138 / 156
番外編 その後の二人<婚姻申込の行方>
しおりを挟む
ニキアスの応接室にアイラとトウ国の使者が二人やってきた。
アイラがルーカスの姿を見つけ、すぐに寄って来ようとしたところでニキアスから待ったがかかる。
「アイラ王女、まずはそちらにお掛けください」
出端を挫かれた形になったが、アイラとしても今日の本題が自国から送られている婚姻申込書の件だとわかっているからか大人しく椅子に腰掛けた。
「王女もおわかりのことかと思いますが、今日この場を設けたのは他でもない、トウ国から届きましたこちらの婚姻申込書の件でお話があったからです」
ニキアスの言葉にアイラが若干身を乗り出す。
「もったいぶっても仕方のないことですので端的に申し上げますが、この申込みをお受けすることはできません」
「…なっ!」
本人にとっては予想外だったのか、アイラの柳眉が吊り上がった。
「なぜですか!?」
「逆にお伺いしますが、なぜ我々がこの婚姻を受け入れると思えるのでしょう?」
「それはもちろん、私と結婚すればルーカス公にとっても利があるからです」
「利ですか?」
「そうです。トウ国からは王女の降嫁としてさまざまな支援が見込めますし、ロゴス国の公爵家としては子の数の問題に対して対策をとっていることを示せるでしょう?」
アイラが言葉を言い募れば募るほど、ルーカスは腹の中に言い知れない不快な思いが溜まるのを感じる。
「ルーカス公はトウ国からの支援を求めていません。また、ロゴス国の公爵家の問題は他国民であるアイラ王女とは関係の無い問題です」
ニキアスが淡々と告げる言葉にアイラは納得できない顔をする。
そもそも、もし本当に婚姻の申込みを受けるのであればそれは国同士の契約となり、ニキアスの応接室ではなく国王同席の下謁見室で話すべきことだ。
この部屋に呼ばれた時点で結論はわかりそうなものだが、なぜ理解できないのか。
今回婚姻を断るに当たってルーカスは自らの言葉で告げるつもりだった。
しかしそれではさらに事を荒立てかねないということで、結果としてニキアスがアイラに伝えている。
それは賢明な判断だったのかもしれない。
アイラの様子を見る限り、ルーカスから断っていたら大人しく話を聞いてくれなかったかもしれないからだ。
「ニキアス殿下とお話ししていても埒が明きませんわ」
しかしアイラはそれで引っ込むような性格ではなかった。
「ルーカス公、婚姻のお断りというのはニキアス殿下の独断ではないのですか?」
この後に及んでそんな発想が出てくるアイラはルーカスにとって本当に理解に苦しむ相手だ。
「アイラ王女。正式な婚姻申込に対してニキアス殿下はそんないい加減なことはなさいません。殿下からきちんと話を伺った上で私がお断りさせていただきました」
「私からの申し入れを断るなんて納得できませんわ」
強情なアイラの様子に、ルーカスは大きなため息をついた。
「アイラ王女、以前より何度も申し上げておりますが、私は妻を愛しております。妻以外の女性を愛することはありませんし、もちろん娶る気もありません」
「…っ」
ルーカスの言葉はアイラにとって受け入れ難い言葉だったのだろう。
悔しげに唇を噛み締め、それでもアイラは続けた。
「では子どもの問題はどうなさるおつもりですか?今のままでは問題は解決しませんし、ロゴス国内の他の令嬢を娶るくらいなら王女である私の方が良いでしょう?」
がんぜない子どものように言い募るアイラはルーカスの逆鱗を踏みまくる。
「それ以上お言葉を続けないことをお勧めします。もし妻との間に今以上に子どもが生まれなかった場合、血縁より養子を取る予定でおりますのでご心配には及びません」
「養子?」
「そうです。王女が問題とされている公爵家の子どもについてですが、血縁であれば直系の子でなくても問題はないのです。幸い我が公爵家には血の繋がりを持つ子が他にもおりますので、万が一私と妻の間に子どもが増えなかったとしても、わたしが妻以外の女性を迎え入れる必要はありません」
ルーカスは自分の要求を通すことばかりを言い続けるアイラに対して、好意を持つどころか逆の感情を抱きそうだと思う。
この性格がトウ国でなぜ問題視されなかったのか。
他国に出して両国間の軋轢を生むと思わなかったのかが甚だ疑問だった。
もしくは、王女は自国ではまともなのだろうか。
いずれにせよ、ルーカスの気持ちは最初から微塵も変わらない。
自身の心はすべてアリシアに捧げている。
そして親としての情はクラトスに。
さらにはこれから産まれてくるであろう愛しい我が子にも愛情を注ぎたい。
そのためにも雑音は排除しておかなければ。
だから、たとえ相手が他国の王女であったとしても容赦はしない。
「このことについて申し上げるのはこれで最後です。あなたとの結婚はありえない。お断りいたします」
ルーカスの言葉が、応接室内に響いた。
アイラがルーカスの姿を見つけ、すぐに寄って来ようとしたところでニキアスから待ったがかかる。
「アイラ王女、まずはそちらにお掛けください」
出端を挫かれた形になったが、アイラとしても今日の本題が自国から送られている婚姻申込書の件だとわかっているからか大人しく椅子に腰掛けた。
「王女もおわかりのことかと思いますが、今日この場を設けたのは他でもない、トウ国から届きましたこちらの婚姻申込書の件でお話があったからです」
ニキアスの言葉にアイラが若干身を乗り出す。
「もったいぶっても仕方のないことですので端的に申し上げますが、この申込みをお受けすることはできません」
「…なっ!」
本人にとっては予想外だったのか、アイラの柳眉が吊り上がった。
「なぜですか!?」
「逆にお伺いしますが、なぜ我々がこの婚姻を受け入れると思えるのでしょう?」
「それはもちろん、私と結婚すればルーカス公にとっても利があるからです」
「利ですか?」
「そうです。トウ国からは王女の降嫁としてさまざまな支援が見込めますし、ロゴス国の公爵家としては子の数の問題に対して対策をとっていることを示せるでしょう?」
アイラが言葉を言い募れば募るほど、ルーカスは腹の中に言い知れない不快な思いが溜まるのを感じる。
「ルーカス公はトウ国からの支援を求めていません。また、ロゴス国の公爵家の問題は他国民であるアイラ王女とは関係の無い問題です」
ニキアスが淡々と告げる言葉にアイラは納得できない顔をする。
そもそも、もし本当に婚姻の申込みを受けるのであればそれは国同士の契約となり、ニキアスの応接室ではなく国王同席の下謁見室で話すべきことだ。
この部屋に呼ばれた時点で結論はわかりそうなものだが、なぜ理解できないのか。
今回婚姻を断るに当たってルーカスは自らの言葉で告げるつもりだった。
しかしそれではさらに事を荒立てかねないということで、結果としてニキアスがアイラに伝えている。
それは賢明な判断だったのかもしれない。
アイラの様子を見る限り、ルーカスから断っていたら大人しく話を聞いてくれなかったかもしれないからだ。
「ニキアス殿下とお話ししていても埒が明きませんわ」
しかしアイラはそれで引っ込むような性格ではなかった。
「ルーカス公、婚姻のお断りというのはニキアス殿下の独断ではないのですか?」
この後に及んでそんな発想が出てくるアイラはルーカスにとって本当に理解に苦しむ相手だ。
「アイラ王女。正式な婚姻申込に対してニキアス殿下はそんないい加減なことはなさいません。殿下からきちんと話を伺った上で私がお断りさせていただきました」
「私からの申し入れを断るなんて納得できませんわ」
強情なアイラの様子に、ルーカスは大きなため息をついた。
「アイラ王女、以前より何度も申し上げておりますが、私は妻を愛しております。妻以外の女性を愛することはありませんし、もちろん娶る気もありません」
「…っ」
ルーカスの言葉はアイラにとって受け入れ難い言葉だったのだろう。
悔しげに唇を噛み締め、それでもアイラは続けた。
「では子どもの問題はどうなさるおつもりですか?今のままでは問題は解決しませんし、ロゴス国内の他の令嬢を娶るくらいなら王女である私の方が良いでしょう?」
がんぜない子どものように言い募るアイラはルーカスの逆鱗を踏みまくる。
「それ以上お言葉を続けないことをお勧めします。もし妻との間に今以上に子どもが生まれなかった場合、血縁より養子を取る予定でおりますのでご心配には及びません」
「養子?」
「そうです。王女が問題とされている公爵家の子どもについてですが、血縁であれば直系の子でなくても問題はないのです。幸い我が公爵家には血の繋がりを持つ子が他にもおりますので、万が一私と妻の間に子どもが増えなかったとしても、わたしが妻以外の女性を迎え入れる必要はありません」
ルーカスは自分の要求を通すことばかりを言い続けるアイラに対して、好意を持つどころか逆の感情を抱きそうだと思う。
この性格がトウ国でなぜ問題視されなかったのか。
他国に出して両国間の軋轢を生むと思わなかったのかが甚だ疑問だった。
もしくは、王女は自国ではまともなのだろうか。
いずれにせよ、ルーカスの気持ちは最初から微塵も変わらない。
自身の心はすべてアリシアに捧げている。
そして親としての情はクラトスに。
さらにはこれから産まれてくるであろう愛しい我が子にも愛情を注ぎたい。
そのためにも雑音は排除しておかなければ。
だから、たとえ相手が他国の王女であったとしても容赦はしない。
「このことについて申し上げるのはこれで最後です。あなたとの結婚はありえない。お断りいたします」
ルーカスの言葉が、応接室内に響いた。
846
あなたにおすすめの小説
もう演じなくて結構です
梨丸
恋愛
侯爵令嬢セリーヌは最愛の婚約者が自分のことを愛していないことに気づく。
愛しの婚約者様、もう婚約者を演じなくて結構です。
11/5HOTランキング入りしました。ありがとうございます。
感想などいただけると、嬉しいです。
11/14 完結いたしました。
11/16 完結小説ランキング総合8位、恋愛部門4位ありがとうございます。
ローザリンデの第二の人生
梨丸
恋愛
伯爵令嬢、ローザリンデの夫はいつも彼女より仕事を優先させ、彼女を無碍にしている。
彼には今はもういない想い人がいた。
私と結婚したことにいい思いをしていないことは知っていた。
けれど、私の命が懸かっていた時でさえも、彼の精神は変わらなかった。
あなたが愛してくれないのなら、私は勝手に幸せになります。
吹っ切れたローザリンデは自分自身の幸せのために動くことにした。
※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。)
1/10 HOTランキング1位、小説、恋愛3位ありがとうございます。
結婚して5年、冷たい夫に離縁を申し立てたらみんなに止められています。
真田どんぐり
恋愛
ー5年前、ストレイ伯爵家の美しい令嬢、アルヴィラ・ストレイはアレンベル侯爵家の侯爵、ダリウス・アレンベルと結婚してアルヴィラ・アレンベルへとなった。
親同士に決められた政略結婚だったが、アルヴィラは旦那様とちゃんと愛し合ってやっていこうと決意していたのに……。
そんな決意を打ち砕くかのように旦那様の態度はずっと冷たかった。
(しかも私にだけ!!)
社交界に行っても、使用人の前でもどんな時でも冷たい態度を取られた私は周りの噂の恰好の的。
最初こそ我慢していたが、ある日、偶然旦那様とその幼馴染の不倫疑惑を耳にする。
(((こんな仕打ち、あんまりよーー!!)))
旦那様の態度にとうとう耐えられなくなった私は、ついに離縁を決意したーーーー。
離婚した彼女は死ぬことにした
はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
【完結】愛してました、たぶん
たろ
恋愛
「愛してる」
「わたしも貴方を愛しているわ」
・・・・・
「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」
「いつまで待っていればいいの?」
二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。
木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。
抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。
夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。
そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。
大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。
「愛してる」
「わたしも貴方を愛しているわ」
・・・・・
「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」
「いつまで待っていればいいの?」
二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。
木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。
抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。
夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。
そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。
大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。
あなたに嘘を一つ、つきました
小蝶
恋愛
ユカリナは夫ディランと政略結婚して5年がたつ。まだまだ戦乱の世にあるこの国の騎士である夫は、今日も戦地で命をかけて戦っているはずだった。彼が戦地に赴いて3年。まだ戦争は終わっていないが、勝利と言う戦況が見えてきたと噂される頃、夫は帰って来た。隣に可愛らしい女性をつれて。そして私には何も告げぬまま、3日後には結婚式を挙げた。第2夫人となったシェリーを寵愛する夫。だから、私は愛するあなたに嘘を一つ、つきました…
最後の方にしか主人公目線がない迷作となりました。読みづらかったらご指摘ください。今さらどうにもなりませんが、努力します(`・ω・́)ゞ
ご安心を、2度とその手を求める事はありません
ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・
それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望
裏切られ殺されたわたし。生まれ変わったわたしは今度こそ幸せになりたい。
たろ
恋愛
大好きな貴方はわたしを裏切り、そして殺されました。
次の人生では幸せになりたい。
前世を思い出したわたしには嫌悪しかない。もう貴方の愛はいらないから!!
自分が王妃だったこと。どんなに国王を愛していたか思い出すと胸が苦しくなる。でももう前世のことは忘れる。
そして元彼のことも。
現代と夢の中の前世の話が進行していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる