最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

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5章

165話 結果

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 死んだら死んだで元マップに戻されるって結構丸投げだな。
 待機部屋に監禁されて観戦強要されるよりは全然マシと考えればいいか、一応メニュー画面からイベント観戦も出来るし、結果も全部片付いたら特設マップにもう一度飛べるっぽい。

「あー、やられたなあ」

 自室の入口に戻って来て、インベントリ内アイテムとステータスが戻っているのを確認しながら庭に置いてある不出来な椅子とテーブルのもとに行き、葉巻を咥えて火を付ける。
 それにしてもステータス変わると一気に弱くなるな。

「アカメちゃん、アカメちゃん、訓練所ほしいなー」
「金がねえよ金が……欲しけりゃあのジャガイモ収穫してこい」
「しょーがないなあ……」

 そういって素直にジャガイモ収穫しに行ってる辺りいい子だな……まあ、その訓練所みたいなものが作れるのかどうかって知らないし、どれくらい掛かるか分からんから何にも保証してないけど。

 やはり人を使ってなんぼだよな、私って。

 長時間の対人した後ってどうも疲れて暫くやりたくないのよね、それでもよくもまあ12時間とかぶっ続けてやってたもんだわ。

「そういや、あの髭親父の奴、まだ戻ってきてないって事は生きてるんかねえ……」
 
 ぼーっとしつつ葉巻を揺らし、観戦を選択して眺める。結構長い事やってるけど、そろそろ落ちるって言ってた割に戻ってこないな。
 まー、観戦ムードにもなってたし、しばらく見てたとか?

 それにしても、さっきの戦いを思い返しても、付け焼刃の跳弾なんて使わないで戦ったら良かったかな。銃弾をケチってスキルも使わないで鳳仙花での不意打ちばっかりでどうにかなっていたってのも問題だったな。
 こんな事なら銃剣と銃格闘のスキルを上げておけば良かったか、まあスキルも結構足りてなかったし、準備も甘かった気がする。

 色々思い返していけば反省点が多いな。
 何よりも人数が少ないからこその立ち回りってのもあったし、アイテムの効果とスキルの効果も初めて分かったと言うのも多かった。
 火炎瓶とパイプ爆弾をメインに使う予定だってのに、ボマーの効果がどこまで効果があるかもわからんかったのもあったかな。
 何より近接戦闘に弱すぎるって問題も出てきたが、とりあえず今後同じような対人イベントがあるならもうちょっと考えておかないと。

 そういえばこれで人員が増えるって話になると選別もしないといかんな。
 明らかに容姿と攻撃方法から全うじゃないクランって思われていそうだけど。

「収穫終わったよー!」
「庭の拡張と地下室と樽の増産……あー、やっぱ手が足りんなあ」
「これで訓練所作ってくれるんでしょー?」
「まだたりねーよ、庭の増築値段しらんし、クランハウスも考えてるんだからね」

 とりあえずメモ帳に必要であろう事と金額の概算を出していきつつ、観戦を続ける。

 どんどんとマップは狭まっていく中でさらなる乱戦が続いているが、犬野郎のクランはまだ持ちこたえているな。最後っ屁で思い切り吹っ飛ばしたって言うのに5人程残っているとは、しぶといな。
 犬野郎に関しては完全にガス欠しているのとべこべこになっている防具を見るに、大分痛めつけてやれたんだな。

「あ、十兵衛ちゃんまだいるよ」
「良く持ちこたえてるなあ……」
「ってか、槍捌き上手いよねぇ、距離取って足狙いで機動力削いで、決して近づけさせないまま削り切るって中々だよ」
「叩く、突く、薙ぐってのがベースだっけか……近接メインのゲームで射程が長いってだけで有利だからなあ……お、そろそろ決着じゃね?」

 全体が細かくぶつかり合っている所に火炎瓶が放り込まれる。
 まだ残してたのかあいつ。それにしても自分が作ったアイテムをこう、客観的にみると酷いアイテムだわ。
 戦闘エリアが狭いってのに、範囲攻撃のおかげで全員もれなく炎上しているサドンデス状態に突入って、えげつないな。

「あ、終わった、やっぱり犬紳士が残ってる」
「まあ、人数がいたし、HPが多いってだけで有利よ、あの盾作戦すごい利に適ってるしね」

 葉巻を揺らしながら結果を見るが、あの髭親父、よく耐えてくれたわ。結果だけ見たら2位の位置にいるので上出来じゃない?

 そんな事を思っていたらウィンドウが開いて、マップ移動のお知らせが飛んでくる。
 この間のイベントと同じように結果発表は別マップでやるのか。

「そういや、また負けた気がするわ」
 
 マップ移動の許可をする事で転移が開始される。



 


 相変わらず殺風景な所だな、このイベント発表。
 と、思っていたらしっかり舞台が正面にでかでかとあり、運営のキャラクターであろう人物が舞台の上でしゃべり始める。

『皆様、お疲れさまでした。
 これより発売1週記念で開催しました、第1回対人イベントの結果発表を行います。
 まずは3位の発表から』
 
 相変わらずだけど、他人の表彰程気になるものはないな。ちなみに3位は鍛冶クランの連中だったが、良く生きてたな。
 
『2位はヴェンガンズカンパニー、少人数ながら大健闘したクランでした。
 そして栄えある1位は『Knights of the Round Table』です!』

 おいおい、あの犬野郎、まさかとは思ったけどそのまま円卓の騎士の名前使ってたんかい。
 まあ、名前からしてそういう感じだとは思っていたけど、まんまにも程があるって。

『では、上位3クランの代表者に軽くコメント頂きましょう』

 そう運営が言いながら指をパチンと鳴らすと共に舞台の上に転移する。
 そういうのはちゃんと予め言っておいて欲しいんだがなあ……。

「いやぁ、うちのクランが勝てるとは運が良かったわけだけど……これからもヘパイストスの特製武器をご贔屓に!イベント見ましたって言ったら販売価格の1割引きするおまけもしちゃうよー!
 今なら大特価、特殊な武器や専用武器もしっかりオーダーに合わせて……」

『はい、ありがとうございました。
 それでは次に2位のヴェンガンズカンパニーの代表者にコメントを』



 ああ、そうか、私の事か……ん、いや、いい機会だな、これは。
 それにこのイベントに参加した大きい理由の一つじゃないか。

「1位を取れなかったと言うのは悔しいが、2位になれたのも色んなプレイヤーのおかげでね」

 そう言いながら自分のウィンドウとメモ帳を開いて20人程のプレイヤーの名前を一人ずつ丁寧に紹介していく。

「そう、今上げたプレイヤーのおかげでね……いい機会だし、ここでお礼を言って置こうと思ったわけだが」

 感動的なスピーチに聞こえるんだろうな、頑張ったのはあなたたちのおかげですって言う。
 そんな気はさらさらないわけだし、そういう柄でもない。

「そう、今上げたプレイヤーの……迷惑行為をここに告発するわ、証拠のSSとログはこれとこれとこれで……露店関係の修正要望もついでに送るから処理して頂戴」

 葉巻を咥えたまま、運営への報告メールを今ここで送り精査してもらう。

「よーく覚えておきな、ゲームでも現実でも相手にしちゃいけない相手ってのがいるってのをな」

 紫煙を大きく吸い、吐き出しながら自分から舞台を降りてうちの構成員の前に行く。
 二人揃ってやれやれって顔をしているが、らしいと言った顔もしている。

「それじゃあ帰って金策しよーか」
「良いのか、この空気」
「悪い事してないんだから、セーフ、だろ?」

 十兵衛とマイカにギザ歯を見せるにぃーっとした笑いを見せつける。
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