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はじまり
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心配してくれているのかもしれないけれど、正直放っておいて欲しい。
何も知らないくせに、偉そうなことを言わないで欲しい。
居場所が無いなら探せばいいだなんて、そんなの、恵まれた人生を送っている人が言う台詞だと私は思う。
私みたいな人間の居場所なんて、どこを探しても見つからない。
だって、今までがそうだったんだから。
「何なんですか? 貴方には関係ないですよね?」
「そりゃそうだが、この場に居合わせちまった以上、見て見ぬふりは出来ねぇだろ」
「……っ」
「俺は相嶋 八雲。ここで会ったのも何かの縁だ。行く所がねぇなら俺に付いてこい」
「え……?」
「行き場がねぇんだろ? ならひとまず俺の家に来い。話はそれからだ」
勝手に話を進めた彼――相嶋さんは痛む身体を庇いつつ立ち上がりながら自分に付いてくるよう言うけれど、私はその場に座ったまま動かない。
相嶋さんの言い分が分からない訳じゃないし、見て見ぬふりが出来ないという言葉も分かるけど、私だって中途半端な気持ちで死のうと思った訳じゃない。
覚悟を決めて、死のうとしたのだ。
だからこそ、今更考えを変えるつもりは無かった。
「おい、早く立て」
「嫌です」
「本当はこんなとこから落ちる勇気もねぇくせに、意地張ってんなよ」
「――ッ!」
その言葉に、私はカチンと来る。
そんなことを言われる筋合いは無いし、そんなに言うなら、目の前で飛び降りてやろうと思った私は無言で立ち上がると、相嶋さんに背を向けてフェンスの向こう側へ歩いて行く。
「おい、お前何を――って、おい、いい加減に――」
相嶋さんの制止を聞かずに縁まで歩いて来た私は彼に背を向けたままで段差を上がり、
「私はね、覚悟を決めて来たの! 生きてたって何もない! 辛いだけなの! だから、私のことは放っておいて!」
そう叫び、瞳を閉じた私はそのまま身を投げた――はずだったのだけど……それは相嶋さんによって、阻まれてしまった。
「ふざけたことしてんじゃねぇよ! 目の前で死なれたら、寝覚め悪ぃだろーが!」
寸前で私の身体は相嶋さんに抱き留められて引き戻され、彼と共に屋上の地面に倒れ込んだ。
「……っ、なんで、邪魔するの……っ、関係ないじゃないっ!」
そう訴えつつも、私の身体は震えていた。
「ったく、馬鹿だな、こんなに震えてんじゃねぇか。怖かったんだろ? 無理すんなよ」
相嶋さんは私を抱き締めたままで身体を起こすと、背中を撫でながら優しく声を掛けてくれる。
「何があったか分からねぇが、命を粗末にすんな。人間、死ぬ気があるなら何でも出来んだろ? こんなとこから飛び降りる勇気があるなら尚更だ。その勇気を生きる為に使え。行き場がねぇなら俺の元へ来い。だから、考え直せよ――心」
「……っ、うっ……ひっく……つ」
そんな風に優しい言葉を掛けられた私の瞳からは大粒の涙が溢れては零れ落ちていく。
分かってた。
死んだって何もならない、全てが終わるだけだって。
悲しむ人もいないから、ひっそりと死んでいくんだと。
だけど本当は、悲しかったし、淋しかった。
そんな最期は迎えたく無かった。
屋上から飛び降りるのだって、本当は怖くてたまらなかった。
本当は、生きていたかった。
「相嶋さん、私……っ、私……」
「泣きたいだけ泣いとけ。そんで、死にたい気持ちも今ここに置いて行け。俺がお前に新たな人生を与えてやるから、俺に付いて来い心」
「……っ、ありがとう、……ございますっ」
不幸な星の下に生まれた人間に、幸せは無い。
居場所も無いって思ってた。
私はきっと、神様に嫌われているのだと思ってた。
だけど、神様は私のことを見捨ててはいなかったのかもしれない。
私は人生で初めて、居場所を見つけられた気がした。
相嶋さんとの出逢いは、
私の人生を大きく変えてくれたのだった――。
何も知らないくせに、偉そうなことを言わないで欲しい。
居場所が無いなら探せばいいだなんて、そんなの、恵まれた人生を送っている人が言う台詞だと私は思う。
私みたいな人間の居場所なんて、どこを探しても見つからない。
だって、今までがそうだったんだから。
「何なんですか? 貴方には関係ないですよね?」
「そりゃそうだが、この場に居合わせちまった以上、見て見ぬふりは出来ねぇだろ」
「……っ」
「俺は相嶋 八雲。ここで会ったのも何かの縁だ。行く所がねぇなら俺に付いてこい」
「え……?」
「行き場がねぇんだろ? ならひとまず俺の家に来い。話はそれからだ」
勝手に話を進めた彼――相嶋さんは痛む身体を庇いつつ立ち上がりながら自分に付いてくるよう言うけれど、私はその場に座ったまま動かない。
相嶋さんの言い分が分からない訳じゃないし、見て見ぬふりが出来ないという言葉も分かるけど、私だって中途半端な気持ちで死のうと思った訳じゃない。
覚悟を決めて、死のうとしたのだ。
だからこそ、今更考えを変えるつもりは無かった。
「おい、早く立て」
「嫌です」
「本当はこんなとこから落ちる勇気もねぇくせに、意地張ってんなよ」
「――ッ!」
その言葉に、私はカチンと来る。
そんなことを言われる筋合いは無いし、そんなに言うなら、目の前で飛び降りてやろうと思った私は無言で立ち上がると、相嶋さんに背を向けてフェンスの向こう側へ歩いて行く。
「おい、お前何を――って、おい、いい加減に――」
相嶋さんの制止を聞かずに縁まで歩いて来た私は彼に背を向けたままで段差を上がり、
「私はね、覚悟を決めて来たの! 生きてたって何もない! 辛いだけなの! だから、私のことは放っておいて!」
そう叫び、瞳を閉じた私はそのまま身を投げた――はずだったのだけど……それは相嶋さんによって、阻まれてしまった。
「ふざけたことしてんじゃねぇよ! 目の前で死なれたら、寝覚め悪ぃだろーが!」
寸前で私の身体は相嶋さんに抱き留められて引き戻され、彼と共に屋上の地面に倒れ込んだ。
「……っ、なんで、邪魔するの……っ、関係ないじゃないっ!」
そう訴えつつも、私の身体は震えていた。
「ったく、馬鹿だな、こんなに震えてんじゃねぇか。怖かったんだろ? 無理すんなよ」
相嶋さんは私を抱き締めたままで身体を起こすと、背中を撫でながら優しく声を掛けてくれる。
「何があったか分からねぇが、命を粗末にすんな。人間、死ぬ気があるなら何でも出来んだろ? こんなとこから飛び降りる勇気があるなら尚更だ。その勇気を生きる為に使え。行き場がねぇなら俺の元へ来い。だから、考え直せよ――心」
「……っ、うっ……ひっく……つ」
そんな風に優しい言葉を掛けられた私の瞳からは大粒の涙が溢れては零れ落ちていく。
分かってた。
死んだって何もならない、全てが終わるだけだって。
悲しむ人もいないから、ひっそりと死んでいくんだと。
だけど本当は、悲しかったし、淋しかった。
そんな最期は迎えたく無かった。
屋上から飛び降りるのだって、本当は怖くてたまらなかった。
本当は、生きていたかった。
「相嶋さん、私……っ、私……」
「泣きたいだけ泣いとけ。そんで、死にたい気持ちも今ここに置いて行け。俺がお前に新たな人生を与えてやるから、俺に付いて来い心」
「……っ、ありがとう、……ございますっ」
不幸な星の下に生まれた人間に、幸せは無い。
居場所も無いって思ってた。
私はきっと、神様に嫌われているのだと思ってた。
だけど、神様は私のことを見捨ててはいなかったのかもしれない。
私は人生で初めて、居場所を見つけられた気がした。
相嶋さんとの出逢いは、
私の人生を大きく変えてくれたのだった――。
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