魔法使いは廃墟で眠る

しろごはん

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第三章

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「手詰まりだな」
「ええ......」
居間で始まる現状確認。キキョウも含めた四人でロイバー対策を考える。
エレオノーラと飛鳥による調査が始まって数日が経ったが事件の手がかりはほんの僅か。影さえ見えず、手詰まりの状態になりかけていた。
数日の間でもやはり昏睡事件は連日起こり続けている。自分も捜査に出たいところではあるが、やはり止められていた。
キキョウも自分に害が無い魔術師についてはあまり興味無さそうにしているが頼めば協力してくれると思う。数日間自宅に待機しているのも自分を守ってくれているためだとわかる。
全体の盤面としては完全に後手に回ってしまっているのが本音のこの状況。次の一手をどうするかというのが大切だ。
このまま飛鳥とエレオノーラの二人で調査を続けるのか否か。飛鳥の言い分ももっともで、ヴォルフダート・ロイバーの討伐は熾天王鍵騎士団の正式な任務であり、またアーサーの時とは違い、彼はキキョウを狙っている訳でも無い。だから椿達が関わる必要は無いと言う。だが本当に、本当にそうだろうか?
「実際に事件が起こった場所に行って彼の狙いは分かりました。巧妙に隠されていましたが式の痕跡を発見しました。やはり魔力を集めるのが狙いの様ですね」
「魔力が少ない魔術師が昔によく使ってた手口だな。一般人が持つ微力な魔力を掻き集めてどっかに貯めて大魔術の行使に使うんだろう。一般人が倒れてたのは魔力を抜かれたのが原因だろうな」
「魔力集めが彼の今回の依頼内容である可能性が高いですね」
飛鳥の調査で何とか敵の狙いがわかる。同時に予感が確実な物へと変わる。やはりと言うべきかこれは自分とキキョウにも関係ない話ではないだろう。
「そうなると、やっぱり私達も無関係とはいかないわね。次の調査から私と椿君も同行するわ」
キキョウもここに来て重い腰を上げる。彼女も気づいたのだろう。いや、知っていると言った方が正しいのか。きっと彼女には慣れた出来事だろうから。
「それはーー」
「魔力が欲しいのなら私の魔眼を狙わない訳がないわ」
キキョウの瞳から飛鳥が目を逸らす。飛鳥も最初からわかっているのだ。
もしただの一般人から魔力を奪う事だけが目的なら、わざわざこの街には来ないだろう。この街にはキキョウが居て飛鳥もいる。先日アーサーを倒した事は魔術世界には瞬く間に広まっていると飛鳥からも聞いた。
普通そんな強敵が存在する街でリスクのある行動はしない。する必要がない。もっと簡単に狩りを行える土地など幾らでもあるだろう。他の魔術師達の事情や縄張り問題は自分の知るところでは無いがこの街に来るということは大きな獲物を狙っている可能性が高いのだ。
「飛鳥、コイツの言ってることは間違ってないぜ。遅かれ早かれロイバーがコイツらを狙ってくるだろうよ」
「でも、椿君の事は知られていない筈です。せめて彼だけでも隠れてーー」
「確かにな。だがキキョウの事は魔術師で知らない奴はいねぇ。魔眼の事も強さの事も。しかもアーサーまで返り討ちにしたとなりゃその魔眼の価値は計り知れねえ。真っ向から挑んで来る相手なら良いが椿を人質にするために狙ってこない確証はねぇよ」
現状、自分の左の魔眼については騎士団での間でも極秘として扱われている。あの死闘の中で一度だけ解放された魔眼は今はキキョウの魔法により封印されており魔力が感知されることは一切無い。紅蓮院椿という存在は他人から見た際魔術師集団に囲まれるただの一般人という絵面である。卑怯な手ではあるがこれを利用しない手はないだろうと自分でも思う。
「昔からの悪い癖だぞ。覚悟を決めろ。大切だと思うなら、自分で守ればいいんだ。お前は熾天王鍵騎士団第四位なんだ」
エレオノーラの後押しに飛鳥も渋々といった表情で頷く。きっと自分が傷つけば飛鳥は後悔をすることになる。飛鳥の優しさを裏切ることは出来ない。無事にこの戦いを終わらせようと固く誓う。
こうして今夜から椿達も調査に参加することが決まった。
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