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黒歴史 その7

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私が、積極的に、勝手に、口々に自分の意見を述べる人達をそのまま一軍認定していったのは、そうやって仮にも自分が考えていることを口にできるタイプの人達は迂闊に敵に回すと余計な手間を取らされるからです。

まあ、逆らったとしても大したことはありませんが、いちいち相手をするのも時間の無駄です。それよりもこちらに取り込んた上で掌の上で転がす方が役にも立ちますし、いざとなったら使い捨ての道具としての使い道もあるでしょう。

こうしてクラスの半数近くの生徒が一軍入りを果たしました。できれば一軍だけで過半数を確保したかったのですが、まあいいでしょう。

一軍入りした生徒のように積極的には発言しないものの、場を空気を読み流れに合わせるタイプの生徒は二軍ですので、おそらく逆らったりはしない筈ですし。

そして、場の空気を読まず、発言もしない、足手まといになるタイプの生徒が、三軍ということですね。このクラスでは、昨日、放課後の教室に残っていた例の三人の女子生徒と、後はいるのかいないのかよく分からない男子生徒が二人。この五人が三軍ということになります。

すると、例の女子生徒のうちの二人が、何か不満ありげに私を睨み付けていました。

「あら? 意見があればおっしゃってくださいと言った時には何も言わなかったのに、三軍の方が何か不満でもあるんですか?」

私がそう一瞥をくれて差し上げると、それに倣い、一軍の生徒と、二軍の生徒までがその女子生徒を見ました。明らかな非難を込めた視線で。

いいです。いいですね! 本当に狙い通りです。

こうしておけば、一軍、二軍の生徒の中で何か不平不満が生じても、三軍の生徒にそれを向けることで勝手に発散してくれるでしょう。

人間は、いえ、人間以外の動物でも多くがそうですが、弱い方へ弱い方へとストレスを転嫁する習性があるそうです。強い相手に向けられない負の感情を、弱い相手、立場の低い相手にぶつけることでストレス解消をする。

実に愚かしい習性です。まさに、強い相手に尻尾を振る為に備えられた習性そのものと言えるでしょう。

そう。人間も所詮は強い者には従うという習性が本能的に組み込まれているのです。

弱者は強者に従い管理されることでようやくその存在意義を持つということが、遺伝子レベルで決められているのです。

弱者の権利?

そんなものがあるとするなら、それは、<強者に従う権利>というだけのことでしょう。

だから私は言ったのです。

「田上さん、昨日も言いましたけど、リボン、Aタイプを着けていいのは一軍だけです。次の制服販売の日までは猶予しますが、来週からはちゃんとBタイプのリボンにしてきてくださいね」

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