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第2章 迷当の反乱
第31話 涼州防衛戦
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「鄧艾将軍、何か、策は無いだろうか。王経将軍の策は最もだ、的も得ている。しかし、涼州を手放すのは避けたい」
ただ、博打を打つような真似はしたくない。無理なら無理だと、正直な意見を述べてくれ。
その言葉を聞き、鄧艾は従者より竹簡と筆をもらい受け、スラスラと言葉を綴り出す。
少し待った後、竹簡は郭淮に手渡された。
『この白水の地は、河を挟み、木々や長草が鬱蒼とした丘も複数御座います。整備されていないとはいえ、要地を抑えれば、堅固な防衛拠点と成せるでしょう。涼州を含めた全てを守り抜く条件は二つ。この白水を後詰の到着まで守り抜き、別働隊で涼州反乱軍を速やかに破る事。白水は、私が守ります。その他の将軍方で、涼州軍を蹴散らしていただきたい。さすれば勝機は、御座います』
「勝機があると、そう言うのか、鄧艾。しかし、軍を二分すれば、互いにいずれの兵力にも劣る」
不安げな郭淮に、鄧艾は指を一本だけ立てて見せた。
「わ、私は……い、いち、一万で、十分」
その言葉に、郭淮のみならず、諸将が一同に騒めいた。
しかし当の鄧艾だけは、何食わぬ顔で竹簡に再び文字を綴っていた。
「先の戦を見ただろう?姜維は間違いなく名将だ。五万を有する蜀軍に攻勢に出られては、一万のみの守備兵では半日も守り通せぬだろう。それを、三日以上守れるとはとても思えぬ。白水を奪われれば、涼州反乱軍と対する我が軍は退路を断たれ、全滅しか道は無くなる」
『確かに姜維は稀代の名将です。しかし、この地形を私以上に知っている者が蜀軍に居るとは思いません。平野戦において言えば姜維には敵いませんが、地の利を活かした戦をするならば、例え五倍の兵力があろうと負けは致しません』
諸将の意見は、反対の者が多かった。
実力こそ認めてはいるが、鄧艾はその吃音や軍事経験の浅さもあり、人望があまりないのが実情である。
全軍の命運を鄧艾一人に託すことに誰もが難色を示すのは、当然と言えば当然の反応であった。
「諸将にこれより命を下す」
郭淮はそう言って、剣を抜く。
陳泰、鄧艾も含め、全ての将軍が拝手をし、郭淮の命令を待った。
「例え一時的であろうと、涼州を蜀軍に渡す訳にはいかない。ここで手放せば、再び人心を治め得るまで、十年の時がかかるだろう。そうなれば、長安も、魏国も危うい。何としてでも守らねばならん。陳泰」
「ここに」
「六万の軍を編成せよ。陳泰を先鋒に、本軍は私が率いる。反乱軍を討伐する。異論は、認めぬ」
確固たる、意志であった。
有無を言わさぬ圧力があり、誰もが、口を噤んだ。
「鄧艾!」
「こ、ここ、に」
「お前の言う通り、一万のみ、兵を与える。白水を死守し、退路を確保せよ。今更出来ないとは言わせんぞ」
「ぎ、御意」
「三日で戻る」
その日の夜に、魏軍の六万は密かに陣を出立した。
白水の陣に残ったのは、鄧艾の指揮する一万の兵のみ。
誰もが決死の覚悟で、この戦に命を賭していた。
ただ一人、鄧艾を除いて。
必ずこの戦は勝てる。
昼間の戦で肝を冷やしたばかりなのに、不思議とこの防衛戦では、負ける気がしなかったのだ。
ただ、博打を打つような真似はしたくない。無理なら無理だと、正直な意見を述べてくれ。
その言葉を聞き、鄧艾は従者より竹簡と筆をもらい受け、スラスラと言葉を綴り出す。
少し待った後、竹簡は郭淮に手渡された。
『この白水の地は、河を挟み、木々や長草が鬱蒼とした丘も複数御座います。整備されていないとはいえ、要地を抑えれば、堅固な防衛拠点と成せるでしょう。涼州を含めた全てを守り抜く条件は二つ。この白水を後詰の到着まで守り抜き、別働隊で涼州反乱軍を速やかに破る事。白水は、私が守ります。その他の将軍方で、涼州軍を蹴散らしていただきたい。さすれば勝機は、御座います』
「勝機があると、そう言うのか、鄧艾。しかし、軍を二分すれば、互いにいずれの兵力にも劣る」
不安げな郭淮に、鄧艾は指を一本だけ立てて見せた。
「わ、私は……い、いち、一万で、十分」
その言葉に、郭淮のみならず、諸将が一同に騒めいた。
しかし当の鄧艾だけは、何食わぬ顔で竹簡に再び文字を綴っていた。
「先の戦を見ただろう?姜維は間違いなく名将だ。五万を有する蜀軍に攻勢に出られては、一万のみの守備兵では半日も守り通せぬだろう。それを、三日以上守れるとはとても思えぬ。白水を奪われれば、涼州反乱軍と対する我が軍は退路を断たれ、全滅しか道は無くなる」
『確かに姜維は稀代の名将です。しかし、この地形を私以上に知っている者が蜀軍に居るとは思いません。平野戦において言えば姜維には敵いませんが、地の利を活かした戦をするならば、例え五倍の兵力があろうと負けは致しません』
諸将の意見は、反対の者が多かった。
実力こそ認めてはいるが、鄧艾はその吃音や軍事経験の浅さもあり、人望があまりないのが実情である。
全軍の命運を鄧艾一人に託すことに誰もが難色を示すのは、当然と言えば当然の反応であった。
「諸将にこれより命を下す」
郭淮はそう言って、剣を抜く。
陳泰、鄧艾も含め、全ての将軍が拝手をし、郭淮の命令を待った。
「例え一時的であろうと、涼州を蜀軍に渡す訳にはいかない。ここで手放せば、再び人心を治め得るまで、十年の時がかかるだろう。そうなれば、長安も、魏国も危うい。何としてでも守らねばならん。陳泰」
「ここに」
「六万の軍を編成せよ。陳泰を先鋒に、本軍は私が率いる。反乱軍を討伐する。異論は、認めぬ」
確固たる、意志であった。
有無を言わさぬ圧力があり、誰もが、口を噤んだ。
「鄧艾!」
「こ、ここ、に」
「お前の言う通り、一万のみ、兵を与える。白水を死守し、退路を確保せよ。今更出来ないとは言わせんぞ」
「ぎ、御意」
「三日で戻る」
その日の夜に、魏軍の六万は密かに陣を出立した。
白水の陣に残ったのは、鄧艾の指揮する一万の兵のみ。
誰もが決死の覚悟で、この戦に命を賭していた。
ただ一人、鄧艾を除いて。
必ずこの戦は勝てる。
昼間の戦で肝を冷やしたばかりなのに、不思議とこの防衛戦では、負ける気がしなかったのだ。
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