48 / 96
1人用声劇
小説っぽい 地文字とセリフの使い分け重要「青翠者」
しおりを挟む
そこは海の底の神殿の中。
長く続く階段の中腹だった。
俺はそこに座り込み、うなだれている。
その様子を心配そうに後ろからみんなが見ていた。
全てが終わっていた。やるべきことも、なすべきことも、何もかも。
そして俺は知った。
俺は『全ての核』なのだと。
今まであった破壊を、そしてこれからあるだろう崩壊を止めるには、、、。
その事実を俺以外にはとある人だけが知っている。
俺は立ち上がって階段を降りた。
螺旋階段になったその壁には、魔法なのかなんなのか、水の壁がすぐ向こうにあった。
下を見ると、昔あったのであろう街並みと水路がはるか下の海底に見える。
美しく、いつまでも見ていた異世界。
俺は昔その世界にいた。
忘れていたことを思い出した中に、そんな記憶があった。
ゆえに海の中でも、俺は息が出来る。
俺は振り返った。
ここまでついてきてくれた人たちの顔が、上にある。
ぁぁ、なんていい眺めなのだろう。
幸せに浸りそうになって、止める。
そんな俺を遮るかのように、みんなの前に女が立ちふさがった。
格闘に長けた、剣でもそれなりの腕を持つ女。
彼女は、俺の全てを知っている。
そして、彼女は昔あった、この湖の中に住んでいた一族の末裔。
そして俺はその町を滅ぼした原因の一つ。
彼女は俺を憎んでいる。
「こいよ。レイティア」
俺が呼びかけると、彼女の体がピクリと動く。
「今まで済まなかった。我慢、していたのだろう?」
その言葉に、少し目の輝きに曇りが生じたのは、気のせいだろうか。
「俺はお前の仇で間違いないんだ、レティ。さぁ、こい!」
俺が最後に両手を広げそう言うと、彼女はゆっくりと歩き出す。
「そう。それでいいんだ」
その歩みは少しずつ走りに変わってゆく。
「このまま俺を殺しても、なんの支障もない」
階段の上だというのに、彼女の走りは乱れのないまっすぐなものとなり。
「だって俺は」
彼女は剣を抜き放ち、全速力で走りながら突きの構えを取る。
そして
「俺はもう、死んでいるのだから」
その言葉と同時に、彼女の剣が深く深く突き刺さり、背中から血濡れた剣先が姿を現していた。
「がはっ」
大量の血を口から吐き出し、数秒の沈黙の後、剣は、抜かれる。
「それで、、、いい」
俺は背後の海の中に落ちていった。
くるしい。
そう思って息を止めようとするか、すぐさまそれは息ができない苦しさとは違うことに気づく。
あぁ、そっか。海の中でも息できるんだっけ。
そう思い、全身の力を抜いた。
一つだけ、言わなかったことがあった。
どうしても、言えなかったことだ。
俺は全ての核であり、全ての破壊を止めるには、確かに俺を殺さなければならない。
しかしそれは破壊を止めるのではなく。
『核がない世界に作り変えられる』だけ。
ゆえに俺はまた戻ってこられるし、あいつらは全てを忘れているだろう。
ここに来る前に、そういえば先生と喧嘩をしたっけ。
謝らないできてしまった。
戻ったら、きちんと謝ろう。
長老ともいろんな話をしたかったな。
次こそは昔の話を真剣に聞き出してやろう。
あの黒人にもなんでそこまで真っ黒なのか聞いてなかった。
あれは気になって仕方がないのに。
そんなふうに思いを巡らせていると、少しづつ体が軽くなっていく。
海の水の中、まるでゆりかごのように揺られているからか、とても眠い。
もうすぐ終わる。何もかも。本当に全てが終わりを迎える。
夢を見よう。見られるように、いろんなことを考えよう。
次目覚めた時はきっと、みんなと幸せで、ほのぼのとした日々を送れるように。
また、楽しく話せる、ように、、、。
長く続く階段の中腹だった。
俺はそこに座り込み、うなだれている。
その様子を心配そうに後ろからみんなが見ていた。
全てが終わっていた。やるべきことも、なすべきことも、何もかも。
そして俺は知った。
俺は『全ての核』なのだと。
今まであった破壊を、そしてこれからあるだろう崩壊を止めるには、、、。
その事実を俺以外にはとある人だけが知っている。
俺は立ち上がって階段を降りた。
螺旋階段になったその壁には、魔法なのかなんなのか、水の壁がすぐ向こうにあった。
下を見ると、昔あったのであろう街並みと水路がはるか下の海底に見える。
美しく、いつまでも見ていた異世界。
俺は昔その世界にいた。
忘れていたことを思い出した中に、そんな記憶があった。
ゆえに海の中でも、俺は息が出来る。
俺は振り返った。
ここまでついてきてくれた人たちの顔が、上にある。
ぁぁ、なんていい眺めなのだろう。
幸せに浸りそうになって、止める。
そんな俺を遮るかのように、みんなの前に女が立ちふさがった。
格闘に長けた、剣でもそれなりの腕を持つ女。
彼女は、俺の全てを知っている。
そして、彼女は昔あった、この湖の中に住んでいた一族の末裔。
そして俺はその町を滅ぼした原因の一つ。
彼女は俺を憎んでいる。
「こいよ。レイティア」
俺が呼びかけると、彼女の体がピクリと動く。
「今まで済まなかった。我慢、していたのだろう?」
その言葉に、少し目の輝きに曇りが生じたのは、気のせいだろうか。
「俺はお前の仇で間違いないんだ、レティ。さぁ、こい!」
俺が最後に両手を広げそう言うと、彼女はゆっくりと歩き出す。
「そう。それでいいんだ」
その歩みは少しずつ走りに変わってゆく。
「このまま俺を殺しても、なんの支障もない」
階段の上だというのに、彼女の走りは乱れのないまっすぐなものとなり。
「だって俺は」
彼女は剣を抜き放ち、全速力で走りながら突きの構えを取る。
そして
「俺はもう、死んでいるのだから」
その言葉と同時に、彼女の剣が深く深く突き刺さり、背中から血濡れた剣先が姿を現していた。
「がはっ」
大量の血を口から吐き出し、数秒の沈黙の後、剣は、抜かれる。
「それで、、、いい」
俺は背後の海の中に落ちていった。
くるしい。
そう思って息を止めようとするか、すぐさまそれは息ができない苦しさとは違うことに気づく。
あぁ、そっか。海の中でも息できるんだっけ。
そう思い、全身の力を抜いた。
一つだけ、言わなかったことがあった。
どうしても、言えなかったことだ。
俺は全ての核であり、全ての破壊を止めるには、確かに俺を殺さなければならない。
しかしそれは破壊を止めるのではなく。
『核がない世界に作り変えられる』だけ。
ゆえに俺はまた戻ってこられるし、あいつらは全てを忘れているだろう。
ここに来る前に、そういえば先生と喧嘩をしたっけ。
謝らないできてしまった。
戻ったら、きちんと謝ろう。
長老ともいろんな話をしたかったな。
次こそは昔の話を真剣に聞き出してやろう。
あの黒人にもなんでそこまで真っ黒なのか聞いてなかった。
あれは気になって仕方がないのに。
そんなふうに思いを巡らせていると、少しづつ体が軽くなっていく。
海の水の中、まるでゆりかごのように揺られているからか、とても眠い。
もうすぐ終わる。何もかも。本当に全てが終わりを迎える。
夢を見よう。見られるように、いろんなことを考えよう。
次目覚めた時はきっと、みんなと幸せで、ほのぼのとした日々を送れるように。
また、楽しく話せる、ように、、、。
0
あなたにおすすめの小説
声劇・シチュボ台本たち
ぐーすか
大衆娯楽
フリー台本たちです。
声劇、ボイスドラマ、シチュエーションボイス、朗読などにご使用ください。
使用許可不要です。(配信、商用、収益化などの際は 作者表記:ぐーすか を添えてください。できれば一報いただけると助かります)
自作発言・過度な改変は許可していません。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる