行き場を失くした私を拾ってくれたのは、強くて優しい若頭の彼でした

夏目萌

文字の大きさ
7 / 15
辛い過去は忘れて新たな未来を

1

しおりを挟む
『この疫病神!!』

 幼い頃から、いつも言われ続けてきた言葉――。

 両親は私が物心つく前に事故で亡くなり、私は母方の祖母に引き取られた。

 だけど、それは望まれたものではなくて、仕方なくのこと。

 結婚を反対されていた私の両親は親類から勘当されていて、父方の祖父母は私の存在自体を疎ましく思っていた。

 母方の祖母もあまり良くは思っていなかったみたいだけど、自分の娘がお腹を痛めて産んだ子供ということで、仕方なく私を引き取ってくれたようだった。

 可愛がられなかったけれど、人並みの生活は送れていたから不満は無かった。

 だけど中学入学を目前に祖母が病気で他界してしまい、今度は母の姉である伯母に引き取られ中学、高校は通わせてもらえたけれど、常にお荷物だと言われ続けていた私は高校卒業と共に就職を決めて家を出た。

 仕事はそこそこ大きな企業の事務職で、寮が完備されていて待遇も良くて、何とかやっていけそうだった。

 仕事にも慣れ、少しずつ新たな生活に馴染み始めていた矢先、職場でセクハラに遭い、暫くは我慢をしていた。

 しかも相手は社長の息子だったから周りに言うことも出来ず、ひたすら耐え続けた。

 でも、働き始めてから一年と少し、職場の飲み会の帰りに襲われかけたことで我慢の限界を迎えた私は上司に相談をしたものの取り合っては貰えず、更には相談したことが本人にバレて根回しされ、社員たちからも疎外された私は虚言癖があると噂され続け、耐えきれなくなって仕事を辞めることになった。

 寮を追い出され、行き場を失った私は築年数の古い格安のアパートを借りて、生活の為にとある個人経営の小さな飲食店でアルバイトを始めた。

 そこで知り合った三つ年上の料理人の彼は良くしてくれて、色々と力になってくれた。

 半年も経つ頃には付き合おうと言われ、相手を信じきっていた私は頷き、彼が私のアパートに転がり込む形で半同棲を始めていた。

 けれど、交際を始めてから数ヶ月後、彼は突然仕事を辞め、アパートにも帰って来なくなり、連絡も取れなくなった。

 しかも、私が留守の間にこれまで貯めていたお金を持ち去ってしまい、私は貯金すら失うことになった。

 更に不幸は続き、私が働いていたお店が閉店することになって仕事も失くなり、またしても不幸のどん底へと落とされた。

 不幸続きで流石に自分の運命を呪い、全てがどうでもよくなってしまって死ぬことを考えてからひと月程死に場所を探していた私はあの廃ビルに辿り着いたのだ――。


「――ッ!!」

 眠りに就いてから暫くして、私は目を覚ました。

 過去にあった色々なことを夢に見て、悲しくなった私の瞳からは、涙が溢れていた。

 すると、ベッドから少し離れた場所にある机に人の気配を感じ、その誰かは椅子から立ち上がるとこちらへ歩み寄り、電気のスイッチが押されたことで辺りが照らされて目の前に居るのが相嶋さんだと分かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない

絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。

ヤンデレヤクザの束縛婚から逃れられません!

古亜
恋愛
旧題:ヤンデレヤクザの束縛婚〜何も覚えていませんが〜 なぜかここ一年の間の記憶を失い、なぜかその間にヤクザの若頭と結婚することになってました。 書いてみたかった記憶喪失もの。相変わらずのヤクザものです。 文字数バラバラで40話くらい。 なんでも許せる方向け。苦手な方は即回れ右でお願いします。 お肌に合わないと感じたら即座に使用を止めてください。誤字脱字等はご指摘いただければありがたく修正させていただきます。肌に合わない、想像と違った等の批判否定は豆腐メンタルにきて泣きますのでご遠慮ください。 この話はフィクションです。

お隣さんはヤのつくご職業

古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。 残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。 元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。 ……え、ちゃんとしたもん食え? ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!! ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ 建築基準法と物理法則なんて知りません 登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。 2020/5/26 完結

駆け出しご当地アイドルがヤクザに一目惚れされた話

一ノ瀬ジェニファー
恋愛
ド田舎の道の駅で、持ち歌もグッズもないまま細々と活動を続けるご当地アイドル・桜あかり(16)。 夢は大きく武道館!……と言いたいところだけど、今はレジ打ちもこなす「なんでもできるマルチな地底アイドル」。 そんな彼女に、ある日転機が訪れる。 地元の道の駅がテレビで紹介され、あかりの笑顔が全国放送で流れたのだ。 その映像を東京で目にしたのが、幸村 静(ゆきむら しずか)。 見た目は完璧、物腰も柔らか──けれどその正体は、裏の世界の男だった。 「会いたいから」というシンプルすぎる理由で、あかりに会いに片道10時間を車で会いに来た。 謎のヲタク知識もを引っ提げて、推し活(という名の執着)が始まる……! これは、アイドルを夢見る少女と、厄介オタクなヤクザの、ピュアで不穏でちょっと笑える物語。

ヤクザの組長は随分と暇らしい

海野 月
恋愛
キャバクラでバイトするリカ 店に来たヤクザの組長である中井律希のテーブルにつかされた 目当ての女の接客じゃないことに面倒くさそうな態度だったこの男。それがどうして―― 「リカちゃん。俺の女になって」 初めての彼氏がヤクザなんて絶対にごめんだ! 汚い手も使いながらあの手この手で迫ってくる中井を躱し、平和な日常を取り戻そうとあがくストーリー

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

虚弱なヤクザの駆け込み寺

菅井群青
恋愛
突然ドアが開いたとおもったらヤクザが抱えられてやってきた。 「今すぐ立てるようにしろ、さもなければ──」 「脅してる場合ですか?」 ギックリ腰ばかりを繰り返すヤクザの組長と、治療の相性が良かったために気に入られ、ヤクザ御用達の鍼灸院と化してしまった院に軟禁されてしまった女の話。 ※なろう、カクヨムでも投稿

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...