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牢獄の女怪
五月蠅くてかなわん
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その男は、他の男達がほとんど満足していなくなった頃に、
「…お邪魔します……」
などと遠慮がちに牢に入ってきた。
「……」
しかし、桶の水に浸した布で体を拭っていたミカは、そんな男にもただ冷めた視線を向けるだけだ。そして、ベッドのシーツを新しいものに交換して、そこに寝そべる。
「あ…あの……」
男が蚊の鳴くような声で話し掛けると、ミカが、
「……ぐずぐずするな…」
冷たく言い放つ。
「は…はい……っ!」
男は慌てて服を脱ぎ、ミカに覆い被さる。
すると彼女は、やはり黙って男を抱き締めた。
「ミカ様…! ミカ様……! ミカ様……っ!」
彼女の名前を何度も呼びつつ。男が胸に顔をうずめて縋りつく。
『……仕方のない奴だ……』
そんな男の様子に、ミカは呆れたような表情を浮かべながら好きにさせた。
『私のような者を憎むこともできんのか……この腰抜けが……』
とは思いつつ、口には出さない。
それに、こういうのはほとんどの場合、一時の気の迷いだ。外で女でもできればすぐに気が変わる。そういうものだ。
ミカはそう考えつつ、男をただ受け入れた。
しかしその翌日。
「もうお前もいつまでも子供じゃないんだ! 自分の立場をわきまえろ!!」
朝、食事を終えていつものように<務め>を果たすべく入念な準備をしていたミカの耳に、そんな怒声が届いてきた。
「…なんだ…騒々しいな……」
いささか不穏な様子にミカも、自分の牢の扉の前で警備をしていた看守に問い掛ける。
するとその看守は、
「ああ、ルパードソンの娘が、俺達の相手は嫌だってゴネてんだよ。まだガキだからってんでもう少し待った方がいいんじゃないかって俺達は思ってんだが、我慢できない奴がいるらしくてな」
呆れた様子で応えた。
『ルパードソンの娘…ノーティアとかいうあれか……』
ミカの脳裏に、地下牢で自分の排泄物が入った桶を本当に嫌々運び出した少女のことがよぎった。
「いや! いやです! 離してっ!!」
必死に懇願する声が耳障りなほど響く。
そんな様子に、看守の男は、
「るっせぇなあ…まだガキじゃねえか。もうちょっと置かなきゃ美味くねえだろ。熟すのを待てってんだよ……!」
本当に『煩わしい』と言いたげに吐き捨てた。いい恰好をしているわけではなく、本気でそう思ってるのが分かる。
「まったくだ…あんな小便臭いガキの何がいいんだか……」
もう一人の看守もうんうんと頷いている。
それを見たミカは、
「…なら、あの騒いでる奴らをここに連れてこい。私が言い含めてやる…」
と口にした。感情を込めず、淡々と、事務的に。
それは不思議と反感を覚えるようなものではなかった。なので看守は、
「お…おう、そりゃ助かる。五月蠅くてかなわん」
素直にそう言いながら歩いて行ったのだった。
「…お邪魔します……」
などと遠慮がちに牢に入ってきた。
「……」
しかし、桶の水に浸した布で体を拭っていたミカは、そんな男にもただ冷めた視線を向けるだけだ。そして、ベッドのシーツを新しいものに交換して、そこに寝そべる。
「あ…あの……」
男が蚊の鳴くような声で話し掛けると、ミカが、
「……ぐずぐずするな…」
冷たく言い放つ。
「は…はい……っ!」
男は慌てて服を脱ぎ、ミカに覆い被さる。
すると彼女は、やはり黙って男を抱き締めた。
「ミカ様…! ミカ様……! ミカ様……っ!」
彼女の名前を何度も呼びつつ。男が胸に顔をうずめて縋りつく。
『……仕方のない奴だ……』
そんな男の様子に、ミカは呆れたような表情を浮かべながら好きにさせた。
『私のような者を憎むこともできんのか……この腰抜けが……』
とは思いつつ、口には出さない。
それに、こういうのはほとんどの場合、一時の気の迷いだ。外で女でもできればすぐに気が変わる。そういうものだ。
ミカはそう考えつつ、男をただ受け入れた。
しかしその翌日。
「もうお前もいつまでも子供じゃないんだ! 自分の立場をわきまえろ!!」
朝、食事を終えていつものように<務め>を果たすべく入念な準備をしていたミカの耳に、そんな怒声が届いてきた。
「…なんだ…騒々しいな……」
いささか不穏な様子にミカも、自分の牢の扉の前で警備をしていた看守に問い掛ける。
するとその看守は、
「ああ、ルパードソンの娘が、俺達の相手は嫌だってゴネてんだよ。まだガキだからってんでもう少し待った方がいいんじゃないかって俺達は思ってんだが、我慢できない奴がいるらしくてな」
呆れた様子で応えた。
『ルパードソンの娘…ノーティアとかいうあれか……』
ミカの脳裏に、地下牢で自分の排泄物が入った桶を本当に嫌々運び出した少女のことがよぎった。
「いや! いやです! 離してっ!!」
必死に懇願する声が耳障りなほど響く。
そんな様子に、看守の男は、
「るっせぇなあ…まだガキじゃねえか。もうちょっと置かなきゃ美味くねえだろ。熟すのを待てってんだよ……!」
本当に『煩わしい』と言いたげに吐き捨てた。いい恰好をしているわけではなく、本気でそう思ってるのが分かる。
「まったくだ…あんな小便臭いガキの何がいいんだか……」
もう一人の看守もうんうんと頷いている。
それを見たミカは、
「…なら、あの騒いでる奴らをここに連れてこい。私が言い含めてやる…」
と口にした。感情を込めず、淡々と、事務的に。
それは不思議と反感を覚えるようなものではなかった。なので看守は、
「お…おう、そりゃ助かる。五月蠅くてかなわん」
素直にそう言いながら歩いて行ったのだった。
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