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Episode2
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「……ごめん」
「……今は、ちょっと冷静になれそうにないから……帰るね」
彼を悲しませてしまった罪悪感と、今更どうする事も出来ないもどかしさで頭の中がぐちゃぐちゃだった私はそれだけ言うと、無言で席を立ってそのまま部屋を出て行った。
勿論、百瀬くんは追い掛けて来ない。
それもそう。追い掛けても、今は私が話をしない事を知っているから。
だけど、自分から彼を拒絶したくせに心のどこかで後悔してる自分もいて、何だかもう、どうすれば良かったのか分からなくなっていた。
自分の部屋へ戻った私は簡単に衣服などの荷物を旅行鞄に詰めると、再び部屋を出る。
百瀬くんとは隣同士で部屋に居ると外へ出た時に顔を合わせてしまうかもしれないし、きちんと気持ちの整理がつくまでは彼に会わない方がいいと思ったから、ひとまず今夜はホテルで過ごす事を決めたのだ。
ホテルに着いて改めて一人になった私は、ベッドの上に寝転んで目を閉じる。
すると思い浮かぶのは、百瀬くんと過ごした楽しい時間ばかり。
彼は、あの時何を言おうとしたのだろう。
嘘は、何の為についていたのだろう。
やっぱりあそこできちんと話を聞くべきだったんじゃないか。
落ち着いて考えてみると、自分の行動に後悔しかない。
そんな時、スマホのバイブ音に気付いた私はのそのそと起き上がると、バッグからスマホを取り出した。
「…………」
画面に表示されているのは百瀬くんの名前。
自分から突き放したくせに声が聞きたくて電話に出てしまいたい衝動に駆られるけれど、グッと堪えて我慢する。
そして暫くするとバイブは鳴り止み、その事にホッと胸を撫で下ろす。
彼からの着信は既に数件あったし、メッセージも何通か送られて来ていたのを見ると、再び胸が締め付けられた。
「……百瀬くん……」
メッセージを開くと、『ごめん』『話がしたい』『ずっと待ってる』という言葉ばかりが綴られている。
私は多分、嘘をつかれた事よりも、有紗と付き合っていたという事実の方が受け入れられないんだと思う。
彼曰く、好きで付き合った訳じゃなかったらしいけど、それでも、有紗の話から推測するに身体の関係はあった訳で、好きでも無い人と平気で寝れるんだと思うと、やっぱりすぐに彼を受け入れる気にはなれない。
そう、頭では分かっているのに、拒絶してしまったあの時の百瀬くんの表情が、頭から離れずにいる。
昔から自分はお人好しの馬鹿だと自覚はしてた。
有紗にいつも大切なモノを盗られて傷付けられているくせに、家族だから、血の繋がった妹だからと有紗との関係を切れないでいるし、やられたらいっそやり返せばいいのに、それすらもしない。
両親は有紗の事を溺愛していて私の言い分なんて聞きはしないし、外面の良い有紗の悪口を言ったところで、誰も信じない。
結局いつも我慢して身を引くのは私。
だから、有紗はつけ上がるのだと分かってはいる。
でも私は、人にされて嫌な事をしたいとは思わなくて、私が耐えればそれで良いと思ってた。
いつか、私を分かってくれる人が現れれば、それだけで救われる気がした。
それが、百瀬くんだって、信じてた。
あんなにも私を想い、私の事を好き、可愛いと言ってくれた彼。
百瀬くん以上の人には、もう出逢えない気すらしていた。
こんな事になるなら、有紗との関係なんて、もっと前から切ってしまえば良かった。
私を理解してくれない両親共々、絶縁すれば良かった。
いっそ有紗から話を聞かなければ、知りたくない事を、知らずに済んだのに。
だけど、どんなに悔やんだところで全ては遅い。
今更無かった事になんて、出来ないから。
「……もう、やだ……」
考えれば考える程、頭の中がパンクしそうで、私はスマホの電源を切ると、そのまま眠りについた。
翌日、今日は日曜日で昨日同様休みなので、昼頃に目を覚ました私はひとまずシャワーを済ませ、一旦家に帰るかこのまま部屋に留まるか悩んでいた。
昨日一晩だけ泊まろうかと思ったけれど、少しの時間じゃ気持ちの整理がつかないだろうと思い、今日も泊まれるように連泊出来る手筈は整っている。
けれど、目を覚まして電源を切っていたスマホを起動させると、あれからも百瀬くんから着信やメッセージは届いていて、彼が物凄く後悔している事がひしひしと伝わってくるのを見ると、やっぱりこのままじゃいけない気がした。
(どんな事実があったとしても、聞かないでこの先の事を決めるのは、駄目だよね)
せめて、彼の話を聞いてから判断すべきだと思い直した私は、一度マンションへ戻る事にした。
「……今は、ちょっと冷静になれそうにないから……帰るね」
彼を悲しませてしまった罪悪感と、今更どうする事も出来ないもどかしさで頭の中がぐちゃぐちゃだった私はそれだけ言うと、無言で席を立ってそのまま部屋を出て行った。
勿論、百瀬くんは追い掛けて来ない。
それもそう。追い掛けても、今は私が話をしない事を知っているから。
だけど、自分から彼を拒絶したくせに心のどこかで後悔してる自分もいて、何だかもう、どうすれば良かったのか分からなくなっていた。
自分の部屋へ戻った私は簡単に衣服などの荷物を旅行鞄に詰めると、再び部屋を出る。
百瀬くんとは隣同士で部屋に居ると外へ出た時に顔を合わせてしまうかもしれないし、きちんと気持ちの整理がつくまでは彼に会わない方がいいと思ったから、ひとまず今夜はホテルで過ごす事を決めたのだ。
ホテルに着いて改めて一人になった私は、ベッドの上に寝転んで目を閉じる。
すると思い浮かぶのは、百瀬くんと過ごした楽しい時間ばかり。
彼は、あの時何を言おうとしたのだろう。
嘘は、何の為についていたのだろう。
やっぱりあそこできちんと話を聞くべきだったんじゃないか。
落ち着いて考えてみると、自分の行動に後悔しかない。
そんな時、スマホのバイブ音に気付いた私はのそのそと起き上がると、バッグからスマホを取り出した。
「…………」
画面に表示されているのは百瀬くんの名前。
自分から突き放したくせに声が聞きたくて電話に出てしまいたい衝動に駆られるけれど、グッと堪えて我慢する。
そして暫くするとバイブは鳴り止み、その事にホッと胸を撫で下ろす。
彼からの着信は既に数件あったし、メッセージも何通か送られて来ていたのを見ると、再び胸が締め付けられた。
「……百瀬くん……」
メッセージを開くと、『ごめん』『話がしたい』『ずっと待ってる』という言葉ばかりが綴られている。
私は多分、嘘をつかれた事よりも、有紗と付き合っていたという事実の方が受け入れられないんだと思う。
彼曰く、好きで付き合った訳じゃなかったらしいけど、それでも、有紗の話から推測するに身体の関係はあった訳で、好きでも無い人と平気で寝れるんだと思うと、やっぱりすぐに彼を受け入れる気にはなれない。
そう、頭では分かっているのに、拒絶してしまったあの時の百瀬くんの表情が、頭から離れずにいる。
昔から自分はお人好しの馬鹿だと自覚はしてた。
有紗にいつも大切なモノを盗られて傷付けられているくせに、家族だから、血の繋がった妹だからと有紗との関係を切れないでいるし、やられたらいっそやり返せばいいのに、それすらもしない。
両親は有紗の事を溺愛していて私の言い分なんて聞きはしないし、外面の良い有紗の悪口を言ったところで、誰も信じない。
結局いつも我慢して身を引くのは私。
だから、有紗はつけ上がるのだと分かってはいる。
でも私は、人にされて嫌な事をしたいとは思わなくて、私が耐えればそれで良いと思ってた。
いつか、私を分かってくれる人が現れれば、それだけで救われる気がした。
それが、百瀬くんだって、信じてた。
あんなにも私を想い、私の事を好き、可愛いと言ってくれた彼。
百瀬くん以上の人には、もう出逢えない気すらしていた。
こんな事になるなら、有紗との関係なんて、もっと前から切ってしまえば良かった。
私を理解してくれない両親共々、絶縁すれば良かった。
いっそ有紗から話を聞かなければ、知りたくない事を、知らずに済んだのに。
だけど、どんなに悔やんだところで全ては遅い。
今更無かった事になんて、出来ないから。
「……もう、やだ……」
考えれば考える程、頭の中がパンクしそうで、私はスマホの電源を切ると、そのまま眠りについた。
翌日、今日は日曜日で昨日同様休みなので、昼頃に目を覚ました私はひとまずシャワーを済ませ、一旦家に帰るかこのまま部屋に留まるか悩んでいた。
昨日一晩だけ泊まろうかと思ったけれど、少しの時間じゃ気持ちの整理がつかないだろうと思い、今日も泊まれるように連泊出来る手筈は整っている。
けれど、目を覚まして電源を切っていたスマホを起動させると、あれからも百瀬くんから着信やメッセージは届いていて、彼が物凄く後悔している事がひしひしと伝わってくるのを見ると、やっぱりこのままじゃいけない気がした。
(どんな事実があったとしても、聞かないでこの先の事を決めるのは、駄目だよね)
せめて、彼の話を聞いてから判断すべきだと思い直した私は、一度マンションへ戻る事にした。
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