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第一章
九話
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……?
入口の方がまた騒がしい。
私は今、ベッドの中かな。
隣にいるのは……シンラか。
「おーい、神羅~中へ入れろ~」
この声はトウワさん?
私、昨日シンラと……。
それでそのまま寝てしまったんだ。
もう朝になっている。
「朝から騒がしいな。燈倭か……はいはい、入れば?」
「ちょ、シンラっ」
隣で寝ていたシンラは起き上がる。
二人ともまだ服を着ていないのにトウワさんを中に入れるなんて……。
「おや~? ……なんだよお二人さん、昨日はずいぶんお盛んだったんだなぁ」
キャアア?!
まさかそのまま寝室に?!
トウワさんに色々と見られてしまった。
「燈倭、いきなり寝室にくるなよ。今サノメを呼ぶから客間で待ってろ」
「はいはい、神羅様。ごちそうさん」
私とシンラは支度を済ませ、トウワさんが待つ客間まで足を運んだ。
◇ ◇ ◇
「はぁ、本当羨ましい」
「燈倭、まだ嫁が見つからないのか」
トウワさんはじっと私たちを見てくる。
私はというと、トウワさんにシンラと裸でベッドにいるところを見られた気まずさから、目を合わせることができずにいた。
「あぁそれもあるけど……」
「?」
なんだかトウワさんの視線をずっと感じるような……。
気のせいかしら。
「最近、志帆殿を見ていると、なんか巨乳じゃなくても俺は愛せそうだなと思えてくるんだ」
「はぃ?」
「ほぅ、つまり燈倭は、俺から嫁を横取りする気でいると……?」
シンラの声が急に低くなって強い威圧感を感じた。
すると、トウワさんは慌てて首を横に振る。
「おいおい、そんなつもりはねぇ! ただ、女は胸だけじゃねぇっていうか……俺も最近、色々と考え方を改めだしたんだ」
「はぁ……いきなり何を言い出すかと思えば……それはそうでしょ? 女には胸だけではなく、柔らかな尻や白い肢体、それが汗ばんで少し紅潮した肌はとても魅力的だし、特に女の蜜は口にせずにはいられないほど甘美……」
「ひゃあぁ、シ、シンラ! 本当やめてください!」
目の前に相手の私がいるんですよ!
そういうのは男性だけの時にお願いします。
(私との行為を話題にされるのはあまり嬉しくないですけれど)
そしてトウワさん、シンラの艶話に興味津々なのか、前のめりになって真剣に聞くのはやめてくださいね。
露骨に鼻息が荒くなっていて、ちょっと怖いですよ。
「俺だって嫁を迎えたのは、志帆が初めてなんだからね。燈倭は俺より早く生まれてるのに何百年も何やってんのさ」
シンラは二百歳でしたっけ。
百年前の時は嫁をもらわなかったのですね。
まぁその時にいたら、私がシンラに娶られることはなかったでしょうが。
「けどよ、昔は生贄制だったから一人しか生娘がこねぇ上、じじぃどもが優先されたし……」
「まぁ年寄り連中は力も弱くなってるのに、口だけは達者だからね」
年寄り……じじぃ……二人の口からたまに出てきますが、年配の神がけっこういるらしい。
何百年も生きているシンラやトウワさんが呼ぶお年寄りって一体いくつなのかしら。
(数千年は生きていそう)
「そういや爽翠のやつ、昨日嫁ができたみてぇだぞ」
「ほう……」
爽翠さん?
初めて聞く名前ですね。
狐神さんなのは間違いなさそうですが。
「なんでも、失恋で崖から飛び降りようとした所を爽翠が助けたんだとよ。その嬢ちゃん経験なかったんだな。そしたらそのまま娶っちまったらしい。さっき、ラブラブなところを見せつけられてきた……んで、お前らにも見せつけられて、今の俺の心はぐったり」
「別に見せつけてはいない。客間で待ってりゃいいのに、お前が勝手に寝室まで入ってきたんだろ? それにしても……ふむ、爽翠はずいぶんと巧くやったんだねぇ……」
神に娶られるって、人間の女性にとって予想外の災難みたいなイメージがあったけど、初めからこんな相思相愛パターンもあるようだ。
まぁ何百年前も遡って、生贄として選ばれた女性の場合は、ご本人も覚悟の上だったかもしれないけれど。
入口の方がまた騒がしい。
私は今、ベッドの中かな。
隣にいるのは……シンラか。
「おーい、神羅~中へ入れろ~」
この声はトウワさん?
私、昨日シンラと……。
それでそのまま寝てしまったんだ。
もう朝になっている。
「朝から騒がしいな。燈倭か……はいはい、入れば?」
「ちょ、シンラっ」
隣で寝ていたシンラは起き上がる。
二人ともまだ服を着ていないのにトウワさんを中に入れるなんて……。
「おや~? ……なんだよお二人さん、昨日はずいぶんお盛んだったんだなぁ」
キャアア?!
まさかそのまま寝室に?!
トウワさんに色々と見られてしまった。
「燈倭、いきなり寝室にくるなよ。今サノメを呼ぶから客間で待ってろ」
「はいはい、神羅様。ごちそうさん」
私とシンラは支度を済ませ、トウワさんが待つ客間まで足を運んだ。
◇ ◇ ◇
「はぁ、本当羨ましい」
「燈倭、まだ嫁が見つからないのか」
トウワさんはじっと私たちを見てくる。
私はというと、トウワさんにシンラと裸でベッドにいるところを見られた気まずさから、目を合わせることができずにいた。
「あぁそれもあるけど……」
「?」
なんだかトウワさんの視線をずっと感じるような……。
気のせいかしら。
「最近、志帆殿を見ていると、なんか巨乳じゃなくても俺は愛せそうだなと思えてくるんだ」
「はぃ?」
「ほぅ、つまり燈倭は、俺から嫁を横取りする気でいると……?」
シンラの声が急に低くなって強い威圧感を感じた。
すると、トウワさんは慌てて首を横に振る。
「おいおい、そんなつもりはねぇ! ただ、女は胸だけじゃねぇっていうか……俺も最近、色々と考え方を改めだしたんだ」
「はぁ……いきなり何を言い出すかと思えば……それはそうでしょ? 女には胸だけではなく、柔らかな尻や白い肢体、それが汗ばんで少し紅潮した肌はとても魅力的だし、特に女の蜜は口にせずにはいられないほど甘美……」
「ひゃあぁ、シ、シンラ! 本当やめてください!」
目の前に相手の私がいるんですよ!
そういうのは男性だけの時にお願いします。
(私との行為を話題にされるのはあまり嬉しくないですけれど)
そしてトウワさん、シンラの艶話に興味津々なのか、前のめりになって真剣に聞くのはやめてくださいね。
露骨に鼻息が荒くなっていて、ちょっと怖いですよ。
「俺だって嫁を迎えたのは、志帆が初めてなんだからね。燈倭は俺より早く生まれてるのに何百年も何やってんのさ」
シンラは二百歳でしたっけ。
百年前の時は嫁をもらわなかったのですね。
まぁその時にいたら、私がシンラに娶られることはなかったでしょうが。
「けどよ、昔は生贄制だったから一人しか生娘がこねぇ上、じじぃどもが優先されたし……」
「まぁ年寄り連中は力も弱くなってるのに、口だけは達者だからね」
年寄り……じじぃ……二人の口からたまに出てきますが、年配の神がけっこういるらしい。
何百年も生きているシンラやトウワさんが呼ぶお年寄りって一体いくつなのかしら。
(数千年は生きていそう)
「そういや爽翠のやつ、昨日嫁ができたみてぇだぞ」
「ほう……」
爽翠さん?
初めて聞く名前ですね。
狐神さんなのは間違いなさそうですが。
「なんでも、失恋で崖から飛び降りようとした所を爽翠が助けたんだとよ。その嬢ちゃん経験なかったんだな。そしたらそのまま娶っちまったらしい。さっき、ラブラブなところを見せつけられてきた……んで、お前らにも見せつけられて、今の俺の心はぐったり」
「別に見せつけてはいない。客間で待ってりゃいいのに、お前が勝手に寝室まで入ってきたんだろ? それにしても……ふむ、爽翠はずいぶんと巧くやったんだねぇ……」
神に娶られるって、人間の女性にとって予想外の災難みたいなイメージがあったけど、初めからこんな相思相愛パターンもあるようだ。
まぁ何百年前も遡って、生贄として選ばれた女性の場合は、ご本人も覚悟の上だったかもしれないけれど。
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