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大希

あの人らでも

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『サブアカウントと思しきものも含め、ネット上の彼の投稿等を自動で収集して動向を監視するシステムを構築していますから』

私が玲那さんに答える形でそう口にすると、彼女は、

「って、逆に怖いよ、ピカ。そんなの完全にスパイの世界じゃん!?」

と、驚いた様子で。さらに山下さんも呆気に取られた表情で私を見ます。そんなお二人に私は、

「本人が一般公開している情報ですので、問題ありません。嫌ならば公開しなければいいんです」

淡々と答えさせていただきました。

そうです。いまやインターネットの情報は、秒速で世界中に広まることさえ誰もが知っているはずなのです。それがどういうことか理解している方としていない方がいらっしゃるだけです。

すると玲那さんが、

「ピカ~、まさか私達のことも監視とかしてないよね~?」

ニヤリと笑みを作りながら覗き込むようにして訊いてきます。その芝居がかった様子に、本気で心配しているわけでないのは私にも分かりました。なので、

「ええ、もちろんです。信頼していますから」

素直に正直に答えさせていただきました。これは本心ですし、監視などしていないのも事実です。

ただ、気になることがあったときには調べさせていただくことも事実ですが。



「フミお姉ちゃん、大丈夫なのかな」

出来上がった昼食をみなでいただいている時、千早が不意にそう口にしました。最近では『フミ姉』と呼ぶことも多い千早が『フミお姉ちゃん』と言うのは、彼女なりに真面目な話をしようとしているからだというのが分かります。

なので私も、

「大丈夫ですよ。千早がそんな風に案じてくれてることでフミも救われるんです」

と丁寧に応えさせていただきました。

けれど彼女はさらに、

「だったらいいんだけどさ……

うち、最近はお母さんもお姉ちゃんも怒鳴ったり叩いたりしてこなくなったんだよ。あの人らでもそうなれるのに、どうしてフミお姉ちゃんの家はダメなの?」

やや顔を伏せながら、少し悲しそうにそう言うのです。

彼女の素直な印象だと感じました。確かに、千早の家庭の問題も決して容易なものではありませんでした。事実、今でも決して<解決>したわけではありません。ただ安定しているだけなのです。問題を内包したままで。

人が変わるのは、決して容易ではありません。ましては本人がそれを望んでいなければ。千早が変われたのはあくまで彼女自身がそれを望んだからです。しかし、彼女の母親やお姉さん方は、必ずしもそれを望んでいない。暴力が収まったのは、単に、関係性が変わったことで、その必要がなくなっただけに過ぎないのでしょう。

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