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トーイの章

少し怖くて……

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『叔父さんと叔母さんのことは、残念だった……』

彼女がそれを気にしてるんだろうと思いそう言った俺だったが、リーネから返ってきた思いがけない言葉に、固まってしまった。

「いえ……それはもういいんです……二人のことは、私も憎んでましたから……ただ、トニーさんが怒ってたのが、少し怖くて……」

怖い……? 俺が……?

唖然とした次の瞬間には、ピンと来てしまった。

『トーイに対して『これ以上喚くなら、お前も殺すぞ!!』と言ったあれか……!?』

くそ……っ! そうか…そうだよな……! 小さな子供相手に『殺すぞ!!』とか、子供が怖がらないはずがないじゃないか…! と言うか、まさに怖がらせてショックで黙るのを狙ってああ言ったんだ。その狙い通りだったというだけだ。

トーイだけじゃなく、リーネにも効果抜群だったということだけどな……!

こういうことがないように気を付けていたのに、俺は馬鹿か……!

だから俺は、

「すまん…! あの時は切羽詰まってて、つい言い過ぎちまった……でも
言い訳はせん。俺が間違ってた……それだけは確かだ……」

素直にそう詫びた。リーネに、本心から。

ここの連中は、基本的に、自分の間違いを認めることをしない。いつだって、

『間違ってるのは自分以外で、自分は決して間違わない』

『間違っててもそれを認めない』

というのが普通だった。それこそ大人は、絶対に子供に対して謝ったりしない。

『間違ってるのは必ず子供。大人は間違わない』

と考えているんだ。だから当然、子供も大人のそういう態度を学び取る。『間違ってるのは自分以外で、自分は決して間違わない』と考え、『間違っててもそれを認めない』というのが当たり前になる。

でもな、その結果、何が起こってる? 前世で俺が務めてた会社でも、海外の連中と仕事しても、自分が間違っても絶対に謝らなかったし、ひたすら言い訳を並べるだけだった。ミスがあったのは自分以外の奴の責任で、自分は何一つ間違ってないって言い張るんだ。

それがなんでだか、ここで二十年暮らしてきてよく分かったよ。親がそうだからだ。大人がそうだからだ。そんな親や大人を見て育ったから、そうなっただけだ。

無論、そうじゃない奴も中にはいるんだろう。リーネもたぶん、今のところは<そうじゃない奴>だと思う。でも、そうなる傾向が強くなるのは当然だろう? 

俺の村の連中もそうだった。ガキも含めてな。

そういう社会なら、それに合わせていかないとダメなのかもしれない。でも、俺は、もう嫌なんだ。他の奴らと関わる時にはそっちに合わせるとしても、家の中でまでそういうのは、嫌なんだよ。

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