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輪舞曲
しおりを挟む軽快な音楽。
たくさんの人の笑い声。
初めて来たそのお店は、異国情緒に溢れていて。
流れる音に合わせて、みんな楽しそうに酒を煽りながら踊ってる。
「ふふ、素敵ね。私達も混ざりましょ」
いい具合に酔いを纏った貴女が、珍しく俺の手を引く。
「え、マジですか?」
普段は見せない積極的な姿に惑わされながら、俺も彼女と一緒にムーブの渦に入り込む。
「あんまり上手くないけど」
そう言って照れ笑いを浮かべながら俺と体を揺らす貴女が、いつも以上に綺麗で。
「そんなの、関係ないですよ」
その綺麗さに目眩が起きそうなのをどうにか堪えてる。
繋いだ手は、ずっと離れない。
しばらくすると曲調が変わって。
ゆったりとした、蠱惑的な雰囲気に包まれる。
その空気に染められるように、周りの恋人たちも少しずつ蕩け始めた。
「ねえ…私のこと、好き?」
見ると、貴女は。
酒で潤んだ瞳をこちらに向けて、誘うように…でもどこか不安げに訊ねてくる。
「ん…」
その瞳をもう少し見ていたくて、わざと言い淀んでいたら。
「…ふふ、急にごめんね、こんなこと」
からかうように微笑んで、俺から離れようとするから。
「おっと」
「っ?」
手を引いて、もう一度俺の腕の中へ。
「…何度でも訊いて下さい。その都度ちゃんと返事しますから」
今更なんて、そんな。
俺だっていつも言ってたい。
それで、貴女が傍に居てくれるなら。
「…愛してます」
そう囁いて、人目をはばかることなく。
艷めく唇を俺ので塞いで。
熱い体を抱き締め
……たところで、目が覚めた。
「…?あー…」
見慣れた天井。
1人の部屋。
貴女は、俺の夢の中。
(…まだ、ケリ、つかねえんだよな…)
戦っている貴女を早く、この腕に抱いて。
愛してるって、伝えたい。
あてもなく、待っている日々の。
覚めて欲しくなかった、夢の話。
fin
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