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大希

<偉い人>と<偉そうな人>

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『あの人らでもそうなれるのに、どうしてフミお姉ちゃんの家はダメなの?』

千早のその問い掛けに、私はあくまで冷静に、論理的に答えます。

「そうですね。私もそう思います。ですが、千早の家の事例はむしろ例外的なほど上手くいったと言えるでしょうか。あそこまで上手くいくのは珍しいんです。それほど、家庭の問題というのは難しいんですよ」

と。すると彼女は、悲しげに、

「ピカお姉ちゃんでもできないことがあるんだね…」

『ピカお姉ちゃん』

私のことをそう呼んだ千早に、胸が締め付けられます。彼女の無念さがそこに表れているのを感じてしまったからです。その上で、

「はい。私は決して万能でも全能でもありません。自分が実現したいと思ったことについてただ努力をしているだけです。

人にはできることとできないことがあるのは紛れもない事実でしょう。努力が報われないことも当たり前にあります。ですが、私は努力することを諦めたくはないのです。同じ諦めるにしても、やることをやった上で、『自分にはできない』と確認した上で諦めたいのです」

とも告げさせていただきました。私はあくまでただの人間でしかありません。そのことを忘れないでほしいのです。

その時、

「そこで『努力すれば何でも叶う』って言わないのがピカちゃんの偉いところだって思う」

ヒロ坊くんでした。ヒロ坊くんが微笑みながら私に語りかけてくれていたのでした。さらに、

「ピカちゃんはすごい人だけど、ちゃんと、できないこともあるって分かってるから偉そうにしないんだ。だから僕は逆に、ピカちゃんだったら世界中の人を救うこともできそうだって思うんだ。できないことを押し付けて結局メチャクチャにしちゃうってことをしないって思うから」

とも……

しゃべることがあまり得意でなく、いつもは短く簡潔に言葉を口にするだけのことが多い彼がそれだけのことを口にするのは、本気でそう思ってらっしゃるからだというのが、私にも分かります。

『ああ…大希……』

口には出せませんでしたが、胸の中で彼の名前を呼ぶと、熱いものがこみ上げてくるような気さえします。そこに、

「確かにね~。ヒロの前じゃポンコツになるのをやめられないんだもん。なるほど万能でも全能でもないって分かるわ~」

と、千早が。

瞬間、私はカアッと顔が熱くなるのを感じました。ただ同時に、悲しそうな顔をしていた千早が軽口を言ってくれたことにホッとするのも感じたのです。

加えて、今度は玲那さんが、

「そうだね。ピカはすごい力を持ってるけど、だからって自分は何でもできるって思ってしまわないようにしてるのがまたすごいんだ。

世の中には<偉い人>と<偉そうな人>っていうのがいると思うけど、ピカは<偉い人>になれるタイプかなって感じる」

と言ってくださったのでした。

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