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Episode2
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「……仮に、何かあるとしても、そんな事を有紗に言われる筋合いは無いわ。お願いだから、もう私には関わらないで!」
感情に任せて怒鳴りたい思いを我慢しながら声を荒らげる事なく有紗に言い放つも、彼女には何を言っても通じないようで、
「別に、お姉ちゃんの事なんてどうでもいいけど、私、百瀬くんを振った事、後悔してるの。彼がお姉ちゃんに嘘をついてる理由も気になるし、もしかしたら彼も私と同じ気持ちかもしれないじゃない? だから、私は私で勝手にやらせてもらうわ」
そう言いながら席を立つと、振り返る事無く店を出て行った。
「……はあ……。本当、有紗に関わるとろくな事がないわ……」
残された私は暫く店に留まり、日が暮れる頃に帰路についた。
私よりも先に帰っていた百瀬くんは、私が帰って来た事に気付くと彼から電話がかかってくる。
「亜夢、俺、夕飯作るから一緒に食べようよ。それと食後にケーキもあるんだ」
どうやら夕食のお誘いらしく、あまりお腹も空いてないし、正直食事をする気分にはなれないのだけど、有紗に聞いた話を彼に聞いてみたいと思った私は、
「うん、それじゃあ着替えたらお邪魔するね」
誘いを受ける事にしてひとまず部屋着に着替えてから百瀬くんの部屋を訪れた。
合鍵で部屋に入ると、既に料理に取り掛かっていた百瀬くんはキッチンから笑顔で迎えてくれる。
彼の笑顔は大好きなのに、有紗から聞いた話が頭から離れず、いつものように返せない。
そんな私の変化にいち早く気付いた彼は手を止めると、傍までやって来て『どうしたの?』と尋ねてくる。
夕食を食べてからと思っていたけど、このままでは居られなかった私は、
「……あのね、私、百瀬くんに聞きたい事があるの」
俯き加減だった顔を上げて彼と目を合わせると、真剣な表情を向けてそう話を切り出した。
「話? ってかどうしたの? そんなに思い詰めた顔して」
「……今日、有紗に会ってきた」
「妹さんに? 何でまた」
「……あの子が、百瀬くんについて、話があるっていうから」
私が有紗の名前を出し、百瀬くんの事で話があったと言った瞬間、彼の顔色が一瞬だけ変わるのを、私は見逃さなかった。
「……それじゃあ、座って話そうか」
「……そう、だね」
百瀬くんは観念したかのように座る事を提案したので、私たちは並んでソファーに座った。
「……百瀬くん、私がこれから何を話そうとしてるか、分かる?」
「…………」
「私ね、百瀬くんは私を裏切らないって、信じてる。それは今も変わらない。けど、嘘をつかれるのも、嫌なの。何かあるのなら、きちんと話して欲しい」
「…………」
私の言葉に、彼は何も話さない。明らかにバツの悪そうな顔をしているのが分かる。
知りたいけど、知りたくない。
人間、知らない方が幸せな事だってある。
もしかしたらこれは知らない方が幸せだったのかもしれないけど、今はもうハッキリさせないと気が済まないところまで来てしまったから、私は小さく深呼吸をした後、「…………百瀬くんは、有紗と初対面なんかじゃ、無かったんだよね?」と尋ねた。
「…………彼女が、そう言ったの?」
「うん」
「……そっか。ごめん亜夢、彼女と初対面だなんて嘘ついて」
「……どうして、嘘なんかついたの?」
「それは……」
「私、裏切られるのも嫌いだけど、嘘つかれるのはもっと嫌なの。何かあるのなら、初めに言って欲しかった」
「本当にごめん! これについてはずっと迷ってたんだ、亜夢に声を掛けて、彼女の話を聞いたあの日から! だけど、亜夢は酷く彼女を嫌ってたし、それなのに俺が彼女と付き合ってたなんて知ったら、傍に居てくれないと思ったから……だから、言えなかった」
謝りながら項垂れる百瀬くん。
彼のその言葉に、嘘は無いのだと思う。
それに、有紗から聞いていたとは言え百瀬くんの口から有紗と付き合っていた事を改めて聞くと余計に辛くなった。
「……本当にそれだけ? やましい事があるから隠してたんじゃないの?」
「そうじゃない! 言えなかった理由はさっき話した通りだよ。それと、これ以上隠し事はしたくないから言うけど、彼女とはもう過去の事で、付き合ったのだって……成り行きっていうかなんて言うか、別に好きだったからじゃないんだ」
「何それ? 百瀬くんは好きでもない人と平気で付き合えるって事?」
「……それは」
有紗との事を弁解したいのか、百瀬くんは色々言葉を並べ立てるけれど、彼が発言する度、百瀬くんの事が分からなくなる。
「亜夢、一旦俺の話を聞いて……」
「嫌! 聞きたくない! 百瀬くんは裏切らないって信じてたのに! もう、分からないよ!」
「亜夢……俺は――」
彼が私に触れようとしたその時、
「触らないで! 有紗に触れたその手で……私に、触れないで!」
取り乱していたとは言え、私は彼に酷い言葉を浴びせてしまい、それを聞いた百瀬くんは、見た事もないくらいに悲しげな表情を浮かべていた。
感情に任せて怒鳴りたい思いを我慢しながら声を荒らげる事なく有紗に言い放つも、彼女には何を言っても通じないようで、
「別に、お姉ちゃんの事なんてどうでもいいけど、私、百瀬くんを振った事、後悔してるの。彼がお姉ちゃんに嘘をついてる理由も気になるし、もしかしたら彼も私と同じ気持ちかもしれないじゃない? だから、私は私で勝手にやらせてもらうわ」
そう言いながら席を立つと、振り返る事無く店を出て行った。
「……はあ……。本当、有紗に関わるとろくな事がないわ……」
残された私は暫く店に留まり、日が暮れる頃に帰路についた。
私よりも先に帰っていた百瀬くんは、私が帰って来た事に気付くと彼から電話がかかってくる。
「亜夢、俺、夕飯作るから一緒に食べようよ。それと食後にケーキもあるんだ」
どうやら夕食のお誘いらしく、あまりお腹も空いてないし、正直食事をする気分にはなれないのだけど、有紗に聞いた話を彼に聞いてみたいと思った私は、
「うん、それじゃあ着替えたらお邪魔するね」
誘いを受ける事にしてひとまず部屋着に着替えてから百瀬くんの部屋を訪れた。
合鍵で部屋に入ると、既に料理に取り掛かっていた百瀬くんはキッチンから笑顔で迎えてくれる。
彼の笑顔は大好きなのに、有紗から聞いた話が頭から離れず、いつものように返せない。
そんな私の変化にいち早く気付いた彼は手を止めると、傍までやって来て『どうしたの?』と尋ねてくる。
夕食を食べてからと思っていたけど、このままでは居られなかった私は、
「……あのね、私、百瀬くんに聞きたい事があるの」
俯き加減だった顔を上げて彼と目を合わせると、真剣な表情を向けてそう話を切り出した。
「話? ってかどうしたの? そんなに思い詰めた顔して」
「……今日、有紗に会ってきた」
「妹さんに? 何でまた」
「……あの子が、百瀬くんについて、話があるっていうから」
私が有紗の名前を出し、百瀬くんの事で話があったと言った瞬間、彼の顔色が一瞬だけ変わるのを、私は見逃さなかった。
「……それじゃあ、座って話そうか」
「……そう、だね」
百瀬くんは観念したかのように座る事を提案したので、私たちは並んでソファーに座った。
「……百瀬くん、私がこれから何を話そうとしてるか、分かる?」
「…………」
「私ね、百瀬くんは私を裏切らないって、信じてる。それは今も変わらない。けど、嘘をつかれるのも、嫌なの。何かあるのなら、きちんと話して欲しい」
「…………」
私の言葉に、彼は何も話さない。明らかにバツの悪そうな顔をしているのが分かる。
知りたいけど、知りたくない。
人間、知らない方が幸せな事だってある。
もしかしたらこれは知らない方が幸せだったのかもしれないけど、今はもうハッキリさせないと気が済まないところまで来てしまったから、私は小さく深呼吸をした後、「…………百瀬くんは、有紗と初対面なんかじゃ、無かったんだよね?」と尋ねた。
「…………彼女が、そう言ったの?」
「うん」
「……そっか。ごめん亜夢、彼女と初対面だなんて嘘ついて」
「……どうして、嘘なんかついたの?」
「それは……」
「私、裏切られるのも嫌いだけど、嘘つかれるのはもっと嫌なの。何かあるのなら、初めに言って欲しかった」
「本当にごめん! これについてはずっと迷ってたんだ、亜夢に声を掛けて、彼女の話を聞いたあの日から! だけど、亜夢は酷く彼女を嫌ってたし、それなのに俺が彼女と付き合ってたなんて知ったら、傍に居てくれないと思ったから……だから、言えなかった」
謝りながら項垂れる百瀬くん。
彼のその言葉に、嘘は無いのだと思う。
それに、有紗から聞いていたとは言え百瀬くんの口から有紗と付き合っていた事を改めて聞くと余計に辛くなった。
「……本当にそれだけ? やましい事があるから隠してたんじゃないの?」
「そうじゃない! 言えなかった理由はさっき話した通りだよ。それと、これ以上隠し事はしたくないから言うけど、彼女とはもう過去の事で、付き合ったのだって……成り行きっていうかなんて言うか、別に好きだったからじゃないんだ」
「何それ? 百瀬くんは好きでもない人と平気で付き合えるって事?」
「……それは」
有紗との事を弁解したいのか、百瀬くんは色々言葉を並べ立てるけれど、彼が発言する度、百瀬くんの事が分からなくなる。
「亜夢、一旦俺の話を聞いて……」
「嫌! 聞きたくない! 百瀬くんは裏切らないって信じてたのに! もう、分からないよ!」
「亜夢……俺は――」
彼が私に触れようとしたその時、
「触らないで! 有紗に触れたその手で……私に、触れないで!」
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