最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

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13章

342話 雪+α

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「スキー板でも持ってくりゃレジャー気分も楽しめそうだ」

 ふいーっと大きく息を吐いてここまで来た道のりを振り返りつつ小休止。
 流石にフィールド攻略に重きを置いてあるだけあって、細かいモンスターしか出てこないのは本当に楽だが、移動がとにかく大変なのでトントンか。
 幾らアイゼン履いてるからって滑る時は滑るし、転ぶときは転ぶ。深雪って訳ではないが、雪の感じが場所によって違うので動きにくくなるので、さら雪の時は軽く、ベタ雪の時は重く、まあ常識よ常識。どちらの状態だとしても移動しにくいってのは事実だし。

「運営としてはレジャー向けのマップにしようって思ってたのかね」

 そこそこ進んだ道のりを振り返りながらざくざくと雪をかき分けてさらに進んでいく。南西エリア3-2は途中から雪山なのは分かり切ってる事だが、どうやら5合目くらいでエリア境になるようなので、3-2は文字通り雪山と雪原の半々、中継地点扱いされているらしい。
 らしいって言うのは、文字通り此処を拠点として動いている生産職……ではなく、単純にアウトドアやらスノーレジャーを楽しんでいるプレイヤーから聞いた話だ。しかしどうやってこんなレベルアベレージ高い所に、と思っていたのだが、それもちゃんとした理由があった。
 端的に言えばレベル1でもここに来ることは可能だし、モンスターに殴られたりなんだりというのも無いように出来るとの事。代わりに経験、金、ドロップ、スキル累積値等々の制限が掛かり、モンスターによって死にもしないが倒せないうえに、設定した街に行かないと解除不可という所謂無敵モードがあるらしい。勿論それを使って採取なりポイントを探すことも出来なければ、モンスターとエリアの情報も入ってこないので、無敵な状態で風景やフィールドを楽しんでくださいって言うモードらしい。

「まー、グラフィックの良いゲームで、邪魔されずに観光ってしたくなるし、そういう処置だろうなあ」

 ついでに言えば通常モードのプレイヤー誰かが新しいエリアに行かないと無敵モードでは侵入できないって制限もあるらしい。私には縁のないモードなのでそんなのあるのかー程度で聞き流していたが。
 それにしてもファンタジー世界を疑似旅行って中々いいな、レース場も出来たし移動も良好、景色も良いからゆったりドライブ何て事も可能か。


 

「私としてはやっぱ緊張感のあるゲームの方が楽しいっちゃ楽しいけど」

 3~4合目辺りにやってくるとそれなりな傾斜とモンスターのセットが襲い掛かってくる。のでそれの対処をしなきゃならんってのは中々大変だ。
 特にモンスターの顔ぶれが変わる訳じゃないので、対処方法はエリア3-1のままで良いのは楽ではあるんだが、下手に下にいると、攻撃を受けたときが厳しい。簡単に言えば踏ん張りが利きにくく下手に深く足がめり込むとそれを引き抜くのにも一苦労する。

「それでも、遠距離攻撃出来るだけまだマシか」

 寒冷地仕様のオークが鼻息荒くこっちにのしのしと近づいてくるので雪を踏みしめながらなるべく距離を詰められない様にCHで射撃しつつ、いつもと違う太ももを上げての走り方で雪をかき分け少しでも上に上がるように立ち回る。

「今の所雪崩の心配はなさそうだからいいけど、もうちょっと上がったらヤバそうだ」

 銃弾の火薬が3gとは言え結構な音が響く、モンスターが音につられてやってくるってのは昔からというか、ゲーム開始当初から抱えている問題の一つだが、それとあわせて雪山での音が響く事ってのがやっぱり引っかかるというか、ヤバそうな気がしてならない。
 ついでに言えばあのオーク自体もずんずん歩きやがるせいでこっちの方にも振動が来るのでもう少し高い所や急斜面のある所に行ったら一発で雪崩が来る可能性が高い。

「あんましだらだらやってるとこっちがやばいけど、こんな所で火力のある物使えないしなあ……」

 ばしゅっと排莢音をさせ、まだ熱い薬莢が雪を溶かすのをちらりとみつつ、次の弾を込める。
 現状でも威力はあるんだよ威力は、ただこの単発式ってのがやっぱりもうネックになってる、せめてリボルバーで固定ダメージ75くらいに抑えてくれたのがあればいいんだけどなあ。
 もしくは何個も数を揃えて代わる代わる使うって方法もあるけどCHの値段が高すぎて、数を揃えるとうちの三姉妹にがっつり雷を落とされるというのも分かっている。だからダブルバレルなんて作ろうとしている訳だけど、今考えてみたら機構がもっと簡単なCHでダブルバレル作れば良かった。

 何て事を考えていたら思いっきり振り下ろされてくる斧をバックステップで避け、すぐに反撃が、雪のせいでもたついて上手くいかない。足回りが厳しいというか、山道でそれなりな傾斜と雪があるので得意な動きでもあるステップ踏むのが凄いきつい上にすぐに切り替えて反撃と言うのがもたつく。
 一応狙いを付ける時は少しだけでも良いので安定する状態になってから撃っているのを意識はしていたのだが、結構がっちり踏みしめていたってのを今ここで思い知らされるとは。

 がっつり雪面に食い込んでいる斧を力任せに持ち上げ、もたついている所に大きく振りかぶって一気に横に振ってくる。
 勿論直撃するわけにはいかないのでガンシールドで受けてそのまま吹っ飛ばされ、ごろごろと転がり雪塗れに、下方向に吹っ飛ばされないだけまだましだな、踏ん張り利かないで漫画の様に雪玉になって転がり落ちていくなんて御免だ。
 とにかくすぐに立ち上がり吹っ飛ばされたおかげで距離を取れたのでCHで射撃と装填を2回繰り返し、これでも沈まない。

「CHも火力不足だなあ……」

 オートマチックなのであれば腐りまくってる三度撃ちを使えるが……アクティブ系スキル殆ど覚えてないな、そういえば。今更アクティブ型に切り替える程SPの余裕もないし、このまま殆ど通常攻撃だけで立ち回れる方がいいわ、もう。
 のっしのっし近づいてくるオークを眺めつつ、大きめにため息を吐き出し、なるべく雪の浅い所へ向かってもも上げダッシュ。ああ、疲れる、リアルでこんな風に雪の中走る事そんなにしないってのに。

「ふっ、ふっ……ああ、しつこい!やっぱ潜伏系スキル無理してでも取っておけばよかったよ!」

 このゲームの探知範囲外れないとアクティブ状態外れないから、今みたいな移動が困難な所だと逃げるのですら精一杯になる。けど、まあこのままやられるってのも尺だし、倒してから先に進むんだけどさ。

「あー、さっさと倒れてほしい」

 少し距離を取って2、3発撃ち込み、攻撃を必死に避けてからまた距離を取って撃ちこむのを続けて10発程度当たればようやく倒れてポリゴン状になって消えていく。

「雪崩の危険も無いし、地滑り起こすような事も無し、この辺まではまだまだ大丈夫か」

 減ったガンベルトの銃弾をインベントリから補充し、CHにも装填、減ったHPとMPを回復、トラッカーでぐるっと辺りを確認して他の敵がいないのを見てから登山再開。

 こんな感じなのがあと7合近く続くと思うと厳しいよ。
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