた。
不思議なことに、さっきまでの右手と右肩の痛みと疲れは、最初から何もなかったかのように吹き飛んでいた。
「結局持ってきたのか。律儀なヤツだな」
そんなジュスティーヌを見て、エレオノールはフフッと笑った。
その優しさにあふれた顔がまた懐かしい、とジュスティーヌは思った。
エレオノールについてしばらく歩くと、式場と思わしき場所が目の前に現れた。
同時に、それまた見覚えのある人影がジュスティーヌに近づいてくる。
「ジュスティーヌ!あなた、来てくれたのね!!」
近づいてきたのは、ジュリエット・ヴァノロス令嬢その人だった。
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