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番外編 その後の二人<アリシアの戦い>
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「今日で帰国されるということだが、我が国での交流がアイラ王女にとって良き経験となったことを願っている」
謁見の間での帰国挨拶の後、応接室にやってきたアイラに対してニキアスが声をかける。
アイラの後ろに控えている使者たちはこの場が何事もなく終わることを願っているのだろうか、いささか不安げな顔をしていた。
「いろいろと心を砕いていただきありがとうございました。過ぎてしまえばあっという間でしたわ」
そう言うとアイラは促されるまま椅子に腰かける。
応接机を挟んで向かいにはニキアスとディミトラが座っていた。
そしてその背後にルーカスが立っている。
本来であればアリシアもルーカスと共に背後に控えているべきだが、妊娠中ということもありニキアスたちの斜め後ろに置かれた一人がけの椅子を使用していた。
「さて。以前渡された婚姻申込書の件だが……アイラ王女は受け取れないということだったので直接トウ国の国王陛下宛に返信させていただいた」
ニキアスはそこまで言うといったん言葉を切った。
「謁見の間とは別で個別に挨拶がしたいとのことだったが、もしこの件についての確認だといけないので先に伝えさせてもらおう」
そして鷹揚に足を組むとアイラの反応を見る。
「それは……わかりましたわ」
アイラとしては自身が話題に出す前にニキアスから答えられてしまったからだろうか、一瞬口ごもりはしたがすぐに了解の意を伝えてきた。
そしてそこで話が終わればロゴス国側としては一番良い終わりになるはずだった。
「今の段階でルーカス公と添い遂げるのが難しいということは理解しています」
思い詰めたかのように言うアイラは顔を上げるとルーカスの方をじっと見つめる。
「しかし私の気持ちは距離が離れてしまっても何ら変わりませんわ。今は難しくてもいずれ、それこそディカイオ家に次の子が生まれなければ、私の存在は必要となりましょう」
アイラがルーカスだけを見つめる姿をアリシアは見ていた。
(今こそ私は自分の意見を言うべき時なのだわ)
そう心に決めて、アリシアは口を開く。
「アイラ王女殿下。我がディカイオ公爵家はいかなる状況になろうともあなたを受け入れることはございません。たとえ今後次の子が生まれなくとも、そのことに変わりはありませんわ」
今まで、アリシアがはっきりとアイラに対して意見したことは少ない。
ましてや『ディカイオ公爵家』の意思として物申したのは初めてだ。
だからだろうか。
アイラは自分が何を言われたのかがわからなかったかのように驚きの表情を浮かべた。
「我がディカイオ公爵家ですって? それを言えるのはルーカス公だけでしょう? アリシア様はあくまで他家から嫁いできたにすぎないのですから」
アリシアの言ったことを理解するなりワナワナと震え出したアイラは、きつい眼差しでアリシアを見やると語気を強めて言った。
「いいえ。ことこの件に関してはルーカスよりも私の意向こそが尊重されるのです」
あえて『夫』と呼ばずに『ルーカス』と呼ぶ。
この世においてルーカスの名前を呼び捨てにできるのは今ではもうアリシアだけだ。
アリシアは初めて、自分の明確な意思でアイラに対してルーカスへの優位性を示した。
「ご存じないようですが、公爵家に課せらせた子どもの人数に対する義務に関して、公爵夫人にのみ与えられた権利があるのです」
(自分の大切な人を奪おうとする者を許してはいけないのだわ)
だから。
「その義務のために他の方を迎え入れる場合、必ず公爵夫人の許可を得なければならない。そう決められています」
そこまで言うとアリシアは真っ直ぐにアイラの瞳を見た。
「私はディカイオ公爵家の夫人として、アイラ王女殿下を公爵家へ迎え入れることは認めません。よってアイラ王女が何をどう仰ろうともご希望にそうことはあり得ませんわ」
アリシアの言葉は公爵家の意志だ。
それが覆ることはない。
「アイラ王女。これ以上強要されるというのであれば、私は正式にトウ国国王陛下に対して抗議させていただく」
少し冷たくなったアリシアの手を握りルーカスが言う。
たとえ王女としての権力があろうともこればかりは自分の思うようにならないのだと、ここにきて初めてアイラは理解した。
「そんな……」
掠れた声で呟いて、しかしアイラはそれ以上の言葉を持たない。
結局アイラはトウ国の使者たちに支えられてニキアスの応接間を辞した。
そして、アリシアを長きに渡って困らせたアイラはこの日を最後に再びロゴス国に足を踏み入れることはなかったのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
前回投稿してからだいぶ時間が空いてしまいましたが、今回の投稿にていったん番外編は完結とさせていただきます。
(また書くこともあるかもしれませんが)
本編、番外編を通してここまで読んでいただき本当にありがとうございました。
初めて書いた話を多くの方に読んでいただけてとても嬉しかったです。
また、昨日より新しい話を始めました。
よろしければこちらにもおつき合いいただけますと大変嬉しく思います。
タイトル↓
『先視の王女の謀(さきみのおうじょのはかりごと)』
尚、他にも以下の話を公開しております。
こちらはすでに完結済ですので、ご興味を持ってくださった方がいらっしゃいましたらよろしくお願いいたします。
タイトル↓
『転生した悪役令嬢の断罪』
謁見の間での帰国挨拶の後、応接室にやってきたアイラに対してニキアスが声をかける。
アイラの後ろに控えている使者たちはこの場が何事もなく終わることを願っているのだろうか、いささか不安げな顔をしていた。
「いろいろと心を砕いていただきありがとうございました。過ぎてしまえばあっという間でしたわ」
そう言うとアイラは促されるまま椅子に腰かける。
応接机を挟んで向かいにはニキアスとディミトラが座っていた。
そしてその背後にルーカスが立っている。
本来であればアリシアもルーカスと共に背後に控えているべきだが、妊娠中ということもありニキアスたちの斜め後ろに置かれた一人がけの椅子を使用していた。
「さて。以前渡された婚姻申込書の件だが……アイラ王女は受け取れないということだったので直接トウ国の国王陛下宛に返信させていただいた」
ニキアスはそこまで言うといったん言葉を切った。
「謁見の間とは別で個別に挨拶がしたいとのことだったが、もしこの件についての確認だといけないので先に伝えさせてもらおう」
そして鷹揚に足を組むとアイラの反応を見る。
「それは……わかりましたわ」
アイラとしては自身が話題に出す前にニキアスから答えられてしまったからだろうか、一瞬口ごもりはしたがすぐに了解の意を伝えてきた。
そしてそこで話が終わればロゴス国側としては一番良い終わりになるはずだった。
「今の段階でルーカス公と添い遂げるのが難しいということは理解しています」
思い詰めたかのように言うアイラは顔を上げるとルーカスの方をじっと見つめる。
「しかし私の気持ちは距離が離れてしまっても何ら変わりませんわ。今は難しくてもいずれ、それこそディカイオ家に次の子が生まれなければ、私の存在は必要となりましょう」
アイラがルーカスだけを見つめる姿をアリシアは見ていた。
(今こそ私は自分の意見を言うべき時なのだわ)
そう心に決めて、アリシアは口を開く。
「アイラ王女殿下。我がディカイオ公爵家はいかなる状況になろうともあなたを受け入れることはございません。たとえ今後次の子が生まれなくとも、そのことに変わりはありませんわ」
今まで、アリシアがはっきりとアイラに対して意見したことは少ない。
ましてや『ディカイオ公爵家』の意思として物申したのは初めてだ。
だからだろうか。
アイラは自分が何を言われたのかがわからなかったかのように驚きの表情を浮かべた。
「我がディカイオ公爵家ですって? それを言えるのはルーカス公だけでしょう? アリシア様はあくまで他家から嫁いできたにすぎないのですから」
アリシアの言ったことを理解するなりワナワナと震え出したアイラは、きつい眼差しでアリシアを見やると語気を強めて言った。
「いいえ。ことこの件に関してはルーカスよりも私の意向こそが尊重されるのです」
あえて『夫』と呼ばずに『ルーカス』と呼ぶ。
この世においてルーカスの名前を呼び捨てにできるのは今ではもうアリシアだけだ。
アリシアは初めて、自分の明確な意思でアイラに対してルーカスへの優位性を示した。
「ご存じないようですが、公爵家に課せらせた子どもの人数に対する義務に関して、公爵夫人にのみ与えられた権利があるのです」
(自分の大切な人を奪おうとする者を許してはいけないのだわ)
だから。
「その義務のために他の方を迎え入れる場合、必ず公爵夫人の許可を得なければならない。そう決められています」
そこまで言うとアリシアは真っ直ぐにアイラの瞳を見た。
「私はディカイオ公爵家の夫人として、アイラ王女殿下を公爵家へ迎え入れることは認めません。よってアイラ王女が何をどう仰ろうともご希望にそうことはあり得ませんわ」
アリシアの言葉は公爵家の意志だ。
それが覆ることはない。
「アイラ王女。これ以上強要されるというのであれば、私は正式にトウ国国王陛下に対して抗議させていただく」
少し冷たくなったアリシアの手を握りルーカスが言う。
たとえ王女としての権力があろうともこればかりは自分の思うようにならないのだと、ここにきて初めてアイラは理解した。
「そんな……」
掠れた声で呟いて、しかしアイラはそれ以上の言葉を持たない。
結局アイラはトウ国の使者たちに支えられてニキアスの応接間を辞した。
そして、アリシアを長きに渡って困らせたアイラはこの日を最後に再びロゴス国に足を踏み入れることはなかったのだった。
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前回投稿してからだいぶ時間が空いてしまいましたが、今回の投稿にていったん番外編は完結とさせていただきます。
(また書くこともあるかもしれませんが)
本編、番外編を通してここまで読んでいただき本当にありがとうございました。
初めて書いた話を多くの方に読んでいただけてとても嬉しかったです。
また、昨日より新しい話を始めました。
よろしければこちらにもおつき合いいただけますと大変嬉しく思います。
タイトル↓
『先視の王女の謀(さきみのおうじょのはかりごと)』
尚、他にも以下の話を公開しております。
こちらはすでに完結済ですので、ご興味を持ってくださった方がいらっしゃいましたらよろしくお願いいたします。
タイトル↓
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