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ハーレム

知識(やはり先人の知恵は助かる)

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エレクシアに続いてセシリアCQ202にも難なく攻撃を防がれてしまった鳥少女は、ローバーの上に戻ってしゃがみ込んでしまった。ドローンカメラに映し出されたその様子がどこかふてくされてるようにも見えて何だか可愛くさえ思えてしまう。俺達の群れに加わった訳ではないが、さりとてもう無関係でもない。すっかりローバーの屋根を自分の巣のようにして居着いてしまったからな。

しばらくするといつの間にか別の獲物を取ってきたらしく、ネズミのような小動物をバリバリと貪り食う姿がカメラに映し出されていた。

別のドローンのカメラには、コーネリアス号の中を歩くセシリアCQ202の姿も捉えられている。どうやらIDタグを手にしてこちらに戻るところのようだ。

そこに、エレクシアが食料を確保して戻ってきた。ネズミのような小動物と魚と野苺のような果実を手にしていた。

「食べられるかどうかは分かりませんが、彩りとして採取してきました。持ち帰って分析機にかけてみたいと思います」

俺の宇宙船がある密林で採取できる果実についてはあらかた分析済みだが、この辺りのものはまだだからな。見た目は美味そうでも有害ということは有り得る。毒とまではいかなくても、俺達人間が持つ酵素では分解できない成分などがあったりして消化不良を起こす可能性も考慮しなけりゃいけない。

とその時、セシリアCQ202が戻ってきてエレクシアが手にしている果実を見て声を上げた。

「いけません!、その果実には人体には有害な成分が含まれています。食用にはなりません。この惑星の生物の多くには無害なようですが、人間が食すと下痢や嘔吐の症状が出ます」

おおう。それはマズいな。

聞けば、探査船の乗組員の一人が発見し、分析機にもかけずにこっそり食べてしまったらしい。しかも、味は本当に野苺によく似ていて美味かったそうでその場にあったのを平らげてしまったらしいが、その後、三日三晩、下痢と嘔吐に苦しめられたそうだ。

……それって食いすぎでは?。とも思ったが、後で改めて分析した結果、俺が心配してた通りに人間には消化できない成分が多く含まれていて、一つ二つ食べたくらいならそれほどのことはないようだが、一定量以上食べると覿面に影響が出るという。件の成分は、俺達が既に分析した植物の一部にも含まれていて、どうやらここの土壌の影響だと推測されていた。種類によっては当該成分を多く蓄積してしまうようだ。

それを隠れて食べたという乗組員も、本来ならそんなことはしない筈だが、遭難によるストレスからか心神耗弱状態にあって、判断力が失われていたらしい。

探査隊のメンバーに選ばれるくらいだからメンタル面でも決してヤワではなかっただろうに、そういう人間でも、終わる当てもないサバイバル生活には耐えられない場合もあるということなんだろうな。

しかし、ここでのサバイバル生活の大先輩であるセシリアCQ202のおかげで俺は難を逃れたということだ。

「ありがとう、セシリアCQ202」

礼を言うと、彼女も「いえ、お役に立てて光栄です」と深く頭を下げた。

その後、セシリアCQ202が周辺の食べられる植物と食べられない植物を教えてくれて、エレクシアと一緒に調理してくれて、結果としてはむしろ豪勢な昼食となった。生では食べられないが加熱すれば旨味が出るもの、部位によっては有毒だが食べられる部分は美味なもの等々、実際に生活していた者達の知恵がそこに活かされていた。

もちろんエレクシアもその程度のことはできるが、やはり数十年の間、ここで人間達の世話をしてきたセシリアCQ202の方が一日の長がある。エレクシアも彼女の持つ情報を取り入れて、自らをアップデートしていった。この辺りはロボットであるが故の利点だな。人間のように時間をかけて習得しなくても、データを取得するだけで済むんだから。

ただ、やはり二千年以上の時間の隔たりは、性能の差以上にシステムの互換性のなさという点で大きな壁にもなった。OSが殆ど互換性の無いものだったのだ。

古いOSを積むセシリアCQ202は俺達が使う機器類には殆どリンクできないし、バージョンアップしようにも彼女の性能では今のOSは動かないだろう。一方で、地方の弱小メーカーの製品で、OSにコストをかけられない為に無料のそれをベースにメーカー独自のシステムを組んだOSを搭載したエレクシアも、彼女にとってはレガシー化したコーネリアス号のシステムや機器類にはリンクできなかった。古いバージョンのOSをサポートしてないからだ。給電等の、何千年も基本的な構造に大きな変化がないものについては何とかなるんだがな。

それでも、

「せっかくだし、コーネリアス号を俺達の別荘として使えないかな」

という俺の思い付きで、このまま数日間、ここに留まってコーネリアス号のキャビンを使えるように工夫してみることにした。

電源はローバーがあればキャビンの一部にくらいは給電できるし、電気さえあれば生活用のシステムは使えそうだったのだ。それには、コーネリアス号のシステムに精通しているセシリアCQ202の知識が大いに役立った。エレクシアではリンクできない装置も彼女ならリンクできるし、エレクシアが使いやすいように改造できそうな部分は改造して、その際にもセシリアCQ202の情報が活かせたのだった。

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