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襲撃者
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グリゴールの愛馬は水を飲み終え草を食んでいたが、突如として首を上げ、後方の木が数本茂っている辺りを見た。
その様子を見て、グリゴールが咄嗟にそちらに向き直り、ランシェットを背後に隠した。
その刹那、グリゴールの左頬を矢が掠めて行く。
「!!」
「俺の背後から出るなよ」
そう言うと、視線を逸らさず腰に帯びていた剣を抜く。
シャリンという音が鼓膜に響いた瞬間、木陰から再び矢が発せられ、それとほぼ同時に黒い人影が木陰から走り出てきた。
その手には、光る物が握られていた。
その人物は川を背にしたグリゴールとランシェットに向かって、一直線に疾走してくる。
体の前面に横向けに構えたその刃は湾曲しており、ヴォルデで使われるものとは違っていた。
それはガズールを中心とする砂漠地帯の国で広く使われているものだ。
王妃の手の者だろうか。
グリゴールも数歩前に踏み出し、刃を交える構えを取る。
襲撃相手は矢を放った相手がこの人物の他にいるとしても襲撃の頻度からして全員で二人ほどだろう。
単独の可能性も高いので、グリゴールの腕を信用しあまり離れないことが得策だろう。
肩越しに見える襲撃者は身を低くし、グリゴール目掛けて横薙ぎに刀を一閃した。
その力を受け流すように刃が当たった瞬間斜めに剣を振り下ろす。
耳障りな金属音が響き、襲撃者は一撃の重心を逸らされると、すぐさま身を起こし次の一撃を放ってきた。
グリゴールは振り下ろした剣を前面に構え、その一撃を難なく受け止めると落ち着いた動作で横に振り払った。
「本気で来る気はねえってか?どういうつもりだ?」
「…」
襲撃者は黙ったまま同じような攻撃を浴びせかけてくる。
速さだけなら大したものだが、重さはない。
グリゴールが反撃すると、後ろに半歩下がるようにして受け流し、すぐさま次の攻撃を仕掛けてくる。
馴れ合いのような攻防がしばらくの間続いていたが、一瞬の隙を突いて襲撃者が踏み込みざまにグリゴールの背後のランシェットに刃を向ける。
「クソっ!」
右側でまとめていた髪が一筋、刃に切り裂かれて宙に舞う。
ランシェットは恐怖で動けず、眼前でその刃がグリゴールの剣で弾かれるのを身動ぎもできず青ざめた表情で見ていた。
弾かれた刃は、回転し襲撃者の後方の草むらに突き刺さった。
グリゴールが追撃しようとした直後、どこからか短い口笛が聞こえた。
それを聞くや否や、襲撃者は自身の獲物を回収し、先程の木陰の方向へと走り去っていく。
やはり仲間がおり、どこからか様子を見ていたようだ。
グリゴールは危険が去ったと判断し、後ろで固まっているランシェットに向き直った。
血の気が引いた顔は、ビスクドールのように美しかったが生気が感じられなかった。
「大丈夫か!?」
「…あ…ああ…」
幸いにも髪の毛が一筋切り落とされた以外は全く無傷で、あの攻撃の様子からしても襲撃者は最初から命を奪うつもりはなかったのだろう。
王都へ近寄るなという警告なのだろうか?
少しして怯えて逃げていた馬が戻ってきたのを確認すると、グリゴールはこのまま進めるか?と聞いてきた。
「グリゴール、これは王命だろう?それしか選択肢はない」
先程まで恐怖で動けずにいたのに、ランシェットの意思は硬かった。
「…ただ、あまりにも久々に怖い思いをしたら何か胃にもっと詰めたくなった」
「は?」
いきなり予想外の言葉が返ってきて、間の抜けた声が出てしまう。
「この先の村で朝食を摂ろう。
腹いっぱいな」
そう言うとランシェットはまとめていた髪を解き始めた。
その様子を見て、グリゴールが咄嗟にそちらに向き直り、ランシェットを背後に隠した。
その刹那、グリゴールの左頬を矢が掠めて行く。
「!!」
「俺の背後から出るなよ」
そう言うと、視線を逸らさず腰に帯びていた剣を抜く。
シャリンという音が鼓膜に響いた瞬間、木陰から再び矢が発せられ、それとほぼ同時に黒い人影が木陰から走り出てきた。
その手には、光る物が握られていた。
その人物は川を背にしたグリゴールとランシェットに向かって、一直線に疾走してくる。
体の前面に横向けに構えたその刃は湾曲しており、ヴォルデで使われるものとは違っていた。
それはガズールを中心とする砂漠地帯の国で広く使われているものだ。
王妃の手の者だろうか。
グリゴールも数歩前に踏み出し、刃を交える構えを取る。
襲撃相手は矢を放った相手がこの人物の他にいるとしても襲撃の頻度からして全員で二人ほどだろう。
単独の可能性も高いので、グリゴールの腕を信用しあまり離れないことが得策だろう。
肩越しに見える襲撃者は身を低くし、グリゴール目掛けて横薙ぎに刀を一閃した。
その力を受け流すように刃が当たった瞬間斜めに剣を振り下ろす。
耳障りな金属音が響き、襲撃者は一撃の重心を逸らされると、すぐさま身を起こし次の一撃を放ってきた。
グリゴールは振り下ろした剣を前面に構え、その一撃を難なく受け止めると落ち着いた動作で横に振り払った。
「本気で来る気はねえってか?どういうつもりだ?」
「…」
襲撃者は黙ったまま同じような攻撃を浴びせかけてくる。
速さだけなら大したものだが、重さはない。
グリゴールが反撃すると、後ろに半歩下がるようにして受け流し、すぐさま次の攻撃を仕掛けてくる。
馴れ合いのような攻防がしばらくの間続いていたが、一瞬の隙を突いて襲撃者が踏み込みざまにグリゴールの背後のランシェットに刃を向ける。
「クソっ!」
右側でまとめていた髪が一筋、刃に切り裂かれて宙に舞う。
ランシェットは恐怖で動けず、眼前でその刃がグリゴールの剣で弾かれるのを身動ぎもできず青ざめた表情で見ていた。
弾かれた刃は、回転し襲撃者の後方の草むらに突き刺さった。
グリゴールが追撃しようとした直後、どこからか短い口笛が聞こえた。
それを聞くや否や、襲撃者は自身の獲物を回収し、先程の木陰の方向へと走り去っていく。
やはり仲間がおり、どこからか様子を見ていたようだ。
グリゴールは危険が去ったと判断し、後ろで固まっているランシェットに向き直った。
血の気が引いた顔は、ビスクドールのように美しかったが生気が感じられなかった。
「大丈夫か!?」
「…あ…ああ…」
幸いにも髪の毛が一筋切り落とされた以外は全く無傷で、あの攻撃の様子からしても襲撃者は最初から命を奪うつもりはなかったのだろう。
王都へ近寄るなという警告なのだろうか?
少しして怯えて逃げていた馬が戻ってきたのを確認すると、グリゴールはこのまま進めるか?と聞いてきた。
「グリゴール、これは王命だろう?それしか選択肢はない」
先程まで恐怖で動けずにいたのに、ランシェットの意思は硬かった。
「…ただ、あまりにも久々に怖い思いをしたら何か胃にもっと詰めたくなった」
「は?」
いきなり予想外の言葉が返ってきて、間の抜けた声が出てしまう。
「この先の村で朝食を摂ろう。
腹いっぱいな」
そう言うとランシェットはまとめていた髪を解き始めた。
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