【完結】真実の愛に生きるのならお好きにどうぞ、その代わり城からは出て行ってもらいます

まほりろ

文字の大きさ
8 / 8

8話「アロンザのロマンス」後日談

しおりを挟む
息子のレオナルドが立太子したその日、長年寝たきりでいる兄上の部屋に赴いた。

兄上の部屋は王妃である義姉の姿があった。

「義姉上、お一人ですか?」

「ルー様、ハインツ様と二人きりでお話したくて、主治医には席を外してもらいましたの。デールが王族の身分を捨て城を出て真実の愛を選びましたよ、さすがあなたとミアさんの息子ですねと、お伝えしておりました。あなたもハインツ様に同じことを伝えに来たのではなくて?」

「まぁ似たようなものです。義姉上の報告を聞いて兄上はなんとおっしゃってましたか?」

「何もおっしゃいませんよ。指一本動かすことなく、眠っているだけですわ」

兄上は三年前からこんな状態だ、ただただ死んだような眠っている。それでもレオナルドが王太子になるまでの時間稼ぎにはなった。

三年前に兄上が亡くなっていたら、ポンコツなデールが王太子になった可能性もあった。それだけは避けたかった。

「義姉上は兄上に散々煮え湯を飲まされたので、兄上の顔も見たくないと思っていましたよ」

「ルー様、私を冷血漢のように言わないでくださいな」

義姉上が苦笑いを浮かべる。

「申し訳ありません」

「ハインツ様は婚約者は私の初恋の人でしたから」

義姉上から意外な言葉が出てきて驚いた。兄上と義姉上の婚約は政略的なものだと思っていた。

「初恋ですか?」

「もっともそれは恋に恋する子供の恋でしたけど。ハインツ様は見た目だけは良かったでしょう? 幼い頃のハインツ様は、絵本に出てくる王子様のようで、幼かった私はハインツ様に夢中になってしまいましたの」

確かに幼い頃から兄上は顔だけは良かった。

「成長するにつれてハインツ様が見た目だけで、中身がペラッペラッの優男だと分かりましたけど」

兄上は学業の成績は良かったが、知識として知っているだけで、役立てることができなかったからな。

「それが分かってからは、国のためにハインツ様と結婚して、政の一端をになうことを目標に、厳しい王太子妃の教育に耐えてきましたわ」

義姉上は若いうちに色々と悟ってしまったのだな。

「卒業パーティーでハインツ様に婚約破棄され、前国王陛下と王妃陛下に、卒業パーティーでハインツ様のやらかしたことをなかったことにされ、ハインツ様と結婚するように言われてからは、無でしたわ。周囲が私を仕事をこなすだけの機械だと思っているのなら、望み通り機械になってやろうと思って、がむしゃらに仕事をこなしてきました」

「逃げ出したいとは思いませんでしたか?」

「私が逃げ出したらハインツ様とミア様が政務をするのですよ? あの二人に国を任せたら、あっという間に国が傾いて、他国に攻め込まれてしまいますわ。そうなったとき困るのは民です、民に罪はありませんもの」

「確かにそうですね」

それは兄上の弟である私も頼りないと言われているのだな。

「デールが生まれてからはデールをまともに育て王太子にすることも目的の一つになりましたわ。デールの教育には失敗してしまいましたが」

義姉上は深く息を吐いた。

「デールには王子の地位は重すぎました。悪い見本が近くにいて悪い方に悪い方に引っ張っていくのでは、義姉上がどんなに頑張っても、デールをまともな人間に育てることはできなかったでしょう」

言っては悪いが、デールは引いている遺伝子が悪すぎる。

私の息子のレオナルドはデールのようにならなくて本当に良かった。レオナルドが優秀なのは、私より妻の遺伝子の影響かもしれない。

「ルー様のお子様のレオナルドがまともに育ってくれたのが唯一の救いですわ。これからはレオナルドとスフィアを見守ることが私の生きる理由ですわ」

義姉上はいつからレオナルドを王太子にと考えていたのだろう?

私の推測だが義姉上は兄上が倒れた三年前には、デールのことを半分諦めていたのだろう。

「失礼ながら申しあげます。それではあまりにも王妃陛下の人生が味気ないのではありませんか? 幼い頃の初恋以来ロマンスの一つもないなど……」

私には義姉上のようには生きられそうにない。

「あらロマンスならありましてよ? もっとも私の長い長い片思いですけど」

寝たきりとはいえ兄上の寝所で大胆なことを口になさる、促したのは私なのだが。

「それは初耳ですね。相手がどなたか伺っても?」

仮に兄上がこの会話を聞いて目を覚ましたとしても、兄上にはもはや何もできない。兄上の国王という地位は形だけ、兄上に従う人間など、この城には一人もいないのだ。

それが分かっていてこの場所でこういう話をするのはとても楽しい。

「名前は明かせませんが、ルー様もよく知っている方ですよ。私がハインツ様と結婚してすぐに国を出てしまいましたから、もう十八年も会えていませんが」

十八年前? 私のよく知っている人物……まさか叔父上?

「王族の誰かに不幸があったら、その方は帰国してくださるかしら?」

義姉上は実に恐ろしい事を口になさる。だが王室の全権を握る義姉上を咎められる人間などいない。義姉上を咎めた人間が消される。

確か叔父は今でも独身だったはず。義姉上なら叔父上の居場所も把握しているのだろう。

「ええ、きっと帰ってきますよ。その時は、国に残るように私からも頼んでみます」

レオナルドを王太子にしてくださったお礼です。

「ありがとう」

義姉上が口角を上げニコリとほほ笑んだ。義姉上が兄上と結婚してから以来一度も目にしたことのない、女の顔だった。

義姉上と叔父上の性格から考えて、兄上が崩御しても二人は結婚しないだろう。

叔父上には義姉上の側にいて、義姉上の支えになってほしいと、私はそう願わずにはいられなかった。




――終わり――





☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


2022/03/14に新作を投稿しました!こちらの作品もよろしくお願いします!

「第一王子に婚約破棄されましたが平気です。私を大切にしてくださる男爵様に一途に愛されて幸せに暮らしますので」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/38607887 #アルファポリス

婚約破棄された公爵令嬢が、断罪の場で助けてくれた人に溺愛され幸せに暮らす話です。
ざまぁもあります。
しおりを挟む
感想 13

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(13件)

にゃあん
2022.01.07 にゃあん
ネタバレ含む
2022.01.08 まほりろ

にゃあん様
感想ありがとうございます!(*´艸`*)✨
一気読みして頂けて嬉しいです!(*´∀`*)
その一言で元気百倍です!!✨😄🙌

アロンザにはこれから幸せに生きて欲しいですね😊✨

解除
ちびたん
2022.01.07 ちびたん
ネタバレ含む
2022.01.07 まほりろ

ちびたん様
感想ありがとうございます!(*´∀`*)✨
最終話は蛇足かな…と思いまして、入れようかどうしようか悩んだのですが、入れて良かったです。(*´ω`*)💕

次回作は長編を予定しております。
恋愛小説大賞にエントリーしようか、その時期を外して投稿するべきが思案中です。(恋愛小説大賞の時期に投稿すると埋もれるんですよ💦)

解除
penpen
2022.01.07 penpen
ネタバレ含む
2022.01.07 まほりろ

penpen様
誤字報告ありがとうございます。

解除

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

とある婚約破棄の事情

あかし瑞穂
恋愛
「そんな卑怯な女を王妃にする訳にはいかない。お前との婚約はこの場で破棄する!」 平民の女子生徒に嫌がらせをしたとして、婚約者のディラン王子から婚約破棄されたディーナ=ラインハルト伯爵令嬢。ここまでは、よくある婚約破棄だけど……? 悪役令嬢婚約破棄のちょっとした裏事情。 *小説家になろうでも公開しています。

妹を選んで婚約破棄した婚約者は、平民になる現実を理解していなかったようです

藤原遊
恋愛
跡継ぎとして育てられた私には、将来を約束された婚約者がいた。 ――けれど彼は、私ではなく「妹」を選んだ。 妹は父の愛人の子。 身分も立場も分かったうえでの選択だと思っていたのに、 彼はどうやら、何も理解していなかったらしい。 婚約を破棄し、妹と結ばれた彼は、 当然のように貴族の立場を失い、平民として生きることになる。 一方で、妹は覚悟を決めて現実に向き合っていく。 だが彼だけが、最後まで「元に戻れる」と信じ続けていた。 これは、誰かが罰した物語ではない。 ただ、選んだ道の先にあった現実の話。 覚悟のなかった婚約者が、 自分の選択と向き合うまでを描いた、静かなざまぁ物語。

許すかどうかは、あなたたちが決めることじゃない。ましてや、わざとやったことをそう簡単に許すわけがないでしょう?

珠宮さくら
恋愛
婚約者を我がものにしようとした義妹と義母の策略によって、薬品で顔の半分が酷く爛れてしまったスクレピア。 それを知って見舞いに来るどころか、婚約を白紙にして義妹と婚約をかわした元婚約者と何もしてくれなかった父親、全員に復讐しようと心に誓う。 ※全3話。

【完結】悪役令嬢は断罪後、物語の外で微笑む

あめとおと
恋愛
断罪され、国外追放となった悪役令嬢エレノア。 けれど彼女は、泣かなかった。 すべてを失ったはずのその瞬間、彼女を迎えに来たのは、 隣国最大商会の会頭であり、“共犯者”の青年だった。 これは、物語の舞台を降りた悪役令嬢が、 自由と恋、そして本当の幸せを手に入れるまでの、 ざまぁと甘さを少しだけ含んだショートショート。

婚約者をないがしろにする人はいりません

にいるず
恋愛
 公爵令嬢ナリス・レリフォルは、侯爵子息であるカリロン・サクストンと婚約している。カリロンは社交界でも有名な美男子だ。それに引き換えナリスは平凡でとりえは高い身分だけ。カリロンは、社交界で浮名を流しまくっていたものの今では、唯一の女性を見つけたらしい。子爵令嬢のライザ・フュームだ。  ナリスは今日の王家主催のパーティーで決意した。婚約破棄することを。侯爵家でもないがしろにされ婚約者からも冷たい仕打ちしか受けない。もう我慢できない。今でもカリロンとライザは誰はばかることなくいっしょにいる。そのせいで自分は周りに格好の話題を提供して、今日の陰の主役になってしまったというのに。  そう思っていると、昔からの幼馴染であるこの国の次期国王となるジョイナス王子が、ナリスのもとにやってきた。どうやらダンスを一緒に踊ってくれるようだ。この好奇の視線から助けてくれるらしい。彼には隣国に婚約者がいる。昔は彼と婚約するものだと思っていたのに。

【完結】転生したら断罪イベントの真っ最中。聖女の嘘を暴いたら、王太子が真っ青になりました

丸顔ちゃん。
恋愛
王太子は私――エリシアに婚約破棄を宣言し、 隣では甘ったるい声の“聖女”が「こわかったんですぅ♡」と泣き真似をしている。 だが私は知っている。 原作では、この聖女こそが禁術で王太子の魔力を吸い取り、 私に冤罪を着せて処刑へ追い込んだ張本人だ。 優しい家族を守るためにも、同じ結末は絶対に許さない。 私は転生者としての知識を武器に、 聖女の嘘と禁術の証拠を次々に暴き、 王太子の依存と愚かさを白日の下に晒す。 「婚約は……こちらから願い下げです」 土下座する王太子も、泣き叫ぶ聖女も、もう関係ない。 私は新しい未来を選ぶ。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。