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説明会の続きだったが………
天使(見習い)の目線が宙を泳いだ。
「何かありました?」
ちらりとみゆきに視線が移る。
「今夜はここまでのようですね。そろそろ お客様がお見えですよ」
「え? そうだ、やってはいけないこととかないんですか?」
「はい?」
「これだけよくしてもらっ「まだお知らせしてないこともございますが」
(まだあるのかい?)
「ございます。しかし、キリがないので後はご自分でお試しいただくとして」
(教えてくれないのかい?!)
「武器は一応伝説級をアイテムボックスに入れておきました。服も見た目は旅人の服で、性能は伝説級という優れもの、まぁ、みゆきさんのステイタスでしたら、全て弾くか無効になるのですが、作ってみたかったので。当然、成功しましたがね」
(だから、それ、見れないんですけど、ステイタス、見られないって……)
心が読めるはずなのに、見事にスルーされている。
その上、なんとなくドヤ顔で……褒めるべきなのか?
「ぶ、武器も作れるんですか?」
「当然です」
「み、見習い天使さんって、すごいこと、たくさんできるんですね~。ホントに見習いなんですか?」
(でもでも武器作れるならM16……)
「みゆきさんの行動に制限はありません。お好きなことをお好きなように、なんでもなさってください」
(何事もなかったかのように、質問に答えてきたよ)
「………はぁ」
「あ、でもひとつだけやって欲しくないことはありますね」
(やるな、とは言わないのか……)
「ええ。ラスボス的存在は倒さないでいただけると助かります。一応知人なので」
「そんな、わさわざ行きませんよ~ って、すごいお友達がいらっしゃるんですね」
(そして何故、私が倒せる前提なのか……)
「知人ですが、助かります。では、また」
ひらひらと天使(見習い)が手を振ると同時にミユキは宿のベッドの上にいて、ドアを叩く音が部屋に響いていた。小声で名前を呼ばれたので、起きあがってドアを小さく開けると、立っていたのはオストレア家のナイスガイ執事ブランキアと白魔法使いのロンブスである。意外な組み合わせだった。
「夜分に御婦人のお部屋をお訪ねする無礼をお許しください」
「いえいえ、お気遣いなく。何かございましたか?」
大ありです、と2人の顔には書いてある。
「お願いです。訳は道すがらお話し致しますので、ついて来て頂けますか?」
「判りました」
ベッドを振り返ると、ふたばは熟睡していたので、小脇に抱えて部屋を出てドアを閉めた。
(キャリーバックを作らねばなぁ)
食堂からは明かりが漏れて、笑い声が聞こえていた。
階段から降りて来たミユキに気付くと、スクイラとモラが立ち上がったので慌てて制する。サルモーはもう寝たのかいなかった。
「少し出て来ますので、すみません」
「いえいえ! 明日の準備とかで起きていますので、ごゆっくりお出かけくださいませ! お気をつけて」
すっかり元気になったモラがニコニコしながら言ってくれた。スクイラは長くなった髪を後ろで束ねていてイケメンシェフっぽく、二人並ぶと美男美女夫婦であった。
お礼を言って宿を出ると……街中大騒ぎだ。この騒ぎになぜ部屋で気づかなかったのか、防音壁とは思えないが……街灯は爛々と輝き、隣の酒場からは歓声が響き渡り、道は人々で溢れかえっていた。
「お祭り前夜祭ですか? 勇者さま召喚の?」
心なしか冷たい目の二人から睨まれ、天使(見習い)の視線を思い出す。ロンブスが小声で説明した。
「ミユキ様のおまじない効果で、この辺一帯みんなブランキアさんと同じになったんですよ!」
「え」
「髪だけではなく、体調が悪かった者もみな治ったようで……」
「おぉ! それは良かったですね。そのお祝いでしたか……って、マズかったですか?」
別にまずくはないですけど、とロンブスは呟いたが、ブランキアも何かを言いたげである。実はマズイのかもしれない。
「街灯がこんなに明るいなんて、すごいですね」
街灯どころか、各家から漏れる灯りも煌々としている。
「……灯りはあかり石と呼ばれる魔石でとっているのですが、使い続けると力を失っていくのです」
「はぁ」
「それが、ミユキ様がおまじないをされた時に、なぜか魔石の力が満たされたようで……しかも力が増幅しているようなのです」
「………」(人間充電器ってとこか……)
「夜がこんなに明るいなど、生まれて初めてでございます」
眩ゆい街灯を見上げて、ブランキアが目を細めた。
ムダにイケメンな気がする。
「明るすぎて、苦情が出ないといいですけど……」
「ははは、出る訳ないですよ。ありがたいです」
「あれ、こちらは今日召喚があった……」
神殿前の公園のような、広場のような所まで来ていた。見上げると、神殿の先に城がそびえ立っている。
しかし………。
「なんか、暗いですね」
お城は、下辺は明るかったが、全体的に薄暗い。
「ミユキ様のおまじないが、あの辺りまでしか届かなかったようです」
(こんなとこまで届いてたのか……)
「あの、おまじないってされた後、お体がだるいとか、疲れるとかありませんか?」
「いえ、何も?」
「一日の回数制限とかは……」
「ありませんね~」
ブランキアとロンブスは顔を見合わせると、二人揃って頭を下げた。
「お願いします! もう一度、おまじないをして頂けませんか?」
「………あのぅ、それって私のためですよね?」
天使(見習い)の目線が宙を泳いだ。
「何かありました?」
ちらりとみゆきに視線が移る。
「今夜はここまでのようですね。そろそろ お客様がお見えですよ」
「え? そうだ、やってはいけないこととかないんですか?」
「はい?」
「これだけよくしてもらっ「まだお知らせしてないこともございますが」
(まだあるのかい?)
「ございます。しかし、キリがないので後はご自分でお試しいただくとして」
(教えてくれないのかい?!)
「武器は一応伝説級をアイテムボックスに入れておきました。服も見た目は旅人の服で、性能は伝説級という優れもの、まぁ、みゆきさんのステイタスでしたら、全て弾くか無効になるのですが、作ってみたかったので。当然、成功しましたがね」
(だから、それ、見れないんですけど、ステイタス、見られないって……)
心が読めるはずなのに、見事にスルーされている。
その上、なんとなくドヤ顔で……褒めるべきなのか?
「ぶ、武器も作れるんですか?」
「当然です」
「み、見習い天使さんって、すごいこと、たくさんできるんですね~。ホントに見習いなんですか?」
(でもでも武器作れるならM16……)
「みゆきさんの行動に制限はありません。お好きなことをお好きなように、なんでもなさってください」
(何事もなかったかのように、質問に答えてきたよ)
「………はぁ」
「あ、でもひとつだけやって欲しくないことはありますね」
(やるな、とは言わないのか……)
「ええ。ラスボス的存在は倒さないでいただけると助かります。一応知人なので」
「そんな、わさわざ行きませんよ~ って、すごいお友達がいらっしゃるんですね」
(そして何故、私が倒せる前提なのか……)
「知人ですが、助かります。では、また」
ひらひらと天使(見習い)が手を振ると同時にミユキは宿のベッドの上にいて、ドアを叩く音が部屋に響いていた。小声で名前を呼ばれたので、起きあがってドアを小さく開けると、立っていたのはオストレア家のナイスガイ執事ブランキアと白魔法使いのロンブスである。意外な組み合わせだった。
「夜分に御婦人のお部屋をお訪ねする無礼をお許しください」
「いえいえ、お気遣いなく。何かございましたか?」
大ありです、と2人の顔には書いてある。
「お願いです。訳は道すがらお話し致しますので、ついて来て頂けますか?」
「判りました」
ベッドを振り返ると、ふたばは熟睡していたので、小脇に抱えて部屋を出てドアを閉めた。
(キャリーバックを作らねばなぁ)
食堂からは明かりが漏れて、笑い声が聞こえていた。
階段から降りて来たミユキに気付くと、スクイラとモラが立ち上がったので慌てて制する。サルモーはもう寝たのかいなかった。
「少し出て来ますので、すみません」
「いえいえ! 明日の準備とかで起きていますので、ごゆっくりお出かけくださいませ! お気をつけて」
すっかり元気になったモラがニコニコしながら言ってくれた。スクイラは長くなった髪を後ろで束ねていてイケメンシェフっぽく、二人並ぶと美男美女夫婦であった。
お礼を言って宿を出ると……街中大騒ぎだ。この騒ぎになぜ部屋で気づかなかったのか、防音壁とは思えないが……街灯は爛々と輝き、隣の酒場からは歓声が響き渡り、道は人々で溢れかえっていた。
「お祭り前夜祭ですか? 勇者さま召喚の?」
心なしか冷たい目の二人から睨まれ、天使(見習い)の視線を思い出す。ロンブスが小声で説明した。
「ミユキ様のおまじない効果で、この辺一帯みんなブランキアさんと同じになったんですよ!」
「え」
「髪だけではなく、体調が悪かった者もみな治ったようで……」
「おぉ! それは良かったですね。そのお祝いでしたか……って、マズかったですか?」
別にまずくはないですけど、とロンブスは呟いたが、ブランキアも何かを言いたげである。実はマズイのかもしれない。
「街灯がこんなに明るいなんて、すごいですね」
街灯どころか、各家から漏れる灯りも煌々としている。
「……灯りはあかり石と呼ばれる魔石でとっているのですが、使い続けると力を失っていくのです」
「はぁ」
「それが、ミユキ様がおまじないをされた時に、なぜか魔石の力が満たされたようで……しかも力が増幅しているようなのです」
「………」(人間充電器ってとこか……)
「夜がこんなに明るいなど、生まれて初めてでございます」
眩ゆい街灯を見上げて、ブランキアが目を細めた。
ムダにイケメンな気がする。
「明るすぎて、苦情が出ないといいですけど……」
「ははは、出る訳ないですよ。ありがたいです」
「あれ、こちらは今日召喚があった……」
神殿前の公園のような、広場のような所まで来ていた。見上げると、神殿の先に城がそびえ立っている。
しかし………。
「なんか、暗いですね」
お城は、下辺は明るかったが、全体的に薄暗い。
「ミユキ様のおまじないが、あの辺りまでしか届かなかったようです」
(こんなとこまで届いてたのか……)
「あの、おまじないってされた後、お体がだるいとか、疲れるとかありませんか?」
「いえ、何も?」
「一日の回数制限とかは……」
「ありませんね~」
ブランキアとロンブスは顔を見合わせると、二人揃って頭を下げた。
「お願いします! もう一度、おまじないをして頂けませんか?」
「………あのぅ、それって私のためですよね?」
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