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13話「魔法が解けて」
しおりを挟む「ああついでに、そこで寝てる メス豚母娘が美人に見えるように、美化の魔法かけていたのもボクだよ」
金髪の少年が俺の顔を見てニタリと笑った。
「美化の魔法だと……?」
とてつもなく嫌な予感がする。
「どういう魔法かは後でわかるよ。
第二王子とアルゾンの婚約に関する書類は回収するね。
ロルフ、この書類を王家と教会に届けてきて」
「ボクを小間使いのように使わないで欲しいな。
まあ第二王子とアルゾンの婚約が白紙に戻ったら困るから、従うけど。
その代わりそいつらの処理は君に任せたよ」
金髪の少年が俺とアルゾンの婚約に関する書類を机の上から回収し、栗色の髪の少年に渡した。
書類を受け取った栗色の髪の少年は、忽然と姿を消した。
おそらく彼は転移の魔法を使ったのだろう。
こんな高度な魔法を一日に何度も見ることになるとは……。
驚きすぎておしっこを漏らしそうだ。
「よしこれで第二王子とアルゾンの婚約は正式に成立した」
魔法使いが黒い笑みを浮かべる。
「第二王子、君に伝えておくことがある。
一度しか言わないから、耳の穴かっぽじってよく聞くんだよ。
ボクたちがカウフマン伯爵家のためにかけていた魔法は、今日限りを持って解くことにする。
ロルフがカウフマン伯爵領にかけていた浄化魔法も、
ヴォルフリックがカウフマン伯爵家の土地を豊かにするためにかけていた魔法も、
ボクがかけていたカウフマン伯爵家の商売がうまくいく魔法も、全~~~~部解くね。
ああついでに、カウフマン伯爵夫人とアルゾンにかけた美化の魔法と、この家が豪華に見えるようにかけていた魔法も解くからね。
この家の真の姿を見るといい」
魔法使いが杖を振るうと、カウフマン伯爵夫人とアルゾンの顔がたちまち醜くなった。
カウフマン伯爵夫人は、年甲斐もなく化粧塗りたくった厚化粧の鬼ババアのようなキツイ顔の女に。
アルゾンはボサボサのピンクの髪にそばかすだらけの肌、曲がった鼻に突き出た顎の二目と見れない不細工に変わった。
「ひぃぃ……!
化け物~~!!」
俺は二人の真実の姿の恐ろしさに、おしっこをちょっと漏らしてしまった。
「君の義理の母親と妻になる女に向かって、化け物は酷いな」
魔法使いは黒い笑みを浮かべ、楽しそうに笑う。
「ボクがこの家に魔法をかけていたのはね、この二人が幼いエラに無茶ぶりばかりしたからだよ。
『古い家に住むのは嫌だ。新しくしろ』
『庭の草むしりを一人でやれ』
『王宮にも負けない庭園を作りあげろ』
『王宮よりも立派なシャンデリアが欲しい』
とかね。
だからボクはこの古い家が豪華に見えるように、荒れ果てた庭が綺麗に見えるように、魔法をかけていたんだよ。
だから君がこれから見るものが、本当のこの家の姿だよ」
魔法使いに言われ周りを見ると、来たときはピカピカに輝いていて見えた床は、あちこち傷んでいた。
新築の家のように見えた屋敷の白い壁にはひびが入り、隙間風が吹きこんできた。
窓から外を見ると、草木が伸び放題の荒れ果てた庭が広がっていた。
これではまるで廃墟ではないか!
それに、なぜか先ほどからひどく空気が悪い。
この土地自体が呪われているのではないか、と思えるぐらい急に体が重くなった。
「カウフマン伯爵とエラが交わした約束は、『エラの義理の妹のアルゾンが婚約するまでは家にいること』だったよね。
ボクたちはその約束が果たされる日まで、エラを守ってきた。
エラが生前父親と交わした約束は、今日をもって果たされた。
エラはこの家を出た。
ボクもエラも二度とこの家に戻ってくることはない。
ボクらの加護の消えたカウフマン伯爵領地の土地はやせ、水は腐り、風は疫病を運んでくるだろう。
直に荒れ果てた大地にはモンスターがうごめき、商売は何をやってもうまくいかなくなるだろう。
長年に渡りエラをいじめてきた継母、エラが継ぐはずの家督を奪った義妹、エラを愛人にしようとした愚かな第二王子には、お似合いの末路だね」
魔法使いは人間慣れした美しい笑みを浮かべると、どこかへ消えてしまった。
後に残されたのは、気を失った兵士と、魔法が解け醜い顔になったカウフマン伯爵夫人と娘のアルゾン。
恐怖のあまりおしっこをちびってしまったカッコ悪い俺だけだった。
「そうそうアルゾンとの婚約を破棄しようなんて考えないことだね。
今以上の不幸が押し寄せてくるよ。
カウフマン伯爵家の惨状がこの国全土に及ぶことになるよ。
そうなったらこの国はおしまいだね」
笑い声と共に、魔法使いの声が聞こえてきた。
姿は見えないのに声だけ送れるのか?
俺の婿入り先はカウフマン伯爵家に決まりなのか?
他に選択肢はないのか?
俺は己の将来に絶望していた……。
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