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2-9 タカミ登場
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佐久間高観は同じ場所に立ち尽くしたまま、苦い表情で声もなく合図を返した。そういえば、今、黒佐沢が偉そうに座っているのは高観の席じゃないか。
「おい、黒佐沢……」
「皆まで言うな、分かっておるさ。佐久間くんが来たので、どいた方がいいぞと、そう言いたいのだろう」
黒佐沢は声高らかにそう言うと組んだ脚をゆっくりと戻し、充分な間を置いてから立ち上がった。
「なかなか、楽しい話だったよマサキくん。何か進展があったら教えてくれたまえ」
結局、おれの気は全く晴れていない。なにが楽しい話だった、だ。自分が喋り続けていただけじゃないか。
そんなおれの気持ちを知ってか知らずか、天然パーマはわっはっはと言いながら自分の席へと立ち去った。
黒佐沢が遠ざかっていくのを見守ってから、さっきまで黒佐沢の座っていた椅子を面倒くさそうに定位置へ戻すと、高観はやっとおはよう、と言葉に出した。
「タカミぃ、朝から機嫌悪そうだなぁ」
高観は机の上にカバンを置くと、手のひらで自分の顔辺りを扇いだ。
「こんなに暑いなか学校にやって来て、やっとくつろげると思ったら、今度は椅子がなくって立ちっぱなし。そりゃあ、あんまりいい気分はしないよ」
「そんなもん、どこか違う席にでも座っていればよかったじゃないかよ」
言ってはみたものの、高観がそういうことをしたがらないということを、おれは知っている。他人の席を勝手に拝借する度胸がない、ということでは多分なくて、高観はきっと生真面目なのだ。
「おい、黒佐沢……」
「皆まで言うな、分かっておるさ。佐久間くんが来たので、どいた方がいいぞと、そう言いたいのだろう」
黒佐沢は声高らかにそう言うと組んだ脚をゆっくりと戻し、充分な間を置いてから立ち上がった。
「なかなか、楽しい話だったよマサキくん。何か進展があったら教えてくれたまえ」
結局、おれの気は全く晴れていない。なにが楽しい話だった、だ。自分が喋り続けていただけじゃないか。
そんなおれの気持ちを知ってか知らずか、天然パーマはわっはっはと言いながら自分の席へと立ち去った。
黒佐沢が遠ざかっていくのを見守ってから、さっきまで黒佐沢の座っていた椅子を面倒くさそうに定位置へ戻すと、高観はやっとおはよう、と言葉に出した。
「タカミぃ、朝から機嫌悪そうだなぁ」
高観は机の上にカバンを置くと、手のひらで自分の顔辺りを扇いだ。
「こんなに暑いなか学校にやって来て、やっとくつろげると思ったら、今度は椅子がなくって立ちっぱなし。そりゃあ、あんまりいい気分はしないよ」
「そんなもん、どこか違う席にでも座っていればよかったじゃないかよ」
言ってはみたものの、高観がそういうことをしたがらないということを、おれは知っている。他人の席を勝手に拝借する度胸がない、ということでは多分なくて、高観はきっと生真面目なのだ。
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