やばい彼氏にご注意を

SIVA

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7. 最終話 最低で最高の言葉

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「なぁ……」
無意識に有栖川の服の裾を握って足を止めていた。
手元に視線を落としたまま有栖川は何も言わない。
暫くして、俺が何て言おうとしているのかわかっているのか、手を見つめたまま頭を撫でてきた。
無言でまた“ごめん”と言われているような気がして、聞きたい事が言えなくなってしまった。

***

有栖川の家に、俺、有栖川と知り合いのような女性、家主である有栖川がリビングのテーブルで向かい合っている。
時間のずれた時計の針の音だけが響き渡る妙な空気。
「……」
「……」
「……」
俺は向かいに座っている女性を見つめた。
女性はまっすぐに有栖川の目を見ている。
有栖川は平然とした顔でお茶を──「ってお前何でそんな呑気なんだよ!なんだよ、この状況」有栖川の余裕な表情と態度に思わずいつもの突っ込みを入れてしまい、我に返って女性を見た。
女性は少し驚いた顔をして俺の方を見ている。
互いに視線が合いハッとなっていると、隣で高笑いをする有栖川が「相変わらずナイスな突っ込みだね。倫太郎」
小さくブイサインをしながらこちらを見てきた。
「恭平さん。この家はとっくに引き払ったと聞きましたけどどうしてまだあるのかしら?」
早速話をぶっこんで来たのは女性だった。
「まぁそんなに焦らないでよ、義母さんかあさん
「かあさん??」
俺に言われ露骨に嫌な顔をしながら、フンッと鼻を鳴らすと「ホント騒がしい子供ね」と突然低い声で言われドキッとした。
「おやおや、早速本性が見えちゃって」
「あなたが焦らすから悪いのよ」そう言いながら自分のバッグをあさり始めた。
有栖川はすぐに自分の煙草を差し出し、ライターの火を向けた。
手慣れた感じ。
女性は紫煙をたっぷりと肺に送りこむと顔を上に向け盛大に吐きだした。
それを何度か繰り返した後「昔から変わってないのね」手に持っている煙草を掲げながらぼやいた。
「煙草なんて早々変えないでしょ」
「あら、あたしはいろんなものを試すけど?」
「そうやって、男もコロコロと変えてるんですか」
「まぁ、似た所はあるかもしれないわね。恭平さんはまだあの子のことを?って、そう言えば、その子──」そこまで言うと、言葉を急に詰まらせた女性は今にも落ちそうな灰をようやく灰皿に落とした。
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