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第一章・エミリー視点

5話「捕縛」ざまぁ

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「そこまでだ!」

茂みの影からお父様と数人の兵士が現れた。

兵士がリック様が振り上げた手をつかみ、後ろ手にひねりあげる。

そしてリック様に魔力封じの手錠をかけた。

「娘への傷害未遂の現行犯で逮捕させてもらう」

お父様が厳しい口調でおっしゃった。

「それから今の会話は録音させてもらった。
君とエミリーの婚約は、ザロモン侯爵家の有責で破棄する。
それから先ほどの会話は世間に公表させてもらう。
世間は魅了の魔法をかけられた君たちに同情的だったが、先程の会話を聞いたら民衆の考えも変わるだろう」

「くそっ!
エミリー、知っていて僕をはめたのか!」

兵士に拘束されたリック様が私を睨んでくる。

「いいえリック様、私は何も知りませんでした」

お父様が兵士と一緒に、ガゼボの近くの茂みに隠れているとは思わなかった。 

「拷問部屋に連れて行け。こいつには聞きたいことが山ほどある」

「止めろ!
離せ!
僕はザロモン侯爵家の次男だぞ!!」

兵士に連行されるリック様は最後まで喚いていた。

「すまなかったねエミリー。
実はある方の依頼を受け、第二王子アルド殿下、魔術師団長の息子のリック・ザロモン、騎士団長の息子のべナット・リンデマンの動向を監視していたんだよ」

お父様が説明を始めた。

「監視ですか?」

「三人がナウマン元男爵令嬢ミアの魅了の魔法にかかっていたというのが、どうも胡散臭くてね。
本当にミアが魅了の魔法を使えるなら、ミアの処罰が子供が生まれない処置をして娼館に放り込むというのは甘いと思ったんだ。
魅了の魔法を使える者は危険だ。
悪用した者は七親等先の親族まで処刑されてもおかしくない。
それにミアの魔力は平均よりずっと少なかった。
ミアが魅了の魔法を使えたとしても、魔術師団長の息子で高い魔力を持っていてるリックに、魅了の魔法が効くとはとても思えなかったのだよ」

「確かにそうですね」

魔法の効果は魔力量に左右される。

平均以下の魔力量で、魔力の高い三人に魅了の魔法をかけるのは難しいだろう。

「だからわたしたちは、こう考えたのだ。
アルド殿下とリック・ザロモンとべナット・リンデマンは、魅了の魔法にかかってはいなかったのではないかと。
いや、そもそもミアは、魅了の魔法なんて使えなかったのではないかとね」

「えっ?」

ミア様は魅了の魔法を使えなかった?


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