悪しき女帝のためのパヴァーヌ

京衛武百十

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牢獄の女怪

女王様々

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自身の体のメンテナンスの第一段階として<洗浄>を終え、浴槽に浸かる。

基本的には従者らが一度に入るための浴場であったそこは、石造りの浴槽も二十人くらいは浸かれるほどの大きさがあり、ゆったりと体を浸すことができた。

しかし彼女の場合は、『湯に浸かって寛ぐ』という様子ではなく、まるで湯に浸かりながら瞑想でも行うかのような、どこか<作業>的な入浴の仕方だった。

そう、これも、ミカにとっては自身の肉体のメンテナンスの一環でしかない。

体を温め血行を良くし、免疫を高めて回復を図るのだ。そのための工程でしかなく、<寛ぎ>とはほど遠いものだった。

幸い、ここまでのところで、管理責任者である看守長の意向もあり、監獄内で大人しくしている分にはあまり煩く言われないようにはなってきていた。なので、入浴も、何時間も入っているような真似でもしない限り特には言われない。

あまり四角四面に管理するのは面倒臭いという空気が、看守長をはじめとして看守らにもあるようだ。

それでなくてもどうせ<悪女>についてはギロチン刑に処されることだけは確定している。それ以外についてはまた未定だが、どうせここで、

『永久に完成しない工事』

に従事させられることになるだけだろう。

城を丸ごと監獄に作り替えるなどの大掛かりな工事をするには、人手が足りな過ぎる。本来なら千人二千人を動員して行うようなそれを、数十人の囚人らにやらせているのだ。およそ生きているうちに終わるようなものじゃない。

そしてそれ自体が罰でもある。

一方、看守らの仕事は、ある意味では城の警備の兵士のそれと同じ。しかも看守として集められた者達は、ほとんどがそういう形で警備の仕事の経験があるので、慣れたものだ。僅か数十人の人間を監視するには十分すぎる体制だった。

逃げられないようにするための改修については優先して急ピッチで行ったので既に完成している。

元々、城として要塞の役目もあったために、中に閉じ込めておくのも容易だ。

<仕事>としては楽なものであった。

さらには、元女王や、かつては迂闊に手出しできなかったような貴族の女や、上級メイドも抱ける。

こんな美味しい仕事もない。

「ある意味じゃ、女王様々だよな」

「まったくだ」

などと口にする看守さえいる。

そんな中、ミカは十分に体を温められたことを確かめて、浴槽から上がった。

それでも誰も体を拭く布さえ渡しに来ないので、自分で布を手に取り体を拭き、服を身に着けて自分の牢へと戻る。

するとそこにはすでに食事が用意されていて、彼女はやはり、パンの一欠片、スープの滴一つ、硬い干し肉の一枚さえ残さずに丁寧に食べたのだった。

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