声劇・セリフ集

常に眠い猫

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1人用声劇

恋する女の一人語り

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 気ままに文字を書き綴る。
 それは人生でただ一つの物語。
 これ以上にない。これ以外にはない。
 唯一無二の心の話。

 こんなに苦しい恋はしたことがない。
 体の全てが歓喜の声を上げるような。
 血が騒いで治らないような。
 そんな恋。
 言葉にするにはあまりにも曖昧すぎて、抽象的すぎて、うまく伝えられないけれど。
 ただ一つわかるのは、私の心はすでにその人のものであると断言できること。
 そしてそれは生きている限り決して変わらないこと。
 初めて人の心のあり方を教えてくれた。
 初めて許されることを知った。
 初めて自分のために事を為す方法を教えてくれた。
 初めて声をあげてなくことを許してくれた。

 私はただ、死にたかった。
 捨てられて、貶されて、迫害されて。
 忌むべきものとされ、居ないものとされて、否定されて。
 認められず。見られもせず。知られることもない。
 生きることを許されておらず、ただそこに捨てられただけのゴミに過ぎない私。
 他人も、家族のほとんども、そして私も。
 そうだと確信して疑わなかった。
 いらない人間だったんだって。死んでいたはずの人間が生きながらえて、それで迷惑をかけてしまっているんだって。
 疑わなかった。疑えなかった。
 生きていることが間違いなんだってずっと思ってた。
 だからいつでも死んでいいように、友人を手放し、家族との会話を減らし、多くの人間の視界に入らないように生きてきた。
 どんな死に方をしてもいいように、あらゆる手段で体を痛めつけ、その苦しみに身体を慣らしておいた。
 なのに、中途半端なところで余計な知識をつけようとしたから、全部失敗に終わった。
 心というものを、一応手に入れておかなければと、考えてしまったんだ。
 それに、少し興味もあった。
 だから、本来なら伸ばしてはいけないそれに、私はあろうことが手を伸ばし。
 そして失敗を生んだ。
 今まで大丈夫だったはずの仕打ちが、何やら苦しくなった。
 息ができなくなって、胸が痛くて、それで初めて泣いた。
 苦しくて泣く感覚を覚えた。
 それからはもう何もかもめちゃくちゃで。
 早く死ななければと考えたけど、心が邪魔して死ねなくて。
 あなたに出会った。
 私の言葉を、ただ頷きながら聞いてくれて。
 何も言わずに聞いてくれて。
 どうして優しくしてくれるの?こんな女よりいい人いたでしょ?
 って言葉に、いなかったって帰ってきたときは、本気で頭を疑った。
 したいからやってるんだって。
 どうして?って聞いても、それ以上の理由はないって言われた。
 優しくしないでよ。そんなもの、私は知らなかった。
 あなたの言葉は私の心の中をポカポカさせる。
 ふわふわさせる。重くて重くて仕方のなかった何かが、簡単に浮き上がるのがわかった。
 かわりに、言葉にできない息苦しさが私を襲って、次に胸の奥の方が、今まで踏みつけられていた傷がうずき出すように、痛くて痛くてたまらなくなった。
 やめてよ。やめて。優しくしないで。
 私はそれが嫌い。それを覚えてしまったら戻れない。
 あなたなしでは生きられなくなってしまう。そんなのは死んでも嫌。
 今更そんなの与えられても惨めになるだけ。いっそ殺してくれればよかったのに。
 そんなことを思いながら、襲いかかる苦しみと痛みに任せて泣き叫んだ。
 ただただ強く抱きしめて、縋るように。
 逃げるように。
 助けを、求めるように。

 こんな苦しい恋をしたことはなかった。
 体の全てが歓喜を叫ぶような。
 苦しくてたまらない、愛おしくてたまらない、そんな恋。
 あの人の一挙一動に心を揺り動かされ、浮きもし、沈みもする。
 どうしようもなく子供で、でも頼りになる、愛している人。
 そんな人とはきっと、私は死ぬまで一緒にいるんだろうなと、心から、確信を持って言えるだろう。
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