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リーネの章

また人生やり直そうなんて

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でも、その<当たり前>ってやつは、実は、

<甘えたい奴の言い訳>

でしかないことも、前世を客観的に振り返ることのできる今の俺には分かってしまう。なにしろ俺自身、

『当たり前だろ!』

って言葉を散々口にしてきたからな。自分が楽をする言い訳のために。リーネみたいなお人好しのガキがこんな風に手を傷だらけにして血塗れにしてやらなきゃいけない<当たり前>ってなんだ? 大人が草引きを子供にやらせるのは、自分が面倒臭いからじゃねえか。それを<当たり前>って言葉で誤魔化してるだけでしかねえ。

とは言え、現に俺が鍛冶の仕事を本格的に再開したら、水汲みも草引きもやってる暇はねえだろう。リーネにやってもらうしかないのは確かだ。だが、こんなふうに手を傷だらけにしてまでする必要はねえ。

土中には、やべえ細菌も普通にいることがあるってのは、俺も聞いたことがある。だとしたら、するにしたってなるべく怪我をしないようにしてもらうのが大事じゃねえか。

「すまねえな。頑張ってくれてありがとうよ。しっかり手を洗って綺麗にして、メシにしよう……」

俺はリーネの手の土を掃いながらそう言った。

「はい…」

リーネも、手が痛いんだろうな。少し顔を歪ませながら応える。

そして、俺とリーネは、手を洗って、ここに来るまでに採ってきた果実や木の実で夕食にした。

それから、水で濡らした布で、それぞれ、体を拭く。お互いに背を向けてなるべく見ないようにして。

この辺りも、『子供だから』ってあんまりデリカシーのないことをするのはどうかなと俺も思う。何しろ、前世で娘が小学生の頃、まだ風呂に入ってたところに俺も入っていって、

「なんだよ! まだ入ってるだろ!」

って怒られたことがあったな。なのに俺は、

「うるせぇ! 生理も始まってねえガキがいっちょまえに色気づいてんじゃねえよ! ここは俺の家だ、俺がいつ風呂に入ろうが俺の勝手だ! お前は俺の家に住まわせてもらってるだけなんだからよ! 身の程をわきまえろ!」

とか、言っちまってたなあ……

『俺の家に住まわせてもらってる』って、娘にしたって別に好き好んで俺の子供として生まれてきたわけじゃねえよな。俺が勝手に、世間体ってもんを考えて家庭を作ろうとしただけで、要するに、俺の体裁を整えるための『小道具として』女房に生ませただけで、娘は俺のところになんて生まれたくなかったよな。

俺も、今の両親のところになんざ生まれたくなかったぜ。それどころか、生まれてくること自体、望んでなかった。

死にたくはなかったが、全部リセットしてまた人生やり直そうなんて思ってなかったよ。

せっかく<年長者>になったんだしよ。

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