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大希

納得なんて

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その後も競技は順調に進み、次にヒロ坊くん達が出場する綱引きの順番が近付いていました。

なので、ヒロ坊くん、千早、沙奈子さんも他の子達と一緒に移動します。

それを見届けたフミが。

「あの館雀かんざくって子のせいで一時はどうなるかと思ったけど、運動会は無事にできて良かった。下手したらここにまで怒鳴り込んできそうな勢いだったし」

とホッとしたように言いました。するとイチコが応えます。

「大丈夫だよ。その時は私が出てったら済むことだし」

まったく平然と、まるで当たり前のようにそう言ったイチコに、フミはハッとなりました。そして、

「そんなのおかしいよ。あんな子のせいでイチコがヒロ坊や千早ちゃんのことが見られないとか絶対におかしい…!」

と、声は決して大きくないものの、とても強い想いが込められているのが分かる口調で、イチコに言葉を投げかけます。なのにイチコの方は、まるで揺らぎません。

「別にいいよ。ヒロ坊や千早ちゃんのことはいつだって見られるし。運動会だってピカがちゃんと写真撮ってくれてるし。でも館雀さんにとってはその時でないとダメなことなんだろうからさ。話を聞くくらいはしてもいいと思うんだ」

いつも通りの飄々とした様子で、微笑みながら言うのです。瞬間、フミの体に、ぎゅうっと絞られるように力が入るのが分かりました。

「イチコ……イチコってばどこまでお人好しなんだよ…! おかしいよ…!」

イチコを案じるフミの想いが凝縮された言葉でした。それでもイチコは笑顔を崩しません。

「え~? そうかなあ。でもそのおかげで私、フミやカナやピカと友達になれたんだと思うけど?」

と返すだけです。けれどそれは、フミの体に込められた力をフッと溶かします。

「…! それは…、そうかもだけど……」

その通りでした。イチコがこのイチコだったからこそ、フミもカナも私も、友達になれたのですから。

イチコは続けます。

「フミの言いたいことも分かるよ。私も館雀さんのやってることは変だと思う。でもさ、あの余裕のなさって見てて痛々しくなってくるんだよね。私には縁の無いものだから。

私にはお父さんやフミたちがいるけど、彼女にはそういう人がいないんじゃないかな。だから誰かに自分の気持ちをぶつけたいんだよ」

「だからってそれをイチコがやる必要ないでしょ!?」

「なんで? やっちゃダメって理由もないと思うけど?」

「…でも……でも私には納得できない…! あんな酷い言い方……」

「フミ。納得なんてする必要ないよ。それはフミの気持ちだからさ。だけど私にも私の気持ちがあるんだ。それは分かってほしいかな」

「……イチコぉ…」

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