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トーイの章

俺自身が後悔しない生き方をするしかねえ

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自分の実の親が殺されても、どうやらそれはいくつもの村から難民として集まってきた寄せ集めの集落内で衝突が起こった結果だと考えると、悔しいとか悲しいとか感じる以前に、

『なにくだらねえことやってんだ』

という気分にしかならなかった。どうせ、

『こっちの食い物の取り分が少ない』

だの、

『もっと広い家をよこせ』

だの、好き勝手なことをほざいてそれでいがみ合ったんだろ。あいつらのやりそうなことだ。特に俺の両親なんざ、率先してゴネたんだろうなという印象しかない。だから真っ先に殺されたんだろう。

下手すれば先に手を出したりもしたかもしれない。

そんな奴らだったんだよ。

つまり、そういう人間でいると、こうやって殺されたって自分の子供にさえ悲しんでもらえなかったりするんだってのをつくづく思い知らされる。確かに家族を殺されたってことじゃ報復も考えなきゃいけないような話なんだろうが、今回の場合は相手も死んでるだろうしな。

お互いに殺し合ってのことだと思えば、場合によっちゃ俺の両親がリーネの叔父夫婦の仇だったりするかもしれねえ。

子供ら同士はこうやってささやかなりにも支え合って生きてんのに、親が勝手に殺し合ってその仇を討てとか、

『いや、お前らが勝手にやったことじゃねえか!! こっちはそんなこと一ミリも頼んでねえよ!!』

って話だとしか思わねーよ。

でも、俺とリーネはそうやって納得できても、トーイには納得できねえかもしれねえよな。まだそういう大人の汚い部分のこともよく分かってなかったかもしれねえし。

だから、トーイのことは気遣ってやらなきゃと思う。身勝手な大人にそれこそ振り回されてるだけなんだからな。

だから俺は、トーイのことも育てていってやらなきゃと思えた。幸い、今はリーネもいる。リーネと一緒に過ごせたことでそんな風に思えるようになったんだって感じる。そうじゃなきゃ、トーイのことなんて見て見ぬふりして放ってきてたかもしれない。てか、その可能性のがずっと高い。そしてそれが咎められることもないのがここの社会なんだよ。

そして俺達はそんな中で奇しくも全員、天涯孤独になった。その俺達がどう生きるかは、俺達自身が決めることだ。

少なくとも俺は、自分が生まれた村みたいな生き方はしたくねえ。リーネやトーイをただの奴隷として道具として家畜として使い潰す気にはなれねえ。

なら、どうする? 俺自身が望むままに生きるしかねえよな。

俺自身が後悔しない生き方をするしかねえんだよ。

ゆっくり体を休めて風呂から上がってさっぱりして、自分は裸のままでトーイの体を拭いてやってるリーネを見ながら、俺は改めてそう思ったのだった。

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