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リーネの章

手間が省ける

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その後も俺は罠を作りながらアイデアを模索する。が、結局、

『一輪車でも作ってそれに乗せて運ぶくらいしかないよな……』

という、面白くも画期的でもない結論に辿り着いた。ここで何かこう、びっくりするようなアイデアをヒリ出せたらカッコいいとも思うんだが、残念ながら俺はどこまで行っても凡人に過ぎないようだ。

とは言え、それを嘆いても何も事態は動かない。いずれまた何か思い付いた時に順次改善していくとしよう。

そんなわけで、罠を仕掛けた場所に目印になる様に、薪の先を削って杭にして地面に差しておく。うっかり自分が引っ掛かったりしたら目も当てられないからな。

こう言うと<フラグ>のようにも聞こえるから、そうならないようにしていかなきゃと思う。分かってるリスクに対処しないのは、ただの怠慢だ。まあ、分かってないなら仕方ないだろうし、俺も見落としとかあるかもしれないが。

それよりも今は、<一輪車>だ。遊具としてのそれじゃなくて、工事現場とかで使う、確か、<ネコ車>とも呼ばれるものだ。

だから早速、制作に取り掛かろうと思って、家の修理用の材料で手頃なものをと探していたら、板材の陰に、

「こいつは……!」

まさしく俺が作ろうと考えていた一輪車(いや、ちょっと紛らわしいから<ネコ車>でいいか)が置かれていた。はっ! 俺が思い付く程度のことは、前の住人も思い付いてたってことか。

二本の丸太をV字にしてその繋がったところに丸太を輪切りにした車輪を配した、ものすごく原始的なものだ。しかも、荷台のところが壊れている。

たぶん、最初に作って使ってたものなんだろう。でも、もっといいのが用意できたことで用済みになり、でももしかしたら何かに使えるかもと思って残しているうちに埋もれていった感じか。

なんか、出し抜かれた感じがして癪に障るが、ここは、一から作る手間が省けたと喜ぶべきところだろうな。くだらないプライドよりリーネが楽できることの方が大事だ。

と、ネコ車を引っ張り出した時、さらにその陰に、

「地金…!」

思わず声を上げてしまう。確かに地金だった。きっと、盗まれたりした時のために予備をここにも隠しておいたに違いない。でも、その必要もなくそのままになっていたんだろうな。

こりゃツイてる!! これで当分、地金を工面する手間が省けるじゃねえか!

だが、こうなると、ここの前の住人は、他にも何か隠してる可能性が出てきたぞ。仕事しか興味ないクセに仕事に関することでは神経質なくらいに用心深い奴だったようだ。

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