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「ごちそうさまでした」
「「「「「ごちそうさまでした」」」」」
少年たちはミユキに習って手を合わせた。朝食は小麦粉の粥であった。すいとんというか、団子汁というか……薄い塩味である。健康にいいのだろうか。
とりあえず、ミユキは袖の下から次々と小さな黒い蓋付の壺を5個出した。側からみると手品である。
「えー、皆さん。昨夜は本当にありがとう。これはそのお礼の品でございます。この壺には我が家の一子相伝のおまじないである【スズメのひょうたん】をかけていきますね~。中身が減らないおまじないです」
ひとつひとつ手に取って、ムニャムニャ呟くと、壺がほわりと輝いていく。
「はいどうぞ」
ひとりひとりに手渡すと、皆不思議そうに壺を見ている。
「中身はお塩です」
「えっ?」
金髪のアミアは紅いルビーのような瞳を見開いて、手の中の壺をじっと見つめる。
「お塩は体に必要なものです。特に暑い日に汗をかいたりした後はお水と共に適量取らなければいけません。お塩は取りすぎると体の毒になりますが、少なすぎてもよくないのです」
「な……中身が減らないって」
ミユキはへらりと笑った。
「何もしなければ減ってしまいますが、皆さんは魔法使いですよね?」
「?」
「はい……」
「夜、寝る前にこの呪文を唱えながらこの壺に魔力を貯めてください。寝る前ですので余っている力を全て注ぎ込むのです。はい! 真似してください」
ミユキはもうひとつ壺を出し、両手で包み込んだ。
「アラビン○ビンハ○チャビン さんはい!」
「「「「「アラビ○ドビンハ○チャビン」」」」」
勢いに負けて、少年たちはつい、真似をしてしまった。すると、手のひらからほんのり温かい力が溢れて壺に吸い込まれる。不思議な感覚に慌てて顔を上げると、ミユキがにやりと笑っている。
「呼ばれ○飛び出て○ャジャジャジャーン! さんはい!」
「「「「「呼ば○て飛び出て○ャジャジャジャーン」」」」」
壺の蓋が押し出されるような感じがして、手元を見ると、白い結晶がこんもり溢れていた。恐る恐る舐めるとしょっぱい。全員が静まり返ってしまったので、様子を見に来たトルボーが、息子の手にある物に驚いた。
「なんだこれは?」
「お塩でございます。すみませんが、トルボーさん、少々お待ちいただけますか?」
う、うむと言うトルボーを置いておいて、ミユキは説明を続ける。
「おそらく魔力は、ギリギリまで使ってから回復すると元の力が強くなっていくのではないかと思われます。私が元いたところでもサイ○人と言う人種はそうやって鍛えていたからです」
「へえ……そうなんだ……サ○イヤ人……?」
「最強民族です」
「でも、僕達は魔法を勝手に使ってはいけないのです」
青灰色の髪のグラディウスがしょんぼりとした。
「大丈夫です。これは生活魔法ですから。生活に必要なお塩を増やすだけですし、その壺はあなた方にしか使えないように専用のおまじないをしていますので、お互いに取り替えても補充できないようになっているはずです。そして、もし割れてしまっても、欠片をひとつとお塩をひとつまみ、一緒にテキトーな布に包んで、おまじないの【タイムふ○しき~~】と言って枕元に一晩置くと元に戻ります。間違えては戻りませんよ。【タイ○ふろしき~~】です」
「「「「「「………」」」」」
少年たち+その父は突っ込みたいことがてんこ盛りであったが、二の句が継げないのも事実だった。
「そこで、お願いなのですが、お塩は、毎晩壺から全部出してからひとつまみ残して補充して欲しいのです。そしてお好きに使ってから、できれば、余った分をスコンベル君のこの酒場と、サルモー君の食堂に分けてあげてください」
「えっ?」
「お塩は品不足だと伺いました。余計な事かもとは思いましたが、腐るものでもないし、少しずつでも、きっと溜まっていくでしょうから……貰って頂けませんか?」
「いやいや、うちの分は大丈夫だから! 俺とスコンベルでどんどん増やせばいいし! みんな、頑張っておうちに送ってあげなよ」
サルモーが慌てて言い出した。
「ミユキさん、ダメかな? みんな、遠くの村から学校の為に呼ばれて、寮に入ってるからうちのことが心配なんだ。お塩は海の近くに住んでいてもなかなか手に入らないし……。みんな、自分の村に送りたいと思うから……」
「……ためて送るって、無事に届く?」
そんなシステムがあるようには思えなかった。
「う……」
「お休みに持って帰ります! いっぱいためて……ありがとうございます」
紅い目をキラキラさせながらアミアが言うと、グラディウスとセービアも、うんうんと頷いている。
(う、ハ○ジの白パンみたいだなぁ……)
じん、ときたミユキはいいこと?を思いついた。
「みんな、その鞄は自分のもの? 学校の借り物かな?」
床に置いてある鞄はそれぞれ形が違うのでおそらく個人のものだろうと思ったが、念のために訊いてみた。
「これは…自分のものです。村から持ってきました」
「ちょっと雰囲気変わるかもだけど、弄っていい?」
顔を見合わせた3人は同時に頷いた。
「では、それぞれ持ってください。名前を呼んだら返事してね」
はい、といい返事にミユキはにたりと笑った。悪い顔である。徐ろに両手をかざしてぐるぐる回す。
「アブラ○ハリクマハ○タカブラ ~ それ、いきますよ~~」
3人は緊張気味だった。
「 グラディウス君!」
「はい!」
「アミア君!」
「はい!」
「セービア君!」
「はい!」
3人の鞄が光に包まれる。ミユキがぱん、と両手を合わせて叩くと光が鞄に吸い込まれた。
「おしまいです」
「「「?」」」
「鞄がキレイになってる!」
「新品みたいだ」
「えー、小さいけど、収納空間を付けてみました」
しん、と静まり返る。
「あ、ゴメンね。魔力を使わずに使えるようにしようとしたら、あんまり大きくできないらしくて……」
「収納空間………?」
「このお店くらいしか入らないかもだけど……これも個人限定でしか使えないようにしました~」
すっと立ち上がったアミアが隣にあった6人くらいが使えるテーブルの前で、鞄を開けると一瞬で消えた。
次々と酒場のテーブルを消して、ひとつずつ戻した後、無言で席に戻ると、力無く座った。
「………」
「お塩って意外と重いから、少しは楽になるかな?
あ、よかったらスコンベル君とサルモー君の鞄もつけようか? やっぱりみんなお揃いがいいよね~?」
二人は急いで鞄を取りに行き、残った三人と酒場の主人は呆然と椅子に座っていた……。
二人が戻ってくるまで、四人の頭の中では、ただグルグルと同じ言葉が繰り返されていたのだった。
((((おまじないって………ナンナンダ?))))
***********************
オバさん、次回あたりでギルドに出かける予定でございます(予定)
「「「「「ごちそうさまでした」」」」」
少年たちはミユキに習って手を合わせた。朝食は小麦粉の粥であった。すいとんというか、団子汁というか……薄い塩味である。健康にいいのだろうか。
とりあえず、ミユキは袖の下から次々と小さな黒い蓋付の壺を5個出した。側からみると手品である。
「えー、皆さん。昨夜は本当にありがとう。これはそのお礼の品でございます。この壺には我が家の一子相伝のおまじないである【スズメのひょうたん】をかけていきますね~。中身が減らないおまじないです」
ひとつひとつ手に取って、ムニャムニャ呟くと、壺がほわりと輝いていく。
「はいどうぞ」
ひとりひとりに手渡すと、皆不思議そうに壺を見ている。
「中身はお塩です」
「えっ?」
金髪のアミアは紅いルビーのような瞳を見開いて、手の中の壺をじっと見つめる。
「お塩は体に必要なものです。特に暑い日に汗をかいたりした後はお水と共に適量取らなければいけません。お塩は取りすぎると体の毒になりますが、少なすぎてもよくないのです」
「な……中身が減らないって」
ミユキはへらりと笑った。
「何もしなければ減ってしまいますが、皆さんは魔法使いですよね?」
「?」
「はい……」
「夜、寝る前にこの呪文を唱えながらこの壺に魔力を貯めてください。寝る前ですので余っている力を全て注ぎ込むのです。はい! 真似してください」
ミユキはもうひとつ壺を出し、両手で包み込んだ。
「アラビン○ビンハ○チャビン さんはい!」
「「「「「アラビ○ドビンハ○チャビン」」」」」
勢いに負けて、少年たちはつい、真似をしてしまった。すると、手のひらからほんのり温かい力が溢れて壺に吸い込まれる。不思議な感覚に慌てて顔を上げると、ミユキがにやりと笑っている。
「呼ばれ○飛び出て○ャジャジャジャーン! さんはい!」
「「「「「呼ば○て飛び出て○ャジャジャジャーン」」」」」
壺の蓋が押し出されるような感じがして、手元を見ると、白い結晶がこんもり溢れていた。恐る恐る舐めるとしょっぱい。全員が静まり返ってしまったので、様子を見に来たトルボーが、息子の手にある物に驚いた。
「なんだこれは?」
「お塩でございます。すみませんが、トルボーさん、少々お待ちいただけますか?」
う、うむと言うトルボーを置いておいて、ミユキは説明を続ける。
「おそらく魔力は、ギリギリまで使ってから回復すると元の力が強くなっていくのではないかと思われます。私が元いたところでもサイ○人と言う人種はそうやって鍛えていたからです」
「へえ……そうなんだ……サ○イヤ人……?」
「最強民族です」
「でも、僕達は魔法を勝手に使ってはいけないのです」
青灰色の髪のグラディウスがしょんぼりとした。
「大丈夫です。これは生活魔法ですから。生活に必要なお塩を増やすだけですし、その壺はあなた方にしか使えないように専用のおまじないをしていますので、お互いに取り替えても補充できないようになっているはずです。そして、もし割れてしまっても、欠片をひとつとお塩をひとつまみ、一緒にテキトーな布に包んで、おまじないの【タイムふ○しき~~】と言って枕元に一晩置くと元に戻ります。間違えては戻りませんよ。【タイ○ふろしき~~】です」
「「「「「「………」」」」」
少年たち+その父は突っ込みたいことがてんこ盛りであったが、二の句が継げないのも事実だった。
「そこで、お願いなのですが、お塩は、毎晩壺から全部出してからひとつまみ残して補充して欲しいのです。そしてお好きに使ってから、できれば、余った分をスコンベル君のこの酒場と、サルモー君の食堂に分けてあげてください」
「えっ?」
「お塩は品不足だと伺いました。余計な事かもとは思いましたが、腐るものでもないし、少しずつでも、きっと溜まっていくでしょうから……貰って頂けませんか?」
「いやいや、うちの分は大丈夫だから! 俺とスコンベルでどんどん増やせばいいし! みんな、頑張っておうちに送ってあげなよ」
サルモーが慌てて言い出した。
「ミユキさん、ダメかな? みんな、遠くの村から学校の為に呼ばれて、寮に入ってるからうちのことが心配なんだ。お塩は海の近くに住んでいてもなかなか手に入らないし……。みんな、自分の村に送りたいと思うから……」
「……ためて送るって、無事に届く?」
そんなシステムがあるようには思えなかった。
「う……」
「お休みに持って帰ります! いっぱいためて……ありがとうございます」
紅い目をキラキラさせながらアミアが言うと、グラディウスとセービアも、うんうんと頷いている。
(う、ハ○ジの白パンみたいだなぁ……)
じん、ときたミユキはいいこと?を思いついた。
「みんな、その鞄は自分のもの? 学校の借り物かな?」
床に置いてある鞄はそれぞれ形が違うのでおそらく個人のものだろうと思ったが、念のために訊いてみた。
「これは…自分のものです。村から持ってきました」
「ちょっと雰囲気変わるかもだけど、弄っていい?」
顔を見合わせた3人は同時に頷いた。
「では、それぞれ持ってください。名前を呼んだら返事してね」
はい、といい返事にミユキはにたりと笑った。悪い顔である。徐ろに両手をかざしてぐるぐる回す。
「アブラ○ハリクマハ○タカブラ ~ それ、いきますよ~~」
3人は緊張気味だった。
「 グラディウス君!」
「はい!」
「アミア君!」
「はい!」
「セービア君!」
「はい!」
3人の鞄が光に包まれる。ミユキがぱん、と両手を合わせて叩くと光が鞄に吸い込まれた。
「おしまいです」
「「「?」」」
「鞄がキレイになってる!」
「新品みたいだ」
「えー、小さいけど、収納空間を付けてみました」
しん、と静まり返る。
「あ、ゴメンね。魔力を使わずに使えるようにしようとしたら、あんまり大きくできないらしくて……」
「収納空間………?」
「このお店くらいしか入らないかもだけど……これも個人限定でしか使えないようにしました~」
すっと立ち上がったアミアが隣にあった6人くらいが使えるテーブルの前で、鞄を開けると一瞬で消えた。
次々と酒場のテーブルを消して、ひとつずつ戻した後、無言で席に戻ると、力無く座った。
「………」
「お塩って意外と重いから、少しは楽になるかな?
あ、よかったらスコンベル君とサルモー君の鞄もつけようか? やっぱりみんなお揃いがいいよね~?」
二人は急いで鞄を取りに行き、残った三人と酒場の主人は呆然と椅子に座っていた……。
二人が戻ってくるまで、四人の頭の中では、ただグルグルと同じ言葉が繰り返されていたのだった。
((((おまじないって………ナンナンダ?))))
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