21 / 91
21
しおりを挟む
暑苦しくて目が覚めたら、ふたばが首に巻きつくように乗っかって爆睡している。こんなに呑気な犬だっただろうかと考える。……確かにこんな犬だった。目だけ動かし窓を見ると、外は薄く明るい。朝のようだ。
(アイテムボックスって、どうやって中身を出すんだろうか)
昨夜は部屋に戻ってバタンキューだったので何も試していなかった。
長い一日だった。
服もそのままだ。旅人の服がどうたらと見習い天使さんが言ってたなぁ。
寝転がったまま、ポケットに手を突っ込んでみる。
(バイオ○ザードみたいにボックスタイプじゃなくてよかったわ~。セーブ部屋行くのが大変だったもんなぁ。お?)
頭の中に石板のようなものが浮かび、これまた小さな文字でちまちまたくさん書いてある。
(検索もしくはカテゴリ分けとかできないのかな? 衣類とか……おぉっ!)
石板の文字が一旦消えて、一回り大きな文字が数行出てきた。
・衣類(自動洗浄機能付き)
・武器
・食料
・飲料
・調味料
・寝具
・衛生用品
・アウトドア用品
・ふたばさん(キャリーバッグ機能付き)
・雑貨
(………ツッコミどころ満載だよ……家計簿の仕分け項目みたいだわ)
とりあえず、衣類、と思うと衣類の文字がすっと光って他の文字が消えた。そして文字が浮かび上がる。
・旅人の服 上下(伝説級防具 ミユキ用)
・旅人のマント フード付き(同上)
・旅人のブーツ(同上)
・旅人のグローブ(同上)
・旅人の靴下 五本指「同上)
光学迷彩スーツ(空間歪曲型)製作中
しばらくお待ちください
・無敵の下着(各10枚)
(……いったい彼は何を目指しているのだろうか?
私に何をさせたいのか……。謎だ。
しかし、靴下が五本指というのは心の底から感謝です。ありがとうございます。見習い天使様)
首に乗ったふたばを抱えてベッドから降りると、床にふたばを置き、腕立て伏せを開始した。日々、鍛錬である。素晴らしい! 笑いが出るほど続けられる。
1000回やってから、膝を曲げて腹筋を開始した。こちらも無限に続けられそうだ。これを続けられるならば、腹の肉が無くなったのも遅かれ早かれ仕方のないことだったのかもしれない。
(これなら三○郎様並みのレスラーになれるかもしれない。三角絞めの特訓をしなければ)
ミユキの30年来バイブル的漫画であった、1、2の三○郎の得意技はブレ○バスターであって、三角絞めではなかったが……。
ストレッチまで終わらせると、もう一度、アイテムボックスを覗いてみる。
(ふたばさん(キャリーバッグ機能付き)ってなんだ?)
・いつものドッグフード
・新鮮な水
・ゴハン皿
・水用の皿
・ふかふかの寝床
・ササミ巻きジャーキー
・ヒズメ
・ブラシ
・トイレシート
・リード
ミユキはそっとアイテムボックスを閉じた。
手にはドッグフードが入った皿と水の皿がある。
出したい、思っただけで出せてしまった……。
しかも、この粒は確かにいつものやつであった。
(異世界感がまるでない! いいの!? これでいいのかい!?)
ふたばが期待に充ち満ちた表情でみてきたので、前に置くと一心不乱に食べだした。大好物なので、ありがたいのだが……。トイレシートを取り出して傍に敷いてみた。サイズもいつものワイドサイズである。フードを完食したふたばは水をひとしきり飲んで、シートの上で上手に用を足してみせた。ドヤ顔である。撫でまわして褒めてやると、ドアの前で見上げてきた。
「散歩か……」
呟くと、駆け寄ってきてシッポをふりふり二本足で立ち上がってアピールする。
使用後のトイレシートに、試してみたかった呪文を唱えてみた。
「トイレシートだけ分解~」
一応念のために指定してみた。
すると、床の上のシートは端から砂のようにサラサラと小さな粒状になった後、霧散した。
「げ、これ、ゴミ問題は解決するけど人に使っちゃダメなやつだよね?」
思わずふたばに話しかける。そう、犬がいると(猫でも)独り言が増えるのが難点なのだった。
旅人の装備を一式取り出してみると、まず、手触りに驚いた。布なのか、革なのかわからないが、とにかく滑らかである。
着ていた服を脱ぎ、ルルル~全身洗浄~~とか呟くと、ミユキとふたばがミストのような光に包まれてすっきり爽やか石鹸の香り付き、となった。
(これが洗浄魔法か! やってみてびっくりだわ。あの日本の、くそ暑い夏の日に使えてたら便利だったろうなぁ)
分厚めのアイボリーのTシャツを着て、同色のパンツを穿く。伸縮自在のようで動きやすい。上着はモスグリーンで、ざっくりとした生地だ。着物のような、格闘技の道着のような形だが、長さは膝まであり、羽織ってから胴の部分を革紐で帯のように巻いて留めるようだ。
(五本指履いて、ブーツを履いて、と)
ローブもどきのグレーのパーカー、ジーンズと、紺のTシャツを畳んで、靴下とスニーカーと床に並べる。
(しまった、パーカーのポケットに繋がってたんだっけ。今度はどこに繋がってるんだろう)
なんとなく、両手を衣類にかざして、仕舞っちゃえ~と念じると、パッと消えた。
どうやら、この世界で、できないことはないらしい……。
ミユキは遠い目をして、ため息を吐くと、ふたばを抱えて部屋を出たのだった。
(アイテムボックスって、どうやって中身を出すんだろうか)
昨夜は部屋に戻ってバタンキューだったので何も試していなかった。
長い一日だった。
服もそのままだ。旅人の服がどうたらと見習い天使さんが言ってたなぁ。
寝転がったまま、ポケットに手を突っ込んでみる。
(バイオ○ザードみたいにボックスタイプじゃなくてよかったわ~。セーブ部屋行くのが大変だったもんなぁ。お?)
頭の中に石板のようなものが浮かび、これまた小さな文字でちまちまたくさん書いてある。
(検索もしくはカテゴリ分けとかできないのかな? 衣類とか……おぉっ!)
石板の文字が一旦消えて、一回り大きな文字が数行出てきた。
・衣類(自動洗浄機能付き)
・武器
・食料
・飲料
・調味料
・寝具
・衛生用品
・アウトドア用品
・ふたばさん(キャリーバッグ機能付き)
・雑貨
(………ツッコミどころ満載だよ……家計簿の仕分け項目みたいだわ)
とりあえず、衣類、と思うと衣類の文字がすっと光って他の文字が消えた。そして文字が浮かび上がる。
・旅人の服 上下(伝説級防具 ミユキ用)
・旅人のマント フード付き(同上)
・旅人のブーツ(同上)
・旅人のグローブ(同上)
・旅人の靴下 五本指「同上)
光学迷彩スーツ(空間歪曲型)製作中
しばらくお待ちください
・無敵の下着(各10枚)
(……いったい彼は何を目指しているのだろうか?
私に何をさせたいのか……。謎だ。
しかし、靴下が五本指というのは心の底から感謝です。ありがとうございます。見習い天使様)
首に乗ったふたばを抱えてベッドから降りると、床にふたばを置き、腕立て伏せを開始した。日々、鍛錬である。素晴らしい! 笑いが出るほど続けられる。
1000回やってから、膝を曲げて腹筋を開始した。こちらも無限に続けられそうだ。これを続けられるならば、腹の肉が無くなったのも遅かれ早かれ仕方のないことだったのかもしれない。
(これなら三○郎様並みのレスラーになれるかもしれない。三角絞めの特訓をしなければ)
ミユキの30年来バイブル的漫画であった、1、2の三○郎の得意技はブレ○バスターであって、三角絞めではなかったが……。
ストレッチまで終わらせると、もう一度、アイテムボックスを覗いてみる。
(ふたばさん(キャリーバッグ機能付き)ってなんだ?)
・いつものドッグフード
・新鮮な水
・ゴハン皿
・水用の皿
・ふかふかの寝床
・ササミ巻きジャーキー
・ヒズメ
・ブラシ
・トイレシート
・リード
ミユキはそっとアイテムボックスを閉じた。
手にはドッグフードが入った皿と水の皿がある。
出したい、思っただけで出せてしまった……。
しかも、この粒は確かにいつものやつであった。
(異世界感がまるでない! いいの!? これでいいのかい!?)
ふたばが期待に充ち満ちた表情でみてきたので、前に置くと一心不乱に食べだした。大好物なので、ありがたいのだが……。トイレシートを取り出して傍に敷いてみた。サイズもいつものワイドサイズである。フードを完食したふたばは水をひとしきり飲んで、シートの上で上手に用を足してみせた。ドヤ顔である。撫でまわして褒めてやると、ドアの前で見上げてきた。
「散歩か……」
呟くと、駆け寄ってきてシッポをふりふり二本足で立ち上がってアピールする。
使用後のトイレシートに、試してみたかった呪文を唱えてみた。
「トイレシートだけ分解~」
一応念のために指定してみた。
すると、床の上のシートは端から砂のようにサラサラと小さな粒状になった後、霧散した。
「げ、これ、ゴミ問題は解決するけど人に使っちゃダメなやつだよね?」
思わずふたばに話しかける。そう、犬がいると(猫でも)独り言が増えるのが難点なのだった。
旅人の装備を一式取り出してみると、まず、手触りに驚いた。布なのか、革なのかわからないが、とにかく滑らかである。
着ていた服を脱ぎ、ルルル~全身洗浄~~とか呟くと、ミユキとふたばがミストのような光に包まれてすっきり爽やか石鹸の香り付き、となった。
(これが洗浄魔法か! やってみてびっくりだわ。あの日本の、くそ暑い夏の日に使えてたら便利だったろうなぁ)
分厚めのアイボリーのTシャツを着て、同色のパンツを穿く。伸縮自在のようで動きやすい。上着はモスグリーンで、ざっくりとした生地だ。着物のような、格闘技の道着のような形だが、長さは膝まであり、羽織ってから胴の部分を革紐で帯のように巻いて留めるようだ。
(五本指履いて、ブーツを履いて、と)
ローブもどきのグレーのパーカー、ジーンズと、紺のTシャツを畳んで、靴下とスニーカーと床に並べる。
(しまった、パーカーのポケットに繋がってたんだっけ。今度はどこに繋がってるんだろう)
なんとなく、両手を衣類にかざして、仕舞っちゃえ~と念じると、パッと消えた。
どうやら、この世界で、できないことはないらしい……。
ミユキは遠い目をして、ため息を吐くと、ふたばを抱えて部屋を出たのだった。
229
あなたにおすすめの小説
心が折れた日に神の声を聞く
木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。
どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。
何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。
絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。
没ネタ供養、第二弾の短編です。
転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!
明衣令央
ファンタジー
糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。
一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。
だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。
そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。
この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。
2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる