Rainy Cat

mito

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Past#7 日常-daily-

Past#7 日常-daily- 2

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自覚なかったのかよ、信じらんねーと、ありあり目で語る岡やんの横に、今日は珍しくマサが居ないことに気が付づく。

「あれ、マサは?」

「マサ? あぁ、マサなら今日は家の用事で早く帰ったけど……つーか、それにも気づいてないとか、やばいぞ」

完全に墓穴を掘ったと分かる呆れ具合に、もう笑うしかなくて、そそくさと席を立ちあがり、先に歩き始める。

嫌味な岡やんはまだ何か言っていたけれど、そこは聞こえない振りで。


「なぁ、コタロ」

……岡やんも、めげずに話かけてくるけど。

「……」

「おい、コタロ、おま」

「……」

「お前シカトかよって、……前!!」
「え、はい!?」



言葉を重ねてさえぎってやろうって、振り返った矢先。何かがぶつかってきた衝撃で崩れた体制を直そうとして、体重をかける足を間違えた。


「ッつ!!」

「コタロ!!」


目の前は、階段。
見える景色が斜めに、スローで流れていく。落ちていく。それを認識したその時、視界を黒い、長い髪が横切ったのを見た。




そして、自分の下敷きになるように落ちていく、小さな体を。





「大丈夫かよコタロ!?」


「……はは、なんとか」


血相を変えた声が近づく。ざわめきが聞こえる。岡やんの声は大きいから、周囲が一斉に振り返って、こっちを見てるんだろうと思う。


勢い余って階段の壁に打ち付けた頭が、多少痛みを訴えるもの、それよりも無理に踏ん張った右足が絶叫して、声がかすれる。

ごまかすために苦笑して、手すりを握った右手を解いて、それから頭をかく。


なんでもないよって、いうために。




「大丈夫? チハっちゃん」




息を整えたところで小さく声をかけた。

……咄嗟に左腕に抱き留めたチハっちゃんは、見開いたままの目を僕に向けて、それからゆっくり小さく頷いた。


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