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いつも通り、が少しだけ増える
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朝の学園は、前日よりも穏やかだった。
正門をくぐると、朝露を含んだ芝生が淡く光り、魔術灯の残光がまだ空気に溶けている。
生徒たちの声は落ち着いていて、昨日の混乱が嘘みたいだ。
(……大丈夫。今日は落ち着いて確認しよう)
カレンは胸の奥でそう言い聞かせながら、魔術科棟へ向かった。
隣には、ベルンハルトがいる。
歩幅は自然に合っていて、距離は近すぎず遠すぎない。
昨日までと変わらない――ようで、少しだけ違う。
彼は、何も言わずに位置を調整していた。
人の流れが増えると、さりげなく外側に立つ。
段差があれば、ほんの一瞬だけ歩みを緩める。
(……配慮、増えてる)
気づかれないように。
気にさせないように。
でも、確実に。
「昨夜、よく眠れたか?」
「うん……まあまあ」
短い会話。
深掘りしない。
それが、今朝の“いつも通り”。
(……優しい)
その優しさが、胸にすっと落ちる。
そして同時に、どこかで小さく引っかかる。
(……気づいて、るよね)
私が混乱していること。
それを言葉にしないでいること。
ベルンハルトは、問い詰めない。
代わりに、日常を整えてくる。
それは、安心でもあり――
少しだけ、逃げ場が減る感覚でもあった。
教室に入る前、カレンはさりげなく視線を巡らせた。
(……確認、確認)
本当に、ここは乙女ゲームで見た世界なのか。
前世の記憶が、都合よく作り出した幻想じゃないのか。
まず、魔術科の攻略対象たち。
見覚えのある顔。
見覚えのある配置。
(……いる)
次に、廊下の向こう、騎士科棟の入口。
朝の鍛錬を終えた生徒たちが、汗を拭いながら通り過ぎる。
その中に――
(……いた)
エルンスト。
鍛え上げられた身体。
整った姿勢。
誰かに見せるためじゃない、実直な立ち居振る舞い。
(……やっぱり、かっこいい)
胸が、きゅっと鳴る。
(胸きゅん……)
それは、前世から知っている“好き”。
画面越しに何度も見てきた、安心できる推し。
(……うん)
恋とは、少し違う。
触れたい衝動も、独占欲もない。
ただ、眩しい。
その視線を戻した瞬間、隣から声が落ちた。
「……寒いか?」
「え?」
気づけば、ベルンハルトが自分の上着を脱いでいた。
魔術科の上衣。
訓練用の軽装。
「さっき、風が冷たかった」
そう言って、何のためらいもなく差し出される。
(……いや、そこまでじゃ)
そう思ったのに、
受け取る手は、止められなかった。
(……あ)
一瞬、視界に入った。
上衣の下。
引き締まった肩。
しなやかに浮かぶ…
(…筋…筋肉……)
思わず、目が滑る。
(……良い……♡)
前世のオタクが、静かにガッツポーズを決めた。
(……あ、だめだ)
これは、完全に今、変態だった。
ベルンハルトは、そんな視線に気づかないふりをして、
何事もなかったように袖を整える。
「行こう。遅れる」
(……溺愛、行けるかも)
そう思ってしまった自分に、
カレンは小さく苦笑した。
(でも……)
胸の奥で、別の声が囁く。
(……この優しさ、どこまで続くんだろう)
正門をくぐると、朝露を含んだ芝生が淡く光り、魔術灯の残光がまだ空気に溶けている。
生徒たちの声は落ち着いていて、昨日の混乱が嘘みたいだ。
(……大丈夫。今日は落ち着いて確認しよう)
カレンは胸の奥でそう言い聞かせながら、魔術科棟へ向かった。
隣には、ベルンハルトがいる。
歩幅は自然に合っていて、距離は近すぎず遠すぎない。
昨日までと変わらない――ようで、少しだけ違う。
彼は、何も言わずに位置を調整していた。
人の流れが増えると、さりげなく外側に立つ。
段差があれば、ほんの一瞬だけ歩みを緩める。
(……配慮、増えてる)
気づかれないように。
気にさせないように。
でも、確実に。
「昨夜、よく眠れたか?」
「うん……まあまあ」
短い会話。
深掘りしない。
それが、今朝の“いつも通り”。
(……優しい)
その優しさが、胸にすっと落ちる。
そして同時に、どこかで小さく引っかかる。
(……気づいて、るよね)
私が混乱していること。
それを言葉にしないでいること。
ベルンハルトは、問い詰めない。
代わりに、日常を整えてくる。
それは、安心でもあり――
少しだけ、逃げ場が減る感覚でもあった。
教室に入る前、カレンはさりげなく視線を巡らせた。
(……確認、確認)
本当に、ここは乙女ゲームで見た世界なのか。
前世の記憶が、都合よく作り出した幻想じゃないのか。
まず、魔術科の攻略対象たち。
見覚えのある顔。
見覚えのある配置。
(……いる)
次に、廊下の向こう、騎士科棟の入口。
朝の鍛錬を終えた生徒たちが、汗を拭いながら通り過ぎる。
その中に――
(……いた)
エルンスト。
鍛え上げられた身体。
整った姿勢。
誰かに見せるためじゃない、実直な立ち居振る舞い。
(……やっぱり、かっこいい)
胸が、きゅっと鳴る。
(胸きゅん……)
それは、前世から知っている“好き”。
画面越しに何度も見てきた、安心できる推し。
(……うん)
恋とは、少し違う。
触れたい衝動も、独占欲もない。
ただ、眩しい。
その視線を戻した瞬間、隣から声が落ちた。
「……寒いか?」
「え?」
気づけば、ベルンハルトが自分の上着を脱いでいた。
魔術科の上衣。
訓練用の軽装。
「さっき、風が冷たかった」
そう言って、何のためらいもなく差し出される。
(……いや、そこまでじゃ)
そう思ったのに、
受け取る手は、止められなかった。
(……あ)
一瞬、視界に入った。
上衣の下。
引き締まった肩。
しなやかに浮かぶ…
(…筋…筋肉……)
思わず、目が滑る。
(……良い……♡)
前世のオタクが、静かにガッツポーズを決めた。
(……あ、だめだ)
これは、完全に今、変態だった。
ベルンハルトは、そんな視線に気づかないふりをして、
何事もなかったように袖を整える。
「行こう。遅れる」
(……溺愛、行けるかも)
そう思ってしまった自分に、
カレンは小さく苦笑した。
(でも……)
胸の奥で、別の声が囁く。
(……この優しさ、どこまで続くんだろう)
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