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7話「愚か者たちの末路」ざまぁ
しおりを挟む「ザイツ男爵! 愛人に産ませた子供を養女に迎え、学園に入れたのが運の尽きだな! 学園に入れるなら貴族社会の常識を叩き込むべきだった! 制御もできない娘なら養子にするべきではなかった! 高位貴族と王族を敵に回して今までのような生活を送れると思うな!」
レオナルドにすごまれザイツ男爵は真っ青な顔になった。
ザイツ男爵の養女であるペピンは、現王太子の婚約者であるスフィアに散々無礼を働いたのだ。今後貴族として生きて行くのは難しいだろう。
「アタシはただミア様みたいに生きたかっただけよ! 王太子と結婚して、美味しい物をいっぱい食べて、綺麗なドレスやアクセサリーをたくさん買ってもらって、パーティーとかお茶会とか華やかな仕事だけして、地味な書類仕事は全部正室に押し付けて、遊んで暮らしたかったの! 男の子を生んで子育ては乳母に押し付けて、その子が成長して国王になったら王太后になるの! いいとこ取りするの!
ミア様は王太子だったハインツ様を籠絡して、公爵令嬢だったアロンザ様をいじめても許されたのに、なんで私だけ罰を受けるのよ!」
ペピンがスフィアを睨みわめき立てた。
「ミアさんも罰を受けましたわ、罰を受けるのに十八年かかりましたけどね。罰を受けるのが、遅いか早いかの違いですよ」
「伯母上、あの無礼者たちの処罰をいかがいたしましょう?」
「そうね、デールとミアさんには市井で生活させて恥をかかせたかった……二人が苦労するところを見たかったのだけど、絶対に周りに迷惑をかけるわよね。周りに迷惑をかけるのは良くないわね。デールとミアさんはしばらく牢屋に入れて頭を冷やさせたあと、子供を作れない体にして強制労働所に送ります」
「ザイツ男爵令嬢は?」
「そうね、彼女は特に罪を犯していないし……」
「王族でなくなったデール様なんかいらない! なんの役にも立たないじゃない! デール様のことはスフィア様にお返しします! その代わりレオナルド様をアタシにください! レオナルド様アタシと結婚して! この際側妃でも我慢するわ!」
ペピンの言葉を聞いてザイツ男爵は青い顔をした。レオナルドとスフィアは顔をしかめた。
「ザイツ男爵令嬢はたった今、不敬罪に相当する罪を犯しましたね」
アロンザが苦笑する。
「王妃陛下、ザイツ男爵令嬢には学園に通っている間とても嫌な思いをさせられました。シフ侯家家からザイツ男爵家へ正式に慰謝料を請求します。慰謝料を払い終わるまで強制労働所で働かせるというのはいかがでしょうか?」
「あらいいアイデアね、スフィア。あなたとは気が合いそうだわ」
「恐れ入ります、王妃陛下」
「僕はお二人を怖いと思いました」
王妃とスフィアが意気投合している横で、レオナルドがため息を吐いた。
「という訳だ、聞いていたな衛兵! デールとミアとザイツ男爵令嬢を牢に連れていけ!」
「「「はっ!」」」
衛兵がペピンのことを縛り上げ、すでに縛られていたデールとミアとともに連行した。
残されたザイツ男爵は、ペピンとの養子縁組を解消するために役所に馬車を走らせた。
ザイツ男爵はデールとミアが男爵家で飲み食いした代金を、ペピンがデールからもらった宝石などを売って支払った。
ザイツ男爵は首の皮一枚で繋がったが、王族と高位貴族を敵に回してただで済むわけがない。
ザイツ男爵が運営していた商会は、全ての取引先から縁を切られ、商売が立ち行かなくなった。
ザイツ男爵は爵位を返上し、平民となり、どこかに姿をくらました。
強制労働所に送られたデールとミアとペピンは……。
「母上のせいだ! 母上が王妃を怒らせたから、俺は王妃に嫌われて城を追い出されたんだ! もう少しで王太子になれたのに!」
「あなたが勝手にアロンザを怒らせたんじゃない! こっちこそ計画が台無しよ! デールが国王になればわたしは王太后になれたのよ!」
「こんなことならレオナルド様に媚を売っておけばよかったーー! デール様が王太子じゃなかったなんて最低ーー!」
「なんだと! だいたいお前さえ現れなければ俺は侯爵令嬢と結婚して、王太子になれて、幸せに暮らせたんだ!」
「なによ! 色じかけに簡単に引っかかったのはデール様でしょう!」
「なにを! このあばずれが!」
三人は強制労働所の中で、来る日も来る日も来る日も……己の不幸を他人のせいにし、目の前の相手をののしって過ごしている。
「食事の時間だ」
看守がパンをおいていく。
「俺のパンだ!」
「わたしのよ!」
「アタシのだってば!」
食事の時間になると一つのパンを奪い合って、貧しく暮らしている。
一方、王宮では。
レオナルドが立太子した一年後、長いこと床にふしていた国王ハインツが崩御。レオナルドが即位した。
「ようやくですわ、十九年かけて間違いを正せましたわ」
王太子時代のハインツに婚約破棄され十九年、ようやく王妃の胸の痞が取れた。
前国王ハインツは希代の愚王として歴史に名を刻まれ、廟号が与えられることも、王族の霊廟に祀られることもなかった。
王太后となったアロンザはレオナルドとスフィアを支え、偉大な国母として歴史にその名を残した。
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