第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ化企画進行中「妹に全てを奪われた元最高聖女は隣国の皇太子に溺愛される」完結

まほりろ

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改稿版

改7話「困ったときは相身互い」

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「本当にありがとう!
 何かお礼をしたいんだが、お嬢ちゃん何か欲しいものはないか?」
「欲しいもの……ですか?」
 私としては姉として元最高聖女として、妹|《ミラ》の治療のフォローをしただけなのですが。
「こう見えてこの人は、ルーデンドルフ帝国の皇族専属の鍛冶師をしてるんだよ。
 あたしは皇族専属のお針子をしてるんだけどね」
 まさかこのようなところで、ルーデンドルフ帝国とゆかりのある方と会えるなんて。
「あの人が魔女の一撃をくらい、あたしは手の痺れが治まらなくて、しばらく休業してたんだよ。
 だけど、あんたのお陰で怪我が治った!
 これからは前よりもバリバリ働くつもりだよ!
 だから、欲しいものがあったら遠慮なく言っておくれ!」
 女性は、ニコニコと笑いながら自身の胸をたたいた。
「ではお言葉に甘えて……。
 お二人はルーデンドルフ帝国に帰るんですよね?
 私の目的地もルーデンドルフ帝国なんです!
 お二人が船に乗るとき、一緒に船に乗せて欲しいんです!」
 夫妻が顔を見合わせる。
「ルーデンドルフ帝国行きの船に、乗せてもらえるだけでいいんです。
 食費は、船内でお掃除や皿洗いをして稼ぎますから!」
 私は全力で頭を下げた。
 ……しばしの沈黙。
 やはり無謀でした。
 ちょっと回復魔法をかけたくらいで、船に乗せてもらおうなんて……。
 図々しいお願いだった。
 ずっと王宮にいたので、ルーデンドルフ帝国までの船賃がいくらかかるか分からない。
 でも安くはないはず。
 それを会ったばかりのお二人に、出してもらおうだなんて浅はかだった。
「アハハハハハ!」
「フフフフフフ!」
 突如笑い声が聞こえ、私は顔を上げた。
「なぁんだそんなことか!」
「もちろん構わないよ!
 あんたの言う通り、あたしたちはルーデンドルフ帝国に帰るところなのさ!
 あたしたちがあんたの分の乗船券も買ってあげるよ。
 一緒にルーデンドルフ帝国へ行こう!」
 今度はこちらがポカンとする番です。
 まさかこんなにあっさり了承されるなんて……!
「ありがとうございます! この御恩は一生忘れません!」
 私はもう一度、深く頭を下げた。
「頭を上げておくれ。
 お礼を言うのはこっちの方だよ。
 亭主の腰の痛みと、あたしの腕のしびれを治してくれたんだからね」
「全くだ。
 怪我のせいで働けなくて商売上がったりだったからな」
 良かった。
 お二人ともとってもいい人みたい。
 グーキュルル……!
 その時、また私のお腹が音をたてた。
 昨日から何も食べていないからって、鳴りすぎ!
 羞恥心で頬に熱がこもる。
「ご飯の心配もすることないよ!
 あんたはあたしたちの恩人なんだからね!
 船に乗ったら、美味しいものをお腹いっぱい食べさせてあげるよ!」
「そうだ遠慮するなよ!
 男にとって仕事が出来ないのは死んだも同然!
 ということは、あんたは俺の命の恩人も同然ってことだ!
 魚でも肉でも果物でも、腹いっぱい食わせてやるよ!」
 港町で出会った夫妻は優しくて、気前の良い方たちでした。
「あたしはゲルダ。
 こっちは亭主のドミニク。
 お嬢さんのお名前は?」
「私の名前はリアーナ・ニク……。」
 リアーナ・ニクラスと言いかけて慌てて口を塞ぐ。
「リアーナです、家名はありません」
 私はお父様に勘当された身。
 もうリアーナ・ニクラスでも、公爵令嬢でもない。
 ニクラスの姓は名乗れない。
「リアーナ、顔だけじゃなく名前もお上品だね」
「まったくだ」
 二人の言葉に私は首を傾げる。
 誰かに上品と言われたのはいつ以来だろう?
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